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ロマン主義を結晶化させるガーディナー、ウェーバーの『オベロン』。 [2005]

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梅雨入りして、しっとりロマン主義のつもりだったのが...
空梅雨?いや、じめーっとした日々を送るより、さっぱり爽やかな方がいいに決まっている。まったく快適な日々!ではあるのだけれど、調子狂うなァ。空を見上げると、時折、秋空のようだったりして。どーなってるんだ?ま、どちらにしろ、6月はロマン主義を集中的に聴く!ということで、フンメルのピアノ・ソナタベートーヴェンのピアノ協奏曲と来て、ウェーバーのオペラ!ドイツ・オペラの夜明け、それはワーグナーを迎える前の清々しい朝。瑞々しく、爽やかなサウンドが心地良く耳元を吹き抜けてゆく。って、空梅雨にはぴったり?
2005年にリリースされた、ジョン・エリオット・ガーディナー率いる、ロマン主義の時代専用ピリオド・オーケストラ、オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティクの演奏、モンテヴェルディ合唱団らによる、ウェーバーのオペラ『オベロン』(PHILIPS/475 6563)を聴き直す。

『オベロン』というと、序曲... いや、この序曲はよく聴くだけに、序曲「オベロン」という管弦楽曲なのか?とすら思っていたことも。そんなウェーバーのオペラ『オベロン』、本編を初体験したのが、このガーディナーによるオリジナル、英語版だった。で、『オベロン』が英語のオペラだったと初めて知った。そもそも英語のオペラは少ない。英国人によるオペラならばともかく、大陸の作曲家による英語のオペラなんて、他にあるのだろうか?一方で、英国を舞台にしたオペラ作品は、驚くほどある。『トリスタンとイゾルデ』、『ファルスタッフ』、『アンナ・ボレーナ』、『マリア・ストゥアルダ』、『エリザベッタ、インギルテッラ女王』、『イ・プリターニ』、『マルタ』、などなど... ここにスコットランドを加えると、さらに、さらに... けど、英語では歌わない。今からすると、英語でも聴いてみたかったりする。というのも、『オベロン』で歌われる英語が、思い掛けなく新鮮だったから!
そもそも、ウェーバーはどうして英語のオペラを作曲したのだろう?ベルリンでの『魔弾の射手』(1821)の初演の成功で、一躍、ドイツ・ロマン主義の旗手となったウェーバー(1786-1826)。『魔弾の射手』はヨーロッパ各地のオペラハウスでも人気を得て、そうした評判はやがてロンドンにも伝えられる。が、ウェーバーの人気が高まった1820年代、イタリア・オペラが支配的なロンドンでは、ドイツ語のオペラの上演が許可されなかったらしい。そうした、イタリア・オペラ一辺倒の閉塞感を打破するために、ロンドンのコヴェントガーデン王立歌劇場が、ウェーバーに英語のオペラを委嘱(1824)したのが切っ掛け。大陸で最も人気の作曲家による新作、作曲者自身の指揮による初演!と、ロンドン側は、ド派手に海外ビッグ・アーティストの招聘をブチ上げたものの、ウェーバー自身は乗り気ではなかったらしい(ウェーバーはすでに結核だった... )。そして、1826年、『オベロン』は、無事、完成。ウェーバーの渡英とともに初演。が、ウェーバーは、そのまま英国で客死。『オベロン』が遺作となる。
そんな背景を改めて見つめてみると、聴こえて来る音楽も少し違ったものに感じられるのか?『魔弾の射手』に、その地方色の濃さ、サスペンスフルでオカルティックなあたり、多少、泥臭いものを感じるならば、妖精の王、オベロンの世界は、より洗練された音楽で描かれ、ファンタジックな美しさを湛えている。それがまた、浮世離れした雰囲気も漂わせて、死を間近にしたウェーバーの境地なのか... いや、だからこそ、『魔弾の射手』以上に純度を高めたロマン主義が印象深い。ウェーバーならではの流麗さに彩られつつ、まだまだ若かったロマン主義の瑞々しさに溢れたアリア、重唱、コーラス... そのひとつひとつに魅了される。一方で気になるのが、ジングシュピールの形式を取る『オベロン』の、その台詞部分を、全て語りにまかせてしまったこと。そもそも、『真夏の夜の夢』と『テンペスト』をリミックスした物語はかなり複雑になっているようで、そのあたりを整理する意味合いで、ガーディナーは語りを用いたようだけれど、かえってドラマ性が削がれてしまう?それは、劇音楽でも聴いているようで、オペラとしてはもどかしさを覚えてしまう。が、それによって、ウェーバーの音楽はより映えるのかもしれない。ウェーバー芸術の到達点としての最後のオペラの音楽を凝縮して、輝きに充ちたものとしていることは間違いない。
で、その輝きを、見事に引き出すガーディナー+オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク。どのピリオド・オーケストラよりも洗練されたそのサウンドは、全ての音をクリアに響かせ、ロマン主義を最高のクラリティで見せてくれる。そこに、ロマン主義の瑞々しさを丁寧に捉えるフレッシュな歌手たち!今、まさにスターとして活躍するカウフマン(テノール)や、ガーディナーのオペラには欠かせないマルティンペルト(ソプラノ)らが、透明感溢れる歌声で、ガーディナーが磨き上げたウェーバーの音楽を、鮮やかに彩る。そして、イギリス切ってのハイ・クウォリティを誇るモンテヴェルディ合唱団!要所要所で盛り上げるコーラスは、躍動的でありながらも限りなくすっきりとしていて、さすがのハーモニー... そうした全てのパート、隅々までが、ガーディナーならではの精緻さを以って紡がれていて、圧巻。それは、もう、結晶。

WEBER : OBERON
Davislim ・ Martinpelto ・ Comparato ・ Kaufmann ・ Dazeley ・ Monteverdi Choir ・ ORR/Gardiner


ウェーバー : オペラ 『オベロン』 〔オリジナル、英語版〕

オベロン : スティーヴ・ダヴィスリム(テノール)
レチア :  ヒレヴィ・マルティンペルト(ソプラノ)
ファティメ : マリーナ・コンパラート(メッゾ・ソプラノ)
ヒュオン : ヨナス・カウフマン(テノール)
シェラスミン : ウィリアム・デイズリー(バリトン)
第1の人魚 : キャサリン・フーゲ(ソプラノ)
第2の人魚 : シャーロット・モブス(ソプラノ)
パック : フランシス・ボーン(メッゾ・ソプラノ)
語り : ロジャー・アラン
モンテヴェルディ合唱団

ジョン・エリオット・ガーディナー/オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク

PHILIPS/475 6563

6月、ロマン主義下り。
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