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秋に聴くフォーレ、2つのピアノ四重奏曲... [2012]

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ふと、広場の木々を見上げると、ぼんやりと色付いていて...
普段、あまりに何気なく過ごしてしまっているのか、季節なんてどこかに吹っ飛んでしまっている。けど、それもまた季節なのか?振り返れば、あの酷い暑さが随分と遠くに感じられ、季節を意識せずに、日々、穏やかに過ごしていられることこそ「秋」なのかもしれない。そうして、はっと気が付く瞬間が来る。木々が色付き始めて、何となく肌寒さを感じて、毛布を引っ張り出して来て、いつの間にか秋が深まっていることに。
そんな深まる秋に聴く音楽、久々にしっとりと室内楽を、少しセンチメンタルにフォーレなど... 見出した秋に、より浸るために... シューマンのピアノを含む室内楽作品の全てを網羅した壮大なるシリーズを完成させたエリック・ル・サージュが次に挑む、フォーレのピアノを含む室内楽作品のシリーズから、フォーレの2つのピアノ四重奏曲を取り上げるvol.2(Alpha/Alpha 601)を聴く。

雰囲気たっぷりに始まるフォーレの1番のピアノ四重奏曲、1楽章... まるでクラシックが滴るようなメロディに導かれて始まる19世紀ならではの豊潤な音楽世界... 久々に聴くと、少々、眩暈を覚えてしまう。それにしても、19世紀の音楽というのは、どうしてこんなにも濃いのだろう?より情緒的というか、時に情動的というのか、改めて見つめると、何だかとても興味深い。一方で、フォーレの音楽は、ロマン主義にカテゴライズされるのだろうけれど、フランスならではの色彩感、印象主義とも近い間柄だっただけに、アカデミックなクラシックのイメージからは少し逸れるのか。絶妙にライトな感覚があって、また現代的なキャッチーさもあるように感じる。そうした感覚は、2つのピアノ四重奏曲にももちろんあるのだけれど、この2作品に久々に触れてみると、まるでドイツ音楽を聴くような手応えがあって、少し、驚かされる。それは、シューマンと徹底的に向き合って来たル・サージュの成果だろうか?フランス音楽にして、フォーレにして、何か一味違う雰囲気が漂う。
シューマンでも共演した、気心の知れた面々となるのか... ベルリン・フィルのコンサート・マスターとして、新たなステージへと移った樫本大進のヴァイオリンに、リズ・ベルトーのヴィオラ、フランソワ・サルクのチェロと、フランスの気鋭の演奏家たちがル・サージュのピアノを囲む。そして、ル・サージュのピアノは、どこか控え目に若い演奏者たちに寄り添うようなタッチを見せ、一方、若い奏者たちもどこか控え目で、派手に立ち回るようなことはけしてしない。実に興味深いソリストたちが並びながらも、どこか奥ゆかしいアンサンブルを紡ぎ出す。が、この奥ゆかしさが、いい具合に作品に落ち着きを持たせ、よりひとつひとつの音がしっかりとしたものに響き、フォーレの音楽の構造を浮かび上がらせるようで。そうして生まれる構築感が、フォーレにしてブラームスを思わせる深みと聴き応えもたらしてしまう?そもそも、1番、1楽章の冒頭からして、ブラームスを思わせるメロディだったりするのだけれど... 19世紀後半の作曲家の宿命か、ワーグナーの影響も受けているフォーレであって、ロマン主義という自体が、すでにドイツ的と言えるのかもしれない。けれど、ドイツ的なフォーレはかなり新鮮。
そもそも、これまで、フォーレの音楽を軽く捉えていたのかもしれない。そして、この2つのピアノ四重奏曲も、ドラマティックでスタイリッシュ... そんなイメージを持っていたのか、改めて聴いてみて、音楽としてより魅力的なものを感じ、聴き入ってしまう。特に、2番(track.5-8)の、近代を予兆するような、スリリングな展開... こういう音楽を書いていたのかと、目を見張る。美しくも、うねるように音楽を推進させるパワフルさ。1楽章(track.5)の冒頭など、こんなにもインパクトがあったかと、今さらながらに惹き込まれる。そうした作品に刺激されてか、1番よりも、よりアグレッシヴな演奏を繰り広げる弦楽器の3人。それがまた、作品のおもしろさを引き立て、1番とのコントラストをさり気なく描き出し、フォーレの音楽の独自性の熟成を響かせる。
しかし、絶妙なテイスト... ル・サージュをはじめ4人の抑えたアンサンブルが、いい具合に枯れたトーンを生み出すも、単に枯れるのではなく、紅葉同様、鮮やかに発色しながら枯れてみせて、ヴィヴィットさとビターさを共存させるおもしろさ。そこから響くフォーレの音楽のドイツ音楽に負けない充実感と、フランス音楽なればこそのエスプリが放つ得も言えぬ薫り... 安易なイメージに納めない、より豊かなフォーレの可能性を探りながら、しっとりとした音楽を味あわせてくれる。

GABRIEL FAURÉ QUATUORS AVEC PIANO OP.15 & 45
LE SAGE | BERTHAUD | SALQUE | KASHIMOTO


フォーレ : ピアノ四重奏曲 第1番 ハ短調 Op.15
フォーレ : ピアノ四重奏曲 第2番 ト短調 Op.45

エリック・ル・サージュ(ピアノ)
樫本 大進(ヴァイオリン)
リズ・ベルトー(ヴィオラ)
フランソワ・サルク(チェロ)

Alpha/Alpha 601




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