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ハイドンから、モーツァルト... [2005]

4月、古典派でポジティヴになる!
2012年を聴き終えて、虚脱感... さて、どうやって元気になろう?ということで聴き始めた古典派。やっぱり、屈託のない小気味いい古典派の音楽というのは、元気が出る。例えば、ハイドンの交響曲を無心に聴いている時間というのは、シンプルにハッピー。ロマン主義の音楽とは違って、ひたすらにポジティヴな音楽が展開されるあたり、ちょっと麻薬的なところもあるかもしれない。で、そんなことを、18世紀の音楽ファンも感じ取っていたのか?ハイドンの交響曲は、パリやロンドンで熱狂的に歓迎された。特に、パリなどでは、ハイドンを語る詐欺?な交響曲まで登場したというから、びっくり。今となっては気難しく思える「交響曲」も、古典派の時代には、独特のエンターテイメントとして認識されていたわけだ。で、もちろん、その魅力は、今も、何ら変わらない... のだけれど、交響曲ばかりが続いたので、ここでちょっと気分を変えて、ピアノで古典派を聴いてみる。
2005年にリリースされた、鬼才、アンドレアス・シュタイアーのフォルテピアノによる2タイトル... ゴットフリート・ファン・デア・ゴルツの指揮、フライブルク・バロック管弦楽団の演奏で、「ハンガリー風ロンド」で有名なコンチェルトを含む、ハイドンのピアノのための協奏曲集(harmonia mundi FRANCE/HMC 901854)と、「トルコ行進曲」が聴きどころ!モーツァルトの10番から12番までのピアノ・ソナタを取り上げる1枚(harmonia mundi FRANCE/HMC 901856)を聴き直す。


ハイドンという存在のありのままを際立たせる!シュタイアーが弾く、ピアノ協奏曲集。

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ここまで、交響曲をしっかりと聴いて来たものだから、ピアノ協奏曲の花やかさに、交響曲とはまた違った浮き立つ感覚を覚えてしまうのだけれど... そんなハイドンのピアノ協奏曲を、モーツァルトのピアノ協奏曲と比べたら?と、ふと思う。ハイドンの音楽は、どこか硬い?それは、モーツァルトの父親世代(といっても、ハイドンはモーツァルトの父親よりずっと若いのだけれど... )という「古さ」もあるだろうか?あるいは、律儀に楽長の仕事をこなせたハイドンの性格だろうか?「交響曲の父」にとって、スター性を拠り所とするコンチェルトの華麗なるあたり、苦手だったのかも... ぼんやりとそんなことを感じてしまう。オーケストラを背景に、極めてナチュラルに、自由気ままにメロディを歌い上げたモーツァルトを思い起こすと、少しもどかしさを感じる。久々に聴いて、そんなことを感じる。ピリオド界切っての鬼才、シュタイアーを以ってしても、何か硬さを拭えないのか...
じゃあ、つまらないかというと、けしてそうではない。例えば、最も有名なHob.XVIII-11のコンチェルトの終楽章、「ハンガリー風ロンド」(track.9)の、田舎趣味のゴツコヅした感じなどは、硬さあってこそなのだなと... それでいて、テンション高めに疾走する。ある種、体育会なノリなのか?時に脱線もあって、交響曲のポジティヴさとつながる感覚を見出して、今さらながらにハイドンの音楽が腑に落ちた気がする。モーツァルトの音楽のような、天才のひらめきが生む天衣無縫の流麗さとは違う、ローカルだけれど、忙しかったけれど、恵まれた環境でじっくりと古典派を切り拓き、積み上げて行った成果というのは、モーツァルトに負けず、また独特なのだなと、このピアノ協奏曲集を改めて聴いて感じ入る。そして、ハイドンにはハイドンの魅力が間違いなくある!
そんな演奏を聴かせてくれた、シュタイアー。ハイドンの、思い掛けなく無骨さに足を取られて、いつものように魔法を掛けられなかった?と、最初は思ったものの、ハイドンが、思い掛けなく無骨?!というあたりを掬い上げてしまったことが、シュタイアーならではの演奏なのだなと、今になって唸らされる。そうして、ハイドンという存在のありのままを際立たせる!このことが、魔法だったか... そして、ファン・デア・ゴルツに率いられたフライブルク・バロック管の、中身の詰まったサウンド!だからこそ、しっかりと響く「交響曲の父」のコンチェルト。彼らならではの感覚というのも、このアルバムには欠かせない。で、忘れてならないのが、ファン・デア・ゴルツのヴァイオリン!ピアノとヴァイオリンのための協奏曲(track.4-6)で聴かせるソロは、一味違って、流麗!ピアノ、オーケストラは、バロックや前古典派の雰囲気を漂わせる中、古典派ならではの美しくやわらかなラインを描き出し、絶妙なスパイスに... あまり目立つことの無い作品をグっと素敵なものに...

