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ハッピー、ウィンナー・ソワレ! [before 2005]

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明けましたね、おめでとうございます。
本年も、どうぞ、よろしくお願いいたします。さて、正月。特別、何だということなく、過ごしております。で、いつものように、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートを、何となく見て... 今年は、風呂掃除と並行しながら見るという離れ業... てか、テレビの前からかなり離れていたりで、あまりよく見ていないのだけれど、生誕150年のメモリアル、リヒャルト・シュトラウスが取り上げられ、テンション上がった!いやいや、リヒャルトを取り上げますか?となるのだけれど、既定路線から脱線することに、魅力を感じ易い性質でして... しかし、正月には、やっぱりウィンナー・ワルツだなァ。と、つくづく感じる。そこで、新年、最初の1枚は、ウィンナー・ワルツ!
ジョン・エリオット・ガーディナーの指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、シュトラウス家抜きで、ウィンナー・ワルツをたっぷりと聴かせてしまう意欲盤、"WEINER SOIRÉE"(Deutsche Grammophon/463 185-2)で、2014年を聴き初め!

あまりに「シュトラウス家」で語られてしまうウィンナー・ワルツなものだから、シュトラウス家抜きというガーディナーの姿勢に、称賛を送らずにいられなかったアルバム!で、シュトラウス家ばかりでない、ウィンナー・ワルツの魅力をたっぷりと堪能... いや、シュトラウス家を抜くことで、より豊潤なウィーンの音楽が際立って、独特の匂いを放つ"WEINER SOIRÉE"。ウィーンの夜会... まさに、「夜」ならではの妖しさも含む、ウィーンのある種のうらぶれ感?なんて言ったら、怒られそうだけれど、かつてはオストマルク、ヨーロッパの東の辺境であり、"WEINER SOIRÉE"の時代には、大きく東へと張り出した、ハプスブルク帝国ならではの地方性がスパイスになって、西欧にはない味わい生み出すおもしろさがあり... そもそも、ワルツが多分に地方性(バイエルン、チロルあたりで踊られていたヴェラーというダンスがルーツなのだとか... )を含んでいるわけで、そうした垢抜け無かった記憶を拭うことなく、堂々と響かせてしまうのが、ガーディナー流のウィンナー・ワルツ?
イギリスを代表するピリオドの巨匠なればこそと言うべきだろう、海を渡ったイギリスから大陸を俯瞰し、改めて見つめるウィーン像は、素のウィーンが強調されているようで、それがまた得も言えず魅惑的で、酔わされる... 恒例のニューイヤー・コンサートの洗練とは違う、野趣も滲むジューシーなウィーンが見事に繰り広げられる。1曲目、スッペの『ウィーンの朝、昼、晩』序曲の、華麗にして肉厚な響き!ワルツ王、ヨハン・シュトラウス2世(1825-99)に先行して、ウィーンのオペレッタ文化を切り拓いたスッペ(1819-95)の、オペレッタ以前のオペラの伝統を残すヘヴィーさが、シュトラウス家のライトさとは違うマッドな響きを生み、それを鳴らし切るウィーン・フィルでもあって、その聴き応えは、かえってヴェルディあたりに負けていないのかもしれない。
それから、ワルツ王の次の世代となるレハール(1870-1948)の、定番、メリー・ウィドウ・ワルツ(track.3)、ワルツ「金と銀」(track.6)では、ウィンナー・ワルツもすっかり熟成され、バイエルンのシュトラウス、リヒャルト(1864-1949)の、『ばらの騎士』(1911)で聴くワルツのようなグラマラスさを感じ... リヒャルトがオマージュを捧げたウィーンの響きの原点はここか?なんても思ったり。さらに、ホイベルガー(1850-1914)の『オペラ舞踏会』序曲(track.9)の、スパークリングな最後の盛り上がりなどは、海を越えて、ニューヨークあたりのレヴューへとつながって行くような感覚があって、"WEINER SOIRÉE"に浮かび上がるウィーンの地方性に、ある種のモダンな気分が漂い... やがてハリウッドの音楽に影響を与えることになるウィーンの音楽の素地を、このアルバムに見出す。地方性と保守性がギュっと濃縮されて、20世紀へ向けて化学変化を起こすウィーンの音楽に、まったく以って興味深いものを感じてしまう。いや、改めて聴いてみて、何と新鮮な!
しかし、ひたすらに楽しい"WEINER SOIRÉE"... それは、音楽の芯からポジティヴな気分に貫かれていて... ガーディナーのウィンナー・ワルツへの気合十分の向き合い方、それに刺激されたウィーン・フィルの本気の演奏があって... ニューイヤー・コンサートとは一味違う、濃い仕上がりが、ウィンナー・ワルツを思い掛けなく鮮烈に、新鮮に聴かせて、観光用の「ウィーン」というパッケージではなく、しっかりと中身の詰まったウィーンに圧倒されてしまう。いや、ウィンナー・ワルツで圧倒されることなどあるのだろうか?それをあっさりとやってのけたガーディナー、改めてタダモノではないなと... オペレッタの序曲だろうが、ワルツだろうが、一曲たりと軽く見ない真剣さが、一曲、一曲を、パワフルに響かせて、とにかくハッピー!で、そのハッピーが熱い!そんなハッピーに触れていると、あっという間にこちらもハッピーになれてしまうから、音楽の力って凄い... そんな力を持ち得る、ウィーンの音楽の人懐っこさは、たまらないものがある。

WEINER SOIRÉE
GARDINER/WIENER PHILHARMONIKER

スッペ : オペレッタ 『ウィーンの朝、昼、晩』 序曲
ツィーラー : ワルツ 「ウィーンの市民」 Op.419 〔編曲 : ハンス・シュナイダー〕
レハール : 舞踏会の美女(メリー・ウィドウ・ワルツ)
ランナー : ワルツ 「シェーンブルンの人々」 Op.200 〔ミヒャエル・ロート版〕
ツィーラー : 扇のポロネーズ Op.525 〔編曲 : マックス・シェーンヘル〕
レハール : ワルツ 「金と銀」 Op.79
ランナー : ギャロップ 「旋風」 Op.142-1 〔編曲 : ハインリヒ・ペク〕
ツィーラー : シェーンフェルト行進曲 Op.422 〔編曲 : マーティン・ウーア〕
ホイベルガー : オペレッタ 『オペラ舞踏会』 序曲

ジョン・エリオット・ガーディナー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

Deutsche Grammophon/463 185-2




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