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二〇〇五、12タイトル/80タイトル。 [overview]

何だか、突然、神様から「目標」をもらったような、そんな感じ...
オリンピック。もちろん、アスリートでもないし、関連の仕事をしているわけでもないけれど、7年後に世界中の視線を集める大きなイヴェントが東京にやって来ると考えると、不思議とそれが「目標」に思えて来る。日本として、7年後までに片付けなくてはならない問題は、とにかく山積み。もちろん、オリンピックどころではない!という声も聞えて来るわけだけれど、7年という目指すべきタイムリミットを与えられたことは、日本にとってラッキーだったように感じる。それに、日々の何気ない生活にしても、オリンピックという言葉は、この先、7年間、灯台のように、不確かな時代(猪瀬知事、曰く... )を照らしてくれる?というのは、あまりに楽観主義が過ぎるか?けど、今は、単純だけれど、漠然とだけれど、大きなこと、小さなこと、がんばろう。と、シンプルに思える。
さて、7年先はともかく、当blogは、8年前であります。2005年のリリース、80タイトルを振り返っての、最も印象に残るアルバム... など、選んでみる。

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という80タイトルを聴いての12タイトル。
これでいいのか?!ってくらいに、尖がったセレクションになってしまった。やっぱり、2005年のクラシックはマニアック。でもって、12タイトルをこうして並べてみると、ピリオドが優勢... 好んでピリオドを聴いたことは間違いないのだけれど、とはいえ、ピリオド勢の活躍は目覚ましかったと思う。
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という2005年、最も印象に残るアーティストは?
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ジョス・ファン・インマゼール
今となっては、ドビュッシーラヴェル、さらにはプーランクまでも、ピリオドの範疇で取り上げてしまう鬼才、インマゼールだけれど、2005年という段階で、ロマン主義が熟してゆく頃への挑戦は衝撃的だった。何と言っても、ピリオドという新たな視点で、19世紀の最も濃密なあたりを響かせ、これまでとは違う、時代の香り、臭いを伴ったサウンドには、ゾクゾクさせられた。リストの「死の舞踏」(Zig-Zag Territoires/ZZT 041102)、リムスキー・コルサコフの『シェヘラザード』(Zig-Zag Territoires/ZZT 050502)と、モダンのオーケストラでは聴こえて来ない、19世紀の仄暗いあたりの味わい深さ... 仄暗さが生む独特の迫力は、魅惑的!一方で、ピアニストとしてのインマゼールを聴く、リストの後期作品集(Zig-Zag Territoires/ZZT 040902)。エラールのピアノの枯れたサウンドが、そのままリストの晩年の独特の境地をすくい上げ、また際立たせ、リストにしてリストを越えてしまうような、19世紀という時代感覚から抜け出してしまう(大胆なことを言ってしまうならば、サティの象徴主義の作品や、場合によってはケージのピアノ作品を聴くような... )イメージをもたらしていて、オーケストラとは違う衝撃を与えてくれた。ピリオド=時代に焦点を絞り、また絞り切って、そこに孕む作曲家のより自由の創造性を炙り出す。インマゼールの作曲家を捉える巧みなレンズ調節には、感服させられるばかり。
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そして、2005年のリリース、最も驚かされた1枚は?
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やはり、ピリオドで... いやそれもピリオドの極みを聴かせてくれる1枚で... スホーンデルヴルトの弾く、ベートーヴェンのピアノ協奏曲、4番と5番、「皇帝」の試演版(Alpha/Alpha 079)。試演まで再現してしまうのか?!と、ヤリ過ぎを感じなくもなかったのだけれど、これまでに聴いたことのない解像度をもたらされた試演版の魅力は、凄い!そして、息を呑むスホーンデルヴルトのピアノ、試演なればこその独特の規模によるクリストフォリの演奏の思い掛けない雄弁さに魅了されずいられなかった。
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さて、アルバム単位ではなく、そこに収められた1曲、1曲を見つめて...
2005年のリリース、最も印象に残るトラックを選ぶならば?
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ヤーコプス指揮、フライブルク・バロック管、RIAS室内合唱団によるハイドンのオラトリオ『四季』(harmonia mundi FRANCE/HMC 901829)から、秋のフィナーレ、「万歳、ぶどう酒だ!」(disc.2, track.11)。実りの秋、収穫の喜びが炸裂するテンションと、朗らかさ!それを見事なフーガで歌い上げ、輪になってグルグルと踊るような感覚は、遊園地のアトラクションに乗っているみたい!ヤーコプス・マジックに掛かったコーラス、オーケストラによる、クラシックの気難しさ、堅苦しさを吹き飛ばす痛快さに、ヤられてしまう。とにかく、楽しいっ!