Haydn ・ Concertos pour piano ・ Andreas Staier

ハイドン : ピアノと弦楽のための協奏曲 ト長調 Hob.XVIII-4
ハイドン : ピアノとヴァイオリンのための協奏曲 ヘ長調 Hob.XVIII-6
ハイドン : ピアノ協奏曲 ニ長調 Hob.XVIII-11

アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ)
ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(ヴァイオリン)/フライブルク・バロック管弦楽団

harmonia mundi FRANCE/HMC 901854




モーツァルトの「アマデウス」を浮かび上がらせるシュタイアーの真骨頂、ピアノ・ソナタ集。

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そして、モーツァルト... ずっとハイドンを聴いて来たものだから、何だろう、モーツァルトの自由さに、これまでになく魅了されてしまう。けして、ハイドンが劣るわけではないけれど、やっぱり、モーツァルトという存在は、古典派に在って、突き抜けているのだなと、つくづく考えさせられる。そんな、シュタイアーの弾く、モーツァルトのピアノ・ソナタ、10番(track.1-3)、11番(track.4-6)、12番(track.7-9)。音楽として無理がない、というか、苦も無く、スルスルと美しいラインが引かれて行って、さらりとひとつの作品にまとめ上げられてしまう。今、改めてモーツァルトのピアノ・ソナタを聴いてみると、そのあまりのナチュラルさに不思議な心地にさせられる。
音楽というものは、ある意味、極めてロジカルだと思う。そもそも「ソナタ」という時点で、その型がロジカルだ。何より、音の高低、リズムというものには、数学的な性質がある。というより、古代ギリシアでは、数学だった。今となっては、「音楽」と「数学」は、イメージとしてまったく結び付かないけれど、現代においても、ブーレーズが数学者でもあったりすることが、象徴的に思える。ならば、モーツァルトはどうだったろう?モーツァルトの音楽の天衣無縫さというのは、ロジックではけして追い付けないように感じる。それが、「アマデウス」、神に愛されたからこそ、湧き上がる楽想をそのままスコアに書き連ねて、紡ぎ出される音楽... そういう、モーツァルトを神話にしてしまう風潮というのは、好きになれないけれど、モーツァルトの音楽に触れてしまうと、そう言いたくなってしまう。特に、ピアノ・ソナタのような作品は、よりモーツァルトの存在に近付くようで、その「アマデウス」なあたりを強く感じてしまう?で、ここで聴く、シュタイアーによるピアノ・ソナタは、「アマデウス」そのもののようにも感じてしまう。
アンドレアス・シュタイアー。やっぱり、この人の鬼才っぷりというか、並はずれた音楽性というのは、ただならない。肩の力を抜いて、大きく音楽を動かしてしまう不思議さ。それは、魔法?大胆でありながら、ナチュラルなところへ持って行ってしまうおもしろさ。モーツァルトのピアノ・ソナタなど、坦々と演奏していては、単に淡々と終わってしまうかもしれない。けれど、そこにこそ「アマデウス」を浮かび上がらせるシュタイアーの真骨頂。このアルバムの山場は、やっぱり「トルコ行進曲」(track.6)なのだろうけれど、1曲目、10番のピアノ・ソナタの最初の一音からして、はっとさせられ、気が付けば、「アマデウス」にどっぷりと浸かっている。そうして、山場が来る。「トルコ行進曲」... 当然、普通には弾かない。シュタイアーの個性が炸裂する!のだけれど、それが、モーツァルトに近付いていると感じさせるから、凄い。アマデウスならば、きっと普通になんて演奏しなかったはず... ということだな... いや、きっとそうだったのだろうな... 久々に聴いて、まだ驚かされる。

Mozart ・ Sonatas ・ Staier

モーツァルト : ピアノ・ソナタ 第10番 ハ長調 K.330
モーツァルト : ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K.331 「トルコ行進曲付き」
モーツァルト : ピアノ・ソナタ 第12番 ヘ長調 K.332

アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ)

harmonia mundi FRANCE/HMC 901856

4月、古典派でポジティヴになる!
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