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ボリビアにて、バロックの素朴... [2006]

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音楽は国境を越える!
一方で、台湾のオーケストラの中国公演で、日本人メンバーのビザが下りなかったというニュースを耳にしたりする。で、虚しくなる。音楽は国境越える... なんてことを発言するのは、今や無邪気過ぎるのかもしれない。何だかわけもわからず、次から次へと押し寄せていたK-POPも、今となっては手のひらを返したような印象すらある。音楽は国境を越える、と思いたい。が、一方で、音楽を創り出す"人間"というのは、つくづく愚かなのだなと感じる21世紀。そして、やたら愚かさばかりが目につく今日この頃でもあって。ひとつ気分を変えるために、バロック期、国境どころか海すら渡った音楽を聴いてみようかなと... それは、ヨーロッパからボリビアへの旅...
思い掛けなくたくさんのバロック期の楽譜が発見された、ボリビアのコンセプシオン伝道所。南米の奥深く、タイムカプセルの役割を担った教会で、かつての音楽を蘇らせようというプロジェクト、オランダのピリオド・アンサンブル、フロリレジウムによる、"Bolivian Baroque"のシリーズから、2006年にリリースされたvol.2(Channel Classics/CCS SA 24806)を聴き直す。

ボリビア風バロックではなく、ボリビアに持ち込まれたヨーロッパのバロック。ということで、エキゾティックなサウンドを期待していると、肩透かしを喰らう。で、少しガッカリしたことを覚えているのだけれど... 改めて聴いてみると、どういった作品がボリビアへと伝わっていたのか、とても興味深く。ポスト・バロックの時代を生きたイタリアの作曲家、バルビ(1720-75)。ペルーのリマの大聖堂の楽長を務めたスペイン出身の作曲家、デ・アラウホ(1646-1712)。チェコでローカルに活躍したブレントナー(1689-1742)。北イタリアで活躍したバッサーニ(1657-1716)。そして、バロック期のヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ、ロカテッリ(1695-1764)と、多彩というか、何と言うか、普段の「バロック」では、なかなか聴けないような作曲家たちを含み、どうも掴みどころのない組合せ... なのだけれど、これらが間違いなくボリビアに伝わり、かつてコンセプシオン伝道所に集ったボリビアの人々が奏で、歌った作品であって。当時のヨーロッパを賑わせた華やかなバロックとは一味違う、どこか楚々として、素朴な温かみを感じる作品ばかり。気を衒うことのない、素直な魅力に溢れた作品の数々に、コンセプシオン伝道所の実直な様子を窺い知るよう。権力の渦巻く宮廷でも、流行に左右される音楽都市でも、権威主義的な大聖堂でもない、日々のシンプルな生活に寄り添うバロックの音楽の新鮮さ!「バロック」に新たな視点をもたらしてくれる。
そうした作品を、丁寧に、また素朴な味わいを大切に歌い綴るのが、ボリビアの歌手たち... やっぱり、彼らの存在があってこその"Bolivian Baroque"であって... フロリレジウムのしっかりとした演奏に支えられ、そこはかとなしにボリビアのトーンというものを響かせ、印象的。クラシックというフォーマットから逸脱することのない、きちっとした歌でありながらも、どこかで大地に根差したオーガニックさのようなものがフワっと匂い立つ瞬間がある。特に、メッゾ・ソプラノを歌うモンヘの、深くも独特なヴィヴィットさを放つ歌声には、クラシックという枠組みを越えた魅力を感じ、つい聴き入ってしまう。そうした歌声に、コンセプシオン伝道所の、何とも人懐っこい鐘の音(track.8)などが色を添え、遠いボリビアの風景を喚起させる。そこに、強烈な一撃が加わる。
ヨーロッパの音楽の後で、最後に1曲、ボリビアの民謡(track.20)が取り上げられるのだけれど... これがまた、地元のおじさんの歌とヴァイオリンによる、クウォリティを度外視したあまりに大胆なもので... ヴァイオリンはギコギコ、歌はフラフラ... しかし!その力強さは、それまでの音楽を凌駕しかねないほどの存在感を見せてしまうから驚かされる。いや、音楽の凄さというものをまざまざと見せつけられる思い。音楽は国境どころか、海すら越えてやって来たボリビアだが、その地に深く根差した音楽というのは、またとんでもいない距離と、文化の壁を越えて、現代社会を生きる者の心にドンと突き刺さる。そのメロディをフロリレジウムが引き継いで、どこか切なげで力強い音楽を繰り広げれば、もうひとつ感動がこみ上げる。

Florilegium & Arakaendar Bolivia Choir Bolivian Baroque Vol.2

イグナシオ・バルビ : ソナタ 第9番
フアン・デ・アラウホ : Cayósole al Alba
ヨーハン・ヨーゼフ・イニャツ・ブレントナー : Glória et honóre
作曲者不詳 : Stella coeli extirpávit
作曲者不詳 : Quis me a te sponse separábit
ジョヴァンニ・バティスタ・バッサーニ : ミサ・エンカルナシオン
ピエトロ・ロカテッリ : ソナタ 第10番
ファン・デ・アラウホ : Si el Amor se quedare dormido
作曲者不詳 : Tota salútis
作曲者不詳 : サルヴェ・レジーナ
作曲者不詳 : Tota pulchra es María
ドン・ヤヌアリオ : ボリビアの民謡によるメロディ 〔アレンジ : フロリレジウム〕

アレハンドラ・ウェイアー(ソプラノ)
カティア・エスカレーラ(ソプラノ)
アンジェリカ・モンヘ(メッゾ・ソプラノ)
ヘンリー・ヴィルカ(テノール)
アラカエンダル・ボリビア合唱団
フロリレジウム

Channel Classics/CCS SA 24806

10月、音楽で旅をする...
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