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"ラテン"の迷宮、迷子の鳥たち... 迷子になってこその魅力... [2012]

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さて、秋は旅行シーズン!ということで、大胆に海を渡ってみる?
ルネサンスからバロックへとうつろう頃、イギリスからアラビアまでを旅したテシエに続いての旅する音楽は、大西洋を渡り南米へ... それでいて、渡るのは海ばかりでなく、ジャンルまでも?古楽から派手にラテン・ミュージックの世界へと飛び込んでしまうアルバム。いや、古楽がフォークロワな性質を持ち、ワールド・ミュージックとただならず近しい関係にあることは言うまでもないのだけれど、ここまでガッツリとラテン・ミュージックをやり切ってしまうとは... 呆気に取られつつも、やっぱり魅了されてしまうのはラテン・ミュージックが持つ魔法?
という、鬼才、クリスティーナ・プルハル率いる、古楽アンサンブル、ラルペッジャータによる"Los Pajaros Perdidos"(Virgin CLASSICS/0709502)。南米各地のフォルクローレから、ピアソラに、サンバ!最後はベサメ・ムーチョと、古楽も、クラシックも忘れて、楽しむ!

とにかく、"ラテン"を楽しむ!その一言に尽きる1枚、"Los Pajaros Perdidos"。で、いいのか?とも思うのだけれど、普段、あまりに四角四面なクラシックならば、これくらいのブレイクが時折あってこそバランスが取れるのでは?なんて言い訳しつつ取り上げてしまうのだけれど... それにしても、プルハル+ラルペッジャータの思い切りのいいこと!躊躇することなくカラフルなラテン・カラーを炸裂させて、ラテン・ミュージックと言っても一筋縄ではいかない多様な世界を、フォルクローレからポピュラー・ミュージックまで、捉われることなく、趣くままに1枚のディスクに収めてしまった大胆さも凄いのかもしれない("ラテン"とは、そういうもの?)。
カウンターテナーのスター、ジャルスキーの歌う「おやすみネグリート」で始まる"Los Pajaros Perdidos"。ジャルスキーがラテン?とも思ったのだけれど... 嗚呼、この色彩感、ラテン!というカラフルさと、キャッチーなメロディを、ジャルスキーならではのクリーミーな歌声でなぞれば、ドリーミン!1曲目から夢の世界へ連れ去られてしまう。一転、イタリアのフォークロワのマエストラ、ガレアッツィの渋い声で歌われるフォルクローレの名曲、ラミレスの「アルフォンシーナと海」の哀愁が溢れ出すトーンにグっときて、これもまたラテン... そして、普段はオペラハウスで歌うチリのメッゾ、マンチーナが、荒ぶりながら歌うベネズエラのフォルクローレ「モンティーヤ」(track.3)のチリ・ソース(?)を効かせた熱さは、これぞラテン!そして、パラグアイ伝統のハープ、アルバが掻き鳴らされる「鐘つき鳥」(track.4)の超絶技巧と鮮やかさは、息を呑み... 続く、ジャルスキーの歌うアルバムのタイトルにもなっているピアソラの「迷子の鳥たち」のしっとりとした佇まいは、まさにピアソラで...
陽気で、とにかく情熱的、かと思えばムーディーで、夢見がちで、それでいてグっと切なくもなり。"ラテン"というと、強烈なイメージがあるのだけれど、そのイメージの幅は実はかなり広い。そもそもラテン・アメリカと呼ばれる地域がデカい。そして、この地域の抱える悲喜交々の歴史と、その歴史の過程で世界中から持ち込まれた様々な文化と、古来からの文化がひとつに編まれ、まるで迷宮のように広がってもいて... "Los Pajaros Perdidos"、迷子の鳥たちというタイトルがある意味、象徴的に感じる。鳥ばかりでなく、音楽そのものがあっちへこっちへと飛び回るような感覚がある"Los Pajaros Perdidos"。収められた1曲1曲を追っていると、聴いている者も何だか迷子になりそうだ。が、迷子になってこそ魅惑的な"Los Pajaros Perdidos"でもあって... 多様なる"ラテン"を、何気なく、さらりとまとめてしまうプルハル。古楽というフィールドから"ラテン"を見つめることで、"ラテン"の迷宮を俯瞰できてしまうのか?古楽を生真面目に取り組みたがらないようなところもあるプルハル+ラルペッジャータではあるが、そしてその傾向が最もよく出てしまった"Los Pajaros Perdidos"ではあるが、このアルバムをじっくりと味わえば、古楽からラテン・ミュージックへと挑んだ必然が浮かび上がるよう。それでいて、古楽をベースにしているというあたりが、"ラテン"に対してスパイスに成り得るおもしろさ!
濃いラテン・ミュージックの端々からこぼれ落ちる、テオルボや、コルネットの音色... 古楽器ならではのアルカイックで、"ラテン"の鮮やかさとはまた一味違う鮮やかさを持つサウンドが、このアルバムに独特の余韻をもたらす。フル・スロットルで"ラテン"に取り組みながらも、ベースにあるものは古楽。そして、古楽アンサンブルとしての並々ならぬ力量があってこそ、ガッツリとラテン・ミュージックをやり切ることができるのだなと。古楽本来のレパートリーからは恐ろしく遠くにあっても、だからこそ古楽アンサンブルとしてのラルペッジャータを再確認してみたり。そして、古楽アンサンブルとして、彼らはやっぱり凄いなとつくづく思う。だからこそ、たまには本格的な古楽のレパートリーで、じっくり聴いてみたくなる。

LOS PAJAROS PERDIDOS L'ARPEGGIATA-CHRISTINA PLUHAR

アルゼンチン民謡 "Duerme Negrito"
ラミレス : サンバ "Alfonsina y el Mar"
ベネズエラ民謡 ゴルペ "Montilla"
パラグアイ民謡 ポルカ "Parajo Campana"
ピアソラ : Los Pájaros perdidos
ベネズエラ民謡 パハリージョ "Pajarillo Verdi"
パラグアイ民謡 ポルカ "Isla Sacá"
ラモネス : ガイタ・マルガリテーニャ "Le embarazada de viento"
アンブロス & ロザレス : サンバ "Zamba para no morir"
カブラル : ¡Ay! este azul"
プラーサ : ホローポ "El Curruchá"
ディアス : パサヘ "Caballo Viejo"/ベネズエラ民謡 ホローポ "Alma Llanera"
リベラ : ホローポ・オリエンタル "La Cocoroba"
エレーラ : サンバ "Zamba del Chaguanco"
グレイヘル : Como un pájaro libre
ウォルシュ : Como la Cigarra
オタロラ : Ojito de Agua
ベネズエラ民謡 ポロ "Polo margariteño"
ソレール : Fandango
ベラスケス : ボレロ "Besame mucho"

フィリップ・ジャルスキー(カウンターテナー)
ルチッラ・ガレアッツィ(ヴォーカル)
ルチアーナ・マンチーニ(ヴォーカル)
ヴィンチェンツォ・カペツート(ヴォーカル)
ラケル・アンデゥエザ(ソプラノ)
クリスティーナ・プルハル/ラルペッジャータ

Virgin CLASSICS/0709502

10月、音楽で旅をする...
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