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『魂と肉体の劇』から、曼荼羅交響曲まで... [overview]

9月となりました。クラシックの世界は、新たなシーズンの始まり...
しかし、当blogは、新たなシーズンを迎えるなどという晴れがましさからは程遠く、8年前、2005年のリリースを聴き直し終えて、それを、今、振り返ろうとしております。若干、後ろ向き... 本当は、前を向いて、新譜をガンガン追いたいところなのだけれど、なかなか... それでも、8年前を見つめることは、興味深く、改めて聴き直す作業は、思い掛けなく新鮮な体験の連続だったり... 何より、リーマン・ショック以前、ユーロが絶好調だった頃、元気なクラシックが新鮮... というのは、元気のないクラシックに慣れ切ってしまった証拠か?いや、20世紀も10年代に突入し、クラシックのみならず、音楽そのものが新たな局面を迎えているわけで、安易に「元気がない」と言ってしまうのも問題なのかもしれない。それよりも、イノベーションを模索せねば!昔は良かった、なんて年寄りじみたことばかり言っていては、先へは進めない。と、言いながら、まずは8年前のクラシックから。
ということで、2005年のリリース、すでに取り上げていた5タイトルと、昨秋から聴き直して来た75タイトル。カヴァリエーリのオラトリオ『魂と肉体の劇』から、黛敏郎の曼荼羅交響曲まで、何だか、節操無く、マニアックに攻めての80タイトル... 一気に振り返ってみる。

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という80タイトル... こうして並べてみると、興味深く思うところ、多々あり。
8年前というと、そう遠い昔ではないけれど、やっぱり、今とは違うクラシックの風景が広がっていて... てか、まだPHILIPSが存在している!ガーディナー+ORRによるウェーバーのオペラ『オベロン』(PHILIPS/475 6563)。こういう渋い作品をピリオドで取り上げるPHILIPS、メジャー・レーベルにして、いい仕事していたなと、ちょっとしみじみしてしまう。で、まだまだメジャー・レーベルに活気があった頃、2005年。DGの現代音楽推し、というのもおもしろかった。それは、ちょうどブーレーズが80歳を迎えるということで、代表作、『ル・マルトー・サン・メートル』(Deutsche Grammophon/477 5327)、ピアノ・ソナタ集(Deutsche Grammophon/477 5328)がリリース。"ゲンダイオンガク"の権化も、何かスタイリッシュさを伴って紹介され、老舗、メジャー・レーベルの余裕のようなものを感じさせる。さらに、DGが大いに売り出していたゴリホフの"Ayre"(Deutsche Grammophon/477 5414)、DGへの移籍、第1弾だったサロネンの自作自演集(Deutsche Grammophon/477 5375)と、ジャスト現代な現代音楽の紹介にも積極的で。20/21という現代音楽のシリーズ(ブーレーズのタイトルはここに含まれる... )を展開していたDGだけれども、こうして振り返ると、こうも現代音楽に力を入れていたかと、ちょっと驚いてしまう。

