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IRCAMがジャズと出会ったら... マレシュ・ワールド。 [2005]

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夏を、様々な視点から、多角的に聴いている8月。
明確にそういう意識を持って聴いて来たわけではないのだけれど、逃れようのない、「夏」が極まる酷暑を目の当たりにして、結局、夏へと意識が向かうしかなかったか?それほどに、凄い夏なのかも... 今年の夏... で、そういう夏に囚われて聴いて来た8月を改めて振り返ってみると、結構、おもしろい。北欧のコーラスに、アコーディオンでゴルトベルク変奏曲と、音楽に清々しさを求めつつ、フォリア『ロビンとマリオンの劇』"Les chants de la terre"と、少しホットでスパシイシーなサウンドが続いた後で、スタイリッシュにクール・ダウン。
モナコ生まれのフランス人、名門、ボストン、バークリー音楽大学でジャズを学び、やがて、"ゲンダイオンガク"の本山、IRCAMにてミライユに師事した異色の作曲家、ヤン・マレシュ(b.1966)。都会的なコンテンポラリー・ジャズとIRCAM仕込みのSFちっくなサウンドの融合は、現代における真夏の夜の夢?そんなイメージがあって、久々に手に取ってみた。2005年にリリースされた、ジョナサン・ノットの指揮、アンサンブル・アンテルコンタンポランによるヤン・マレシュの作品集(ACORRD/476 7200)を聴き直す。

ラプソディー・イン・ブルー(1924)は、ジャズとクラシックの出会いの記念碑... そして、20世紀前半、多くのヨーロッパの作曲家がジャズにインスパイアされ、たくさんの興味深い作品を残した。これはジャズなのか?というショスタコーヴィチのジャズ組曲に至るまで、盛りだくさんである。が、そうしたあたり、あまりクローズアップされていないのが現状。で、極めて残念!新しいムーヴメントに目敏い近代音楽の作曲家たちならば、一度はジャズに恋したはず... そんな恋煩いは、20世紀の音楽史に数々の微笑ましい情景を生み出しているのだが... そして、時代を近代から現代へと下って... コンテンポラリー・ジャズと、コンテンポラリー・ミュージック、恋するまでに至らなくとも、何か、より親密なものを感じてしまう。ジャズ風の近代音楽とは一線を画す、コンテンポラリーというステージで、まるで共鳴するかのような両者。マレシュの音楽が、まさにそれか?
コンテンポラリー・ジャズと、コンテンポラリー・ミュージックが見事に融合し、ジャズでは味わえないハイ・エンドなサウンドを響かせつつ、"ゲンダイオンガク"の難解さをよりシェイプして、スタイリッシュな音楽を繰り出して来るマレシュ。1曲目、メタリクスの、トランペットが奏でる都会的な気分と、エレクトロニクスにより造り出される鮮やかな音響の風景。それは、深夜の首都高を疾走するようなスリリングさと、そんな闇夜に浮かぶ光の流れを、高層のホテルの一室から眺めるような俯瞰が交差し。例えば、リドリー・スコットの『ブレードランナー』の世界に迷い込むような、SF的、ビターなファンタジーを味あわせてくれる。それは、硬過ぎず、柔らか過ぎず... で、カッコいい... こういう体験をもたらしてくれる現代音楽は、なかなか他に探せないように思うのだけれど。
その後での、エクリプス(track.2)は、クラリネットと14の楽器によるアンサンブルが生み出すサウンドの、エレクトロニクスを介さない素直さが、まず印象的。アコースティックであることの素朴さと、ひとつひとつの楽器の息衝く様に、より色彩の幅を見出せるあたりがおもしろい。けれど、そこはIRCAM仕込みのマレシュ... 14の楽器を巧みに織り成して、エレクトロニクスに負けないヴィヴィットな音響を実現してしまう。その鋭利な感性に、この作曲家の凄さを感じる。そして、その音響の織物に、ぼぉっと浮かび上がるクラリネット・ソロの、コンテンポラリー・ジャズな気分... これが絶妙!スペクトル解析だ、何だと、コンピューターを駆使しての気難しさを窺わせるIRCAM特有のサウンドではあるのだけれど、その感性、意外とジャズには合うのかもしれない。
続く、アントレラクス(track.3)、スュル・セーニョ(track.4)は、様々な楽器が生み出すパルスが印象的。それは、どこかガムランを思わせて、仄かにエキゾティシズムも漂うのか、おもしろい。特に、スュル・セーニョは、ツィンバロン、ハープ、ギター(と、コントラバスによる四重奏... )と、トーンの近い楽器によるパルスが魅惑的で。パルスで紡がれる音響の風景のファンタジックさは、オディロン・ルドンのパステル画に似ているようで、何とも言えないミステリアスさが余韻を残す。そして、最後は、1曲目、メタリクスに、器楽アンサンブルが加わって規模が大きくなった、その名もズバリ、メタル・エクステンションズ(track.5)。器楽アンサンブルのビック・バンド的な効果とでも言おうか、トランペット・ソロの孤独が際立ったメタリクスのハードボイルドさにはない華やぎが、より動きを生み出していて、また違った聴き応え、魅力を生み出し、楽しませてくれる。で、またカッコいい...
そんなマレシュ作品を聴かせてくれた、アンサンブル・アンテルコンタンポラン。近現代音楽のスペシャリスト集団の織り成すサウンドの説得力は並々ならない。そこに、当時の音楽監督、ノットの指揮... やはり現代音楽のスペシャリストとしての明晰さがありつつも、この人ならではの独特のダークさ?どこか冷めたような、いや斜に構えているような、そういうストレートではない感性が、マレシュの感性に上手く添い、よりおもしろいイメージが増幅されるのか。それぞれの作品は活き、圧倒的なマレシュ・ワールドが出現する。そんな、揺るぎない"ゲンダイオンガク"が奏でられる颯爽とした風情!が、またクール。

compositeurs d'aujourd'hui Yan Maresz

マレシュ : メタリクス 〔トランペット・ソロとライヴ・エレクトロニクスのための〕 *
マレシュ : エクリプス 〔クラリネットと14の楽器のための〕 *
マレシュ : アントレラクス 〔六重奏のための〕
マレシュ : スュル・セーニョ 〔四重奏とライヴ・エレクトロニクスのための〕
マレシュ : メタル・エクステンションズ 〔トランペットと器楽アンサンブルのための〕*

ジョナサン・ノット/アンサンブル・アンテルコンタンポラン
ジャン・ジャック・ゴードン(トランペット) *
アントワーヌ・キュレ(トランペット) *
アンドレ・トゥルーテ(クラリネット) *

ACORRD/476 7200




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