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ヒンデミットを改めて見つめる、没後50年... [2005]

音楽はちょっと脇に置いておいて、映画の話しで始めてしまう、今回...
録画しておいた映画をいろいろ見る今日この頃。そんな1本、蜷川実花監督の話題作、『ヘルタースケルター』。何と言うか、恐いもの見たさで見たのだけれど、期待を裏切らないドギツさ。で、ドギツさで逃げたか?逃げてしまったからか、後に残るものが無い... ドギツイはずが妙にライトな読後感が奇妙で、それもまた味なのか?いや、やっぱり、これは、実花ワールド、実花カラーの、めくるめくヴィジュアルを楽しむ映画なのだなと... で、そのヴィジュアルに負けず、ヴィヴィットに存在感を示した上野耕路の音楽に驚いた!ベルク?ショスタコーヴィチ?サティ?それこそ、近代音楽の"helter skelter"っぷりに、実は、ヴィジュアル以上に色めき立ってしまう。それにしても、見事に近代音楽から、実花カラーに合うサウンドを抽出し、色調補正し、刺激的に仕上げる!その職人的な仕事ぶりに魅了されつつ、20世紀の作曲家たちのドギツイ個性が、今なおヴィヴィットさを失っていないことに、うれしくなってしまう!ずっと古典派を聴き込んで来たからか、余計に近代音楽の刺激的なあたりにエキサイト!
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そういえば、今年はヒンデミットの没後50年のメモリアルだった... ということで、久々の近代音楽... 2005年にリリースされたアルバム、エサ・ペッカ・サロネンが率いたロサンジェルト・フィルハーモニックの演奏で、ヒンデミットの代表作、ウェーバーの主題による交響的変容、「四つの気質」、交響曲「画家マティス」(SONY CLASSICAL/SICC 229)を聴き直す。

パウル・ヒンデミット(1895-1963)、没後50年。
こうして、改めて見つめると、そんな昔の人じゃない... けれど、ぼんやりと遠くに感じるヒンデミット。近代音楽には、多くのスターがいる。そして、そのひとりひとりが個性を極めていて、それぞれに独特の存在感を持っている。一方で、ヒンデミットはどうだろう?そのインパクトは、少し弱いのか、近代音楽の個性のキツいスターたちよりも少し奥に引っ込んでしまっていて、遠くに感じるのか... しかし、ヒンデミットという存在は、なかなか興味深い。例えば、バウハウスでのシュレンマーとのコラヴォレーション、自動演奏オルガンによる『3つ組のバレエ』(1926)。ふと考えると、フューチャリスティックなメカニカルな音楽のイメージを切り拓いたのは、ヒンデミットなのかもしれない。そんな機械的な要素を取り入れて繰り広げられる7つの室内音楽(1921-28)。当時の最新流行、ジャズから、サイレンなど街の喧騒までを取り込んで、新即物主義の刺激的なサウンドを響かせれば、時代をグっと遡って、バロックや古典派をリヴァイヴァルして、新古典主義の気取ったサウンドも響かせる。そんな、若きヒンデミットの音楽は、本当におもしろい。が、そうした近代音楽のアヴァンギャルドから、次第にロマン主義へと立ち返るヒンデミット。このあたりが、何となくヒンデミットのインパクトを弱めているように感じる。またそれが、重厚感のある、ドイツならではのしっかりとした音楽なものだから、生真面目な印象を受けて、個性のキツいスターたちがひしめいている近代音楽おいては、ぼんやりとしてしまうのか。という、ぼんやりし出した頃の代表作を聴き直すのだけれど...
ウェーバーの主題による交響的変容(1943)、「四つの気質」(1940)、交響曲「画家マティス」(1934)。まさにヒンデミットの代表作... そういう点で、ひとつ違った視点を求めたいサロネンにしては、捻りが無いかなとも思うのだけれど。そのサロネンが、あえてこの3作品を選んだというのなら、納得のヒンデミット代表作品集か。いや、改めて聴き直してみれば、ぼんやりとしていたヒンデミット像が、鮮烈に立ち上がる!1曲目、"交響的変容"なんて仰々しい呼び名が付いているものの、ちょっとエキセントリックな中華風、トゥーランドット・スケルツォ(track.2)がスパイスを効かせて、ギミックにも感じるウェーバーの主題による交響的変容(track.1-4)。そのギミックさすら、何か堂に入って、ドイツ音楽の旨味を滴らせるような感覚すらあって、ゾクゾクさせられる。ギミックであるところを、これはギミックです、とは言わないのがサロネン流?ギミックだろうがなんだろうが、淡々と音を紡いでゆく。それも、大真面目で、よりオーケストラを鳴らして... すると、ギミックが真実になって、その真実が奇怪に膨れ上がって、迫力満点で迫って来る。より存在感を増したヒンデミットの音楽に、思い掛けなく圧倒されてしまう。
続く、2曲目、ピアノとオーケストラのための主題と変奏「四つの気質」、3曲目、交響曲「画家マティス」では、サロネンのヒンデミットとの向き合い方が、より発揮されて。多少、つまらないかな?と思っていた音楽も、その「つまらない」ところにこそ、何か、鮮烈な魅力を吹き込まれていて。「四つの気質」(track.5-9)では、アックスのピアノ・ソロはもちろん、L.A.フィルの瑞々しい響きが見事!ちょっとブリテンを思わせるようなライトさを感じ、思い掛けなくヒンデミットの音楽にダンディズムのようなものが薫り、魅了されてしまう。一方、交響曲「画家マティス」(track.10-13)では、オペラが基となっている分、ドラマティックに展開するわけだけれど、そのあたりをまるで映画を見るかのようなヴィヴィットさを以って繰り広げるサロネン。サロネンなればこそ、それは当然ながらクリアなのだけれど、ただ神経質にクリアさを求めるのとは違う、スコアをよりクリアに読み解いて、そこに籠められた旨味のようなものをきっちりとすくい上げる。美しい響き以上の情感が溢れ出し、圧倒される。そして、ヒンデミットの音楽が持つ、確かな充実感に、酔い痴れてしまう。嗚呼、ドイツ音楽!
それにしても、サロネン、L.A.フィルという組合せは、本当に凄かった... 今、改めて、かつての演奏を聴き返してみると、余計にそう感じてしまう。もちろん、いつまでもひとところに留まっていられるものではないけれど、サロネンによって、ひとつひとつの細胞までもが輝きだしているかのようなL.A.フィルの響きの豊かさには目を見張る。高機能というだけでない+α...

交響的変容~サロネン・コンダクツ・ヒンデミット●サロネン

ヒンデミット : ウェーバーの主題による交響的変容
ヒンデミット : ピアノとオーケストラのための主題と変奏 「四つの気質」 *
ヒンデミット : 交響曲 「画家マティス」

エマニュエル・アックス(ピアノ) *
エサ・ペッカ・サロネン/ロサンジェルス・フィルハーモニック

SONY CLASSICAL/SICC 229




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