さて、現代から一転、再びピリオドに目を向けるのだけれど...
ビオンディ+エウローパ・ガランテによるヴィヴァルディのパスティッチョ『バヤゼット』(Virgin CLASSICS/5 45676 2)。それは、まさにヴィヴァルディ・オペラ・ルネサンスの本格化を告げるものだったように思う。今でこそ、ヴィヴァルディのオペラは当たり前のように聴けるけれど、naïveによる"VIVALDI EDITION"から、ヴィヴァルディ・オペラ、復活の試みが進み、そこにビオンディが参戦!それまで未体験ゾーンだったヴィヴァルディのオペラが、続々とリリースされ、ヴィヴァルディ像が刷新されてゆくことに、ワクワクした。そして、今に至る。この8年の成果に感慨... さらに、今となっては、ヴィヴァルディから、そのライヴァル、ナポリ楽派へと視野は広がりつつあって、まだまだ発掘の進むバロック!まだまだフロンティアはある!ということが刺激的だ。
もうひとつ、ピリオドで興味深いのが、古い音楽というイメージの強い「ピリオド」で、どこまで時代を下ることができるか?というチャレンジ。今となっては、20世紀、ラヴェルもプーランクもピリオドの範疇となったけれど、8年前は、19世紀、近代音楽の前段階ですら、ピリオドで取り上げるとなると、衝撃だった。そんな、聴く側に挑んで来るような、ヘレヴェッヘ+シャンゼリゼ管によるブルックナーの7番の交響曲(harmonia mundi FRANCE/HMC 901857)。どこか、恐いもの見たさのような感覚もあったけれど、今、改めて聴き直してみると、ピリオドなればこそのものがしっかりとある。いや、ピリオドだからこそ掴めるブルックナー像に改めて魅了される。さらに、インマゼール+アニマ・エテルナによるリストの「死の舞踏」(Zig-Zag Territoires/ZZT 041102)、リムスキー・コルサコフの「シェヘラザード」(Zig-Zag Territoires/ZZT 050502)と、いわゆるクラシックの名曲にして、典型的な19世紀の音楽をピリオドで捉えれば、クラシックの黄金期の音楽の上質さが詳らかとなり、改めて圧倒される。それにしても、ピリオドのチャレンジングさ、パワフルさは凄かった!

そして、マニアックだった2005年。
バルトリが歌ったのは、18世紀初頭、オペラが禁止されたローマの音楽シーン... バロック・オペラ全盛期の、それもオペラが禁止されていたローマって、バルトリでなくてはあり得ないマニアックさ、"OPERA PROIBITA"(DECCA/475 7029)。禁止されて、よりオペラティックになるという、当時のローマの音楽シーンの刺激的な有り様を、見事に歌い上げる!結局、「マニアック」なんていう形容詞は吹き飛んでしまうほど、バルトリのパフォーマンスは熱い... それから、試演を再現してしまった、スホーンデルヴルトのピリオドのピアノ、クリストフォリの演奏によるベートーヴェンの5番のピアノ協奏曲、「皇帝」、試演版(Alpha/Alpha 079)。「ピリオド」とはいえ、試演の状態まで掘り起こす必要があるのか?と思いきや、そこから、いつも以上の情感を掘り起こし、グっと来てしまうから、スホーンデルヴルトはやっぱり凄い。マニアックではあるけれど。そこに来て、異彩を放ったのが、フランツ・シュミットの4つの交響曲(Querstand/VKJK 0503, VKJK 0504, VKJK 0505, VKJK 0506)を全て取り上げてしまったルイジ指揮、MDR響。ある意味、ルイジのマニアックへの信仰告白のようで、気迫の籠ったシリーズ、印象深い。で、最後に、これこそマニアックの極み!グレゴリオ聖歌は如何にして生まれたか?に迫る、セクエンツァ、ディアロゴスによる"CHANT WARS"(deutsche harmonia mundi/82876 66650 2)。グレゴリオ聖歌はクラシックの始まりと認識されながらも、そのグレゴリオ聖歌がどのように成立したかは、あまり説明されないように感じる。のだけれど、ここに、その成立過程が、丁寧に描かれる。そうして浮かび上がる、北と南の文化戦争!先進的な文明を誇っていたはずの南が、北の新興勢力に呑み込まれるという、これまであまりイメージしづらかった構図が刺激的。何より、中世の奥行きと広がりに、興味を掻き立てられる。
それにしても、これほどマニアックなアルバムは他にない。しかし、"CHANT WARS"から響く歌声の雄弁さたるや!いや、「マニアック」は、音楽とどれほど真剣に向き合えたかのバロメーターなのかもしれない。ならば、マニアックなものを恐れることはない。というより、そこにこそ、より濃密な音楽体験が待っているはず... そして、マニアックに彩られた2005年は、まさに、クラシックが、真剣に音楽と向き合えた頃だったのかもしれない。で、この「マニアック」が、次の時代を切り拓くように強く感じる。

さて、次回から、3回に渡って、2005年のベストを選んでみようかと思っております。で、困ったのは、その後だ...続くのか?続かないのか?




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