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それで、序曲の後はどうなる?売られた花嫁。 [2012]

HMC902119.jpg12op.gif
『メドンテ』『棄てられたアルミーダ』『パリーデとエレナ』
ひどくマニアックなオペラが続いております。が、ダメ押し的に、もうひとつマニアックなオペラを聴いてしまう!序曲は有名、舞曲も序曲とセットで取り上げられること、多々あり... けれど、本編を聴くことはほとんどない、スメタナのオペラ『売られた花嫁』。で、どんなオペラ?と、ずっと気になっていたのだけれど、とうとう聴いた!何でも、30年ぶりの新録音だとか... えっ?!そんなにも?と、なるのだけれど、チェコ語のオペラのマニアックさ... その壁は、思いの外、厚かったか... しかし、とうとう乗り越えられたその壁。新録音への期待は高まる!
ということで、チェコを代表するマエストロのひとり、イエジ・ビエロフラーヴェクと、彼が率いるBBC交響楽団の演奏で、生粋のチェコの歌手たちが歌い上げる、チェコ・オペラの名作、スメタナのオペラ『売られた花嫁』(harmonia mundi/HMC 902119)を聴く。

マニアックなオペラが続いていると書いたけれど、それ以上に続いているのが、ピリオド・アプローチの演奏。ここ一ヶ月くらい、レーガーのヴァイオリン協奏曲を除いて、ピリオドばかり... もちろん、好きだなのだから、何の問題もないわけだけれど、やっぱり、こうも続くと、多少、ピリオド疲れ?そこに、『売られた花嫁』の、あの有名な序曲!西部劇でも始まりそうな、元気いっぱいの始まり!そして、モダン・オーケストラの鳴りの良さに、思わず感激してしまう!いや、演奏がいい!今年、BBC響の首席指揮者のポストからの離任が決まっているビエロフラーヴェクだけれど、BBC響との7シーズンが、充実したものだったことを物語る、洗練されつつ自信に満ちたサウンド!のっけから、十分過ぎるほどに魅了されてしまう。そうして、未体験ゾーンへ!
とうとう聴くに至った『売られた花嫁』の本編... 幕開けのコーラス(disc.1, track.2)から、期待を裏切らない、国民楽派ならではのフォークロワなテイストの炸裂!そのキャッチーなメロディに、早速にして、ワクワクしてしまう。のだが、一方で、『売られた花嫁』というタイトルが、何とも物騒である。21世紀も問題に上がる、売買される花嫁?なんてことが過るのだけれど... 恋人、マジェンカを売るそぶりを見せて、きちんと自分のところにこそ嫁がせようと、巧妙に仕掛けを作るイェニークの曲者っぷりと、そうとは知らないマジェンカのかわいい自棄っぷりに、そのマジェンカに振り回されるおとぼけキャラ、ヴァシェクの、どもりっぷりがラヴリーで、彼のおっちょこちょいぶりが、ドラマに色を添えて、最後は納まるべきところに納まるハッピー・エンド。そのストーリーは、いつかどこかで見たオペラ・ブッファのようで、目新しさこそ無いけれど、チェコの牧歌的な風景に包まれれば、砕けた気分で充たされ。また、チェコのフォークロワを巧みに取り込んだキャッチーなメロディが、ドラマを小気味よく展開させていて。さらには、要所要所で繰り広げられるダンス・シーン(序曲とセットで取り上げられること、多々あり... の、舞曲、3曲... )の、聴き知ったメロディがさっくりと入って来るあたりが、心地良く。1幕の幕切れのポルカ(disc.1, track.12)では、コーラスが加わって、豪勢!で、ちょっと驚く... コンサートで聴くのとは、やっぱり違う。そんな数々の聴かせどころに彩られて、飽きさせない『売られた花嫁』。期待以上の聴き応えに、魅了されるばかり。
そんな、楽しいオペラを体験させてくれたビエロフラーヴェク。チェコを代表するマエストロのひとりなればこその、チェコ・オペラの名作を、世界中に届けようという意気込みを強く感じる演奏。とはいえ、下手に熱っぽくオーケストラを鳴らすなんてことは一切しない... フォークロワなテイストが田舎臭くならないよう、ところどころ散りばめられたユーモラスなエピソードがドタバタになり下がらないよう、細心の注意を払って、「楽しさ」に洒落た雰囲気を常に漂わせ、スメタナの音楽を最上の形で響かせる。フォークロワなテイストと、そこから生まれるキャッチーさとで、絶妙に砕けつつも、しっかりとした音楽を紡ぎ出すバランス感覚は、見事。そんなマエストロに応えるBBC響も、また見事で... イギリスのオーケストラならではの少しドライな高機能性が、いい具合にチェコと距離を取り、フォークロワなトーンに惑わされず、スメタナの素の音符と向き合おうという姿勢が、よりスメタナの音楽の魅力を掬い上げる。その一方で、すばらしい描写力も見せ... 3幕、サーカスのシーンでの道化師の踊り(disc.2, track.9)の、まさにサーカスが繰り広げられる情景の鮮やかさには驚かされた(これが「サーカス」であったとは、これまで気付かなかった... )。で、忘れてならないのが粒揃いの歌手たち!オーケストラとは違い、チェコ出身なればこそのこなれた感覚が、『売られた花嫁』のドラマを活き活きと展開させて。さらには、チェコ出身の歌手たちによる... というこだわりが、普段のオペラハウスの国際色豊かなキャスティングとは一線を画して、密度の濃いアンサンブルを実現。それは、グローバル極まる21世紀にして、実に贅沢なことなのかもしれない。
しかし、何て素敵なオペラなのだろう。チェコ・オペラはマニアック、スメタナといえば『我が祖国』ではあるけれど、こんなにも素敵なオペラが、序曲だけ有名... というのは、残念でならない。が、こういうオペラが、まだいろいろあるのだろう... 序曲すら知られていないものも...

SMETANA THE BARTERED BRIDE BBC SYMPHONY ORCHESTRA . BĚLOHLÁVEK

スメタナ : オペラ 『売られた花嫁』

マジェンカ : ダナ・ブレショヴァー(ソプラノ)
イェニーク : トマーシュ・ユハース(テノール)
ケツァル : ヨゼフ・ベンツィ(バス)
ヴァシェク : アレシュ・ヴォラーチェク(テノール)
ミーハ : グスターヴ・ベラーチェク(バス)
ハータ : ルチエ・ヒルシェコヴァー(メッゾ・ソプラノ)
クルシナ : スヴォタプルク・セム(バリトン)
ルドミラ : スタニスラヴァ・イルク(ソプラノ)
サーカス団長 : ヤロスラフ・ブジェジナ(テノール)
エスメラルダ : カテリーナ・クネージコヴァー(ソプラノ)
インディアン役のサーカス団員 : オンドレイ・ムラーズ(バス)
こども1 : マキシム・ドゥセク(ボーイ・ソプラノ)
こども2 : バベッテ・ルスト(ソプラノ)
BBCシンガーズ

イエジ・ビエロフラーヴェク/BBC交響楽団

harmonia mundi/HMU 807553




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