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洗練を極める古典美、グルックの『オルフェオとエウリディーチェ』... [before 2005]

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さて、12月となりました。2013年も終わってしまう...
ま、毎年のこととはいえ、「師走」というのはイヤなものです。物理的に忙しないと同時に、精神的にも忙しない。一年が終わってしまうことに、変に感傷的になるかと思いきや、電気に彩られた街並みに、変にテンションも上がったりするし。で、何だかワーっとなって、ふと気が付くと、大晦日、紅白をぼんやりと見ている。何だかワケがわからん内に終わってしまう、一年。結局、このワケわからん感じが苦手なのか?で、2013年も、そんな風に終わってしまうのだろうなぁ。と、すでに織り込み済み。なのかも。そういうもの。なのだろうな。
というあたりはともかく、すっかり1760年代にはまってしまっている今日この頃... いや、それだけおもしろい、過渡期の錯綜する不思議な音楽の数々... 1760年、パリ1761年、アイゼンシュタット1763年、パリ1769年、ロンドン。と、1760年代のヨーロッパを旅して来て、その最後に、1762年、ウィーンへ... ジョン・エリオット・ガーディナー率いる、イングリッシュ・バロック・ソロイスツの演奏、モンテヴェルディ合唱団、デレク・リー・レイギン(カウンターテナー)のオルフェオ、シルヴィア・マクネアー(ソプラノ)のエウリディーチェで、グルックのオペラ『オルフェオとエウリディーチェ』(PHILIPS/434 093-2)を聴く。

1762年、ウィーンで初演され、大成功したグルックのオペラ、『オルフェオとエウリディーチェ』。それは、グルックの代表作であり、"オペラ改革"の記念碑的作品として、音楽史に輝かしい名前を刻む。バロックから古典主義へとシフト・チェンジする象徴的なオペラは、1760年代における最も重要な作品と言っても過言ではない。けど、グルックの『オルフェオ... 』って、おもしろい?バロック・オペラが様々に紹介され、モーツァルトばかりでない古典派のオペラもいろいろ聴くことができる21世紀、改革される前のバロック・オペラの華麗さ、カストラートのスターたちが歌ったであろう超絶のアリアに圧倒されてしまえば、改革なぞしてくれるな!と、ツッコミを入れたくもなる。そもそも、1770年代、パリで疾風怒濤の大旋風を巻き起こしたグルックのオペラ(これこそが、"オペラ改革"に思えるし... )に触れれば、それ以前のオペラは薄味過ぎる... で、そうした18世紀の全体像がクリアに見え始めて来ると、グルックの『オルフェオ... 』の存在感は、薄れつつあるような...
というところから、改めて聴いてみる、グルックの『オルフェオ... 』。実は、期待を裏切って、おもしろかった!1760年代にこだわって聴いて来たせいもあるだろうけれど、1760年代ならではの不思議さが、このオペラからも立ち上っていて、"オペラ改革"云々以前に、その独特なトーンが魅力的。そもそも、そういうトーンを生み出した、グルックの経歴が興味深い。18世紀、多くの著名な作曲家を輩出した、チェコ特有の音楽教育を受けて育ち、プラハ、ウィーンを経て、ミラノへ... 古典派の先駆け、ジョヴァンニ・バッティスタ・サンマルティーニ(ca.1698-1775)に師事し、カストラートの大スター、カレスティーニ(ca.1704-ca.60)のためにオペラを書き、ロンドンではヘンデル(1685-1759)の音楽に直に触れて影響を受け、その後、ナポリでの『ティートの慈悲』の成功を手土産に、ウィーンへ... 1754年、宮廷楽長となる。ひとつのイズムに染まるのではなく、新旧の様々な音楽に触れ、自身に必要なものを、その都度、吸収して行った先に、グルックの『オルフェオ... 』があるのだろう。
ナポリ楽派を思わせる流麗なメロディが印象的でありながら、華麗なコロラトゥーラはなく。パリ進出はまだ先だけれど、フランス流のコーラス、バレエに彩られて。「歌」から「劇」を重んじる"オペラ改革"と謳われながらも、ドラマティシズムには欠ける帰来があり。だからこそのアルカイックさが広がっていて。また、それこそが古典主義のようにも思えて、まったく判断に困る!いや、この何物でもないニュートラルな様に、グルック芸術の到達点を見る思いがする。そして、精霊の踊り(disc.1, track.13)や、オルフェオのアリア「エウリディーチェを失って」(disc.2, track.6)といった、クラシック切っての名旋律を始めとする、ひとつひとつのアリア、コーラス、バレエの、磨き抜かれ、上品に輝く音楽は、どれも息を呑む美しさを放ち。そうして紡がれる音楽絵巻は、オペラを越えた音楽そのものの結晶のようで、この洗練の極み、18世紀の他のオペラには探せないのかも...
そうした、このオペラの特徴に見事に合致した、ガーディナー+イングリッシュ・バロック・ソロイスツの音楽性... 彼らならではの、オーセンティックな姿勢が、このオペラの素の独特なトーンをすくい上げていて。"オペラ改革"などという堅苦しい看板は雲散して、ただただ深く透明感を湛える演奏に、吸い込まれてしまいそう。そこに、端正なモンテヴェルディ合唱団のハーモニーが加わり、オルフェオを歌うレイギン(カウンターテナー)、エウリディーチェ歌うマクネアー(ソプラノ)、アモーレを歌うシーデン(ソプラノ)の、素直で伸びやかな歌声が、アルカディアの牧歌的な風景を瑞々しく描き出すようで、まさに古典美... そして、オーケストラ、コーラス、3人の歌手たち、全てがはまり過ぎるほどにはまっていて、たじろぎすら覚えてしまう。世知辛い21世紀に塗れて生きている者には、突き抜けた古典美が眩し過ぎるのかもしれない。けど、もっとよく見てみたくなる輝きで、いつの間にやら虜にさせられてしまう魔性も潜むのか?というより、グルックの『オルフェオ... 』は、こんなにもおもしろかった?!ということに、衝撃を受けてしまう。聴き直して良かった!

GLUCK ・ ORFEO ED EURIDICE
ENGLISH BAROQUE SOLOISTS ・ GARDINER


グルック : オペラ 『オルフェオとエウリディーチェ』 〔1762年、ウィーン版〕

エウリディーチェ : シルヴィア・マクネアー(ソプラノ)
オルフェオ : デレク・リー・レイギン(カウンターテナー)
アモーレ : シンディア・シーデン(ソプラノ)
モンテヴェルディ合唱団

ジョン・エリオット・ガーディナー/イングリッシュ・バロック・ソロイスツ

PHILIPS/434 093-2


グルックは、やがて、マリー・アントワネットに付き従い、パリへ進出する。完成されたと思われたグルック芸術は、ここで新たな展開を見せることに。というより、爆発!『オルフェオ... 』では考えられないような、パワフルで真にドラマティックなフランス語のオペラを次々に繰り出し、古典主義がヨーロッパの音楽シーンを征服する前夜、疾風怒濤で、18世紀の音楽の都、パリを圧倒する。それは、革命の後も余韻を残し、ケルビーニ、ベートーヴェンのオペラへと受け継がれ、さらには、ベルリオーズ、ワーグナーらが、グルックのオペラをリスペクト。『オルフェオ... 』で響く上品さとは全く違う、ロマン主義を予告するその音楽は、21世紀の今も、刺激的だ。
というグルック、来年は、生誕300年のメモリアル... 楽しみです。で、その内、グルックをいろいろ取り上げたいなと、ウズウズしております。いやー、グルックは凄いです。




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