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若きブリテン、近代音楽を飛び越える鮮やかさ! [before 2005]

ERATOが復活したの?!
ということを知ったのは、ジャルスキーの新譜。いつものようにVirgin CLASSICSからではなく、ERATOからリリースされて、もうびっくり。しかし、ジャルスキーのアルバムが緑の"E"印でリリースされるとは。いや、ジャルスキーのみならず、今後の"E"印の展開に、ワクワクしてしまう。隅々まで目の行き届いたフランスもの... 例えば、デュトワの指揮したシャブリエのオペラ『いやいやながらの王様』とか、ケント・ナガノが指揮したドリーブのバレエ『コッペリア』... それから、マニアックにして華やかだったピリオドもの... 例えば、クリスティの一連のモーツァルトのオペラとか、ミンコフスキによるリュリのオペラ『ファエトン』、コメディ・バレ集などなど... ERATOの方向性、センス、大好きだった。が、2001年に活動停止。親会社、WARNERには心底、失望させられたよ。
あれから12年、一体、何があったのか?と調べたら、EMIがWARNERに買われていた。よって、ジャルスキーもWARNERへ。で、ERATO、復活?けど、Virgin CLASSICSはどこへ行った?消えている... ワクワクさせられたのも束の間、12年経っても、やっぱりWARNERには失望させられるわけだ。
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ま、失望ばかりもしていられないので、WARNERがまだまだクラシックに本腰だった頃、ERATOがまだ勢いを保っていた頃、1999年のリリースから... 前回に引き続き、ブリテンの生誕100年のメモリアル!ケント・ナガノの指揮、ハレ管弦楽団の演奏、ニコライ・ルガンスキー(ピアノ)、ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)、ユーリ・バシュメット(ヴィオラ)ら、豪華ソリスト陣も加わっての、ブリテンが10代半ばから20代半ばに作曲した、珍しい初期作品集(ERATO/3984-25502-2)を聴く。

始まりの、ピアノ、弦楽四重奏と弦楽オーケストラのための「若きアポロ」(track.1)から、とにかくタイトルの通り、若さがスパークする!それは、1939年、ブリテン、25歳の作品。若い作曲家の、多少、生意気だったかもしれない、自分の道を貫き通して得られるヴィヴィットな感覚は、時を経て、21世紀の今となっても、まったく退色していない... というより、今だからこそ、よりそのヴィヴィットな感覚が映えてさえいるようにも感じられる。例えば、1939年当時のヨーロッパ大陸の近代音楽を思い起こして、これほどダイレクトに、音楽そのものの悦びを味あわせてくれる作品が他にあるだろうか?ブリテンの若さが、近代音楽におけるエリート主義的なロジカルな音楽性を振り払い、現代にも通用するセンスを獲得していることに、感嘆してしまう。もちろん、ピアノと弦楽四重奏を前面に立たせるあたりは、合奏協奏曲のリヴァイヴァル... そこから繰り出される、リズミカルでキビキビとした音楽は、近代音楽の、擬古典主義の延長線上にはあるのだろうけれど、作品から得られる感覚は、そうしたロジックを飛び越し、ジョン・アダムズを先取りするようなポップさを見せて、スタイリッシュ。クラシックというイメージを逸脱するような、独特の境地に至っていることが、凄い。いや、これこそがブリテン芸術の神髄か...
続く、ヴァイオリンとヴィオラのための二重協奏曲(track.2-4)、2つの肖像(track.5, 6)は、世界初録音だったもので、ともに10代の作品。で、10代でこれほど充実した音楽を書けてしまうのか?!と、ブリテンの早熟ぶりに改めて驚かされる。マルティヌーを思わせる、流麗さとモダニスティックな気分をセンス良く結び、美しくも刺激的な音楽を繰り広げる二重協奏曲(1932)。半音階に彩られて、新ウィーン楽派風の不穏さを纏い、ベルク流のロマンティックな音楽を展開する2つの肖像(1930)。ヨーロッパ大陸の新しいモードに敏感に反応する若きブリテンの姿が、この2作品からは聴き取れて、興味深い。一方で、すでにブリテンならではのヴィヴィットなセンスも現れていて、その後のブリテン芸術の萌芽を見出す。そこから、作品番号"1"を与えられたシンフォニエッタ(track.7-9)へ... つまりここから「ブリテン」が始まる。それは、戦前の近代音楽をしっかりと吸収し、モダニズムが孕むある種の暴力性を見事に洗練させ、独自の語法を生み出そうとしているあたりに、それ以前の作品とは違う決意のようなものが滲むのか。またそこに「若さ」が見て取れて、印象的であり、魅力的。
という、ブリテンの16歳から25歳までの作品を取り上げた、ケント・ナガノと、彼が率いたハレ管なのだが... まず、ソリストたちのゴージャスさに、目を見張る!「若きアポロ」(track.1)では、ルガンスキーのピアノが鮮やかに掻き鳴らされ、二重協奏曲(track.2-4)では、クレーメルのヴァイオリンに、バシュメットのヴィオラが、表情豊かに綾なし。揺ぎ無いスターたちの確かな演奏が、若きブリテンの作品に、さらなるパワーを与えているよう。その堂々たる... それでいて瑞々しさを失わない演奏に、改めて感服させられる。そして、ケント・ナガノ... やはり彼も若かった(まだ40代だったケント... )と言うべきか、音楽との向き合い方に、今以上に鋭敏な感覚を以って臨んでいるのを感じ。そこから繰り出されるハレ管の、極めてクリアで発色のいいサウンドが、これ以上ないほどにブリテンの若さに共鳴し、作品がよりヴィヴィットに息衝く。特に、「若きアポロ」は、ゾクゾクするほど魅力的で。ブリテンのその後の代表作に何ら引けを取らない... というより、その後のブリテンよりおもしろい?と思わせてしまう、ナガノ、ハレ管のクールな演奏、改めて魅了される。

BRITTEN DOUBLE CONCERTO
KREMER / BASHMET / LUGANSKY / NAGANO

ブリテン : ピアノ、弦楽四重奏と弦楽オーケストラのための 「若きアポロ」 Op.16 *
ブリテン : ヴァイオリン、ヴィオラとオーケストラのための二重協奏曲 Op.16 **
ブリテン : 2つの肖像
ブリテン : シンフォニエッタ Op.1 〔小オーケストラ版〕

ニコライ・ルガンスキー(ピアノ) *
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン) *
ユーリ・バシュメット(ヴィオラ) *
ケント・ナガノ/ハレ管弦楽団

ERATO/3984-25502-2




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