そして、2005年のリリース、最も印象に残るアルバム!
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ひとつを選ぶことが極めて難しかった2005年のリリースではあるのだけれど、ミンコフスキ+レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルによるラモー、"une symphonie imaginaire"(ARCHIV/474 5142)を選んでみる。ラモーの数々のオペラに散りばめられたバレエ・シーンなどの管弦楽曲を集めて、新たに編集し、ひとつの交響曲としたならば?ラモーから新たな交響曲を生み出す?!この視点が斬新だった... ラモーのオペラからの管弦楽組曲は、これまでもたくさんリリースされているけれど、ミンコフスキはそうした組曲から踏み込んで、真新しい交響曲を編んでしまう。そうして編まれた交響曲は、まるでベルリオーズを思わせるようなおもしろさ、聴き応えをもたらしていて、驚かされることに... ミンコフスキのセンス、ピリオドにしてピリオド離れしたスケール感を見せるレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの見事な演奏が相俟って、ラモーのファンタジーがより壮大に繰り広げられる。その再創造に脱帽。

えーっと、まだ続きます... 2005年、最も印象に残るレーベルは?
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ECM!今さら特筆すべきでもないけれど、やっぱりセンスがいいECM... 1枚のアルバムから、何とも言えない雰囲気を醸すことのできるセンスは、本当に凄いと思う。そんな、アルバム... デイヴィス指揮、チューリヒ室内管によるストラヴィンスキーの管弦楽作品集(ECM NEW SERIES/472 1862)のモダニズムから立ち上るリッチな気分。リュビモフが弾く、20世紀、ロシア/ソヴィエトのピアノの系譜を遡る"Messa Noire"(ECM NEW SERIES/465 1372)では、モダニズムに魔法を掛けてお伽噺にしてしまうようなおもしろさ!バリバリの"ゲンダイオンガク"を取り上げながらも、絵画的なイメージを以って綴る、シカダ弦楽四重奏団による20世紀後半の弦楽四重奏曲集、"in due tempi"(ECM NEW SERIES/472 4222)。ヘンクのピアノによる、"ゲンダイオンガク"のアイコン、ケージの初期ピアノ作品集(ECM NEW SERIES/476 1515)では、現代音楽の難解さではなく、ケージの詩的さを巧みに響かせ、お洒落ですらある。こういう音楽を奏でるにあたって、作品そのものばかりでなく、アルバムから放たれる雰囲気を大切にするECMのセンスは、まったく貴重だ...
ところで、2005年のリリース、最も聴いたレーベルは、harmonia mundi FRANCE... 80タイトルの内、10タイトルも聴いていたことに、びっくりする。それは、まだ、創業者、ベルナール・クータツ(1922-2010)が健在だった頃、今のharmonia mundiとは違うトーン... まさにharmonia mundiというトーンに彩られていて、ちょっと懐かしくもあり、あの頃を思うと、寂しくもある。
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最後に、2005年、最も印象に残るパフォーマンスは?
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オペラを離れて、ジャズ、ポップスからのナンバーを歌ったフレミングのアルバム、"Haunted Heart"(DECCA/988 0602)。プリマとして聴いて来た彼女の歌声とはまったく違う、もうひとりの「ルネ・フレミング」という存在、かつてクラブ・シンガーをしていたという歌声には、本当に驚かされ、また魅了されたわけだが... 改めて聴いてみると、オペラハウスからクラブへ... クラブからクラシックへ... 相容れないような2つのフィールドを、巧みにつなげ、行き来できてしまうフレミングの音楽性に感心させられつつ、ただならず興味を覚える。クラブがあって、より大きなプリマとなり、プリマとなって、クラブへ戻っての、新たな境地があるのか。器用に歌い分けるのではなく、積み重ねて来た2つのフィールドでの経験を、向き合った音楽にナチュラルに活かし切るフレミングのパフォーマンスは、本当に凄いものだった。いや、見直してしまう...

交響曲 | 管弦楽曲 | 協奏曲 | 室内楽 | ピアノ
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yoshimi

こんにちは。
「Evocation」の記事のコメント欄では、画像認証が何度トライしても上手くいかなかったので、こちらに記入してみました。

ピオーは、ある方のブログ記事で初めて知った歌手なのですが、いろいろCDを試聴してみると、この『evocation』はとてもいいですね。
ピアノ音楽を聴くことが多く、歌曲はそれほど詳しくはないのですが、シュトラウス、ドビュッシー、シェーンベルクは私の好きな作曲家なので、選曲が私の好みに合ってました。
シェーンベルクの歌は、同時期に作曲されている《浄められた夜》の歌曲版みたいな曲ですね。
何よりピオーの歌声がとても美しく、声を聴いているだけで心地良く感じます。
早速CDを注文しました。全曲聴くのが楽しみです。
by yoshimi (2013-09-14 11:22) 

carrelage_phonique

yoshimiさん、

コメント、ありがとうございます!
(でもって、ご面倒を掛けてしまったようで、スミマセン... so-netブログは、どうも、時折、調子が悪くて... )

さて、evocation、いいです!素敵です!ピオーの代表作かも?ってくらいに。
http://genepro6109.blog.so-net.ne.jp/2011-10-10#V5063

シュトラウス、ドビュッシー、シェーンベルクも、もちろんすばらしいのですが、そこに加えられるショーソン、ツェムリンスキー、ケクランが絶妙で... それぞれが、それぞれを引き立て合っているのが印象的です。何気に、20世紀音楽の上質なカタログにもなっているから、巧い。で、ピオー。まさに「心地良い」美声。得意の18世紀のレパートリーよりも、心地良いかも... 大好きな1枚です。



by carrelage_phonique (2013-09-14 16:10) 

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