SSブログ

百年目のケージ、 [2012]

AECD1227.jpg12cm.gif
さて、2012年、忘れてならないのが、ジョン・ケージの生誕100年のメモリアル。
プリペアド・ピアノの発明、易の音楽や、4分33秒など、奇想天外な作品で、20世紀後半の音楽に大きなインパクトを与えた伝説... 一方で、どうしても、その"奇想天外"ばかりに目が行ってしまう。何でもありな21世紀からすると、ギャグかよっ?!みたいな印象を受けてしまうのだけれど、今、改めてそうした作品を振り返れば、けして「何でもあり」ではなかった中でのケージのラディカルな姿勢、「前衛」の時代の反芸術のパワフルさに、感服せずにはいられない。今、これほどに奇想天外なことができる作曲家がいるだろうか?時代に挑戦できる芸術家がいるだろうか?そもそも、我々の時代が、挑戦できるほどの実態があるのだろうか?ふと、そんなことも思うわけで、ケージはもちろん、ケージを生み、伝説にし得た時代もまた、凄かったのかもしれない... なんて、振り返る。
ということで、夏は現代音楽。もはや、季語だろうか?ヨーロッパの「前衛」の時代を聴いての、アメリカの「前衛」の時代... スイスのピアニスト、セドリック・ペシャによるプリペアド・ピアノで、ケージの代表作のひとつ、ソナタとインターリュード(æon/AECD 1227)を聴く。

ピアノの蓋を開け、ピアノ線にボルトを挿し込むなんて、普通じゃ考えられない。何たってピアノは、クラシックというジャンルにおいて、あまりにシンボリック。だからこそ、ケージは、ねじ込んだのか?まさに反芸術、ピアノへの凌辱とも言えるその行為は、未だにショッキングに感じるのだけれど。そうして変身したピアノ、ボルトやら消しゴムやらでプリペアされたピアノ、プリペアド・ピアノの、摩訶不思議なサウンドは、まったく新しいイマジネーションをピアノから放つ。打鍵によって音を生み出すピアノも、ある意味、打楽器なのかもしれない... そんなことを思わせる、プリペアド・ピアノの打楽器のようなサウンド。そもそも、パーカッション・アンサンブルの替わりとして発明(1940)されたプリペアド・ピアノ。ひとつの楽器とは思えない多彩なサウンドは、個性的なパーカッション・アンサンブルのようでもある。そんなプリペアド・ピアノの代表作、ソナタとインターリュード。
ピアノのイメージからは想像も付かない、ガムランのような音楽... そのエスニックなサウンドは、現代音楽にして、また一味違う聴き易さもあって、何気に人気作だったり。タイトルこそ、アカデミックで硬いイメージはあるものの、飄々として、ユーモラス。戦後間もない頃(1946-48)の作曲であり、今や、現代音楽の古典ではあるけれど、ジャンルを越境するようなそのセンスは、なかなか魅惑的であり、古さを感じさせない。何より、リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)が『最後の4つの歌』(1948)を作曲し、シェーンベルク(1874-1951)はカリフォルニアで教育に力を入れ健在だった頃である。そんな19世紀の残像がまだ残る中で、プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュードというのは、恐ろしく革新的であったのだろうなと振り返る。いや、そうした中で、クラシックなんていう狭い枠組みをあっさり超越し得たケージのブっ飛んだ音楽性に驚かされる。
そして、ペシャによる演奏に驚かされる... 様々な演奏で聴いて来た、現代音楽にしてはお馴染みのソナタとインターリュード。のはずが、こんなにも新鮮に向き合えるとは!clavesで、手堅くシューマンなどを聴かせてくれたわけだが、プリペアド・ピアノもお手の物。それでいて、これまでのプリペアド・ピアノでは味わえなかったようなタッチを見せるペシャ... 16のソナタと、4つのインターリュードを繊細に捉えて、プリペアド・ピアノに、ピアノとしての記憶を蘇らせるような感覚を見せるのか?一音一音に深みがあり、擬似ガムランとしての奇想天外なおもしろさを越えた、より詩的で、場合によってはロマン主義すら滲んでしまう瞬間があり、ゾクっとさせられる。ケージの反芸術を、西洋的にソフィストケイトしてしまうペシャの現代っ子感覚!ソナタとインターリュードが、完全に古典となったのだなと、感慨。そうしたあたりに、ジョン・ケージ、生誕100年という年月の重みを感じ。いや、その実にノーブルな仕上がりが、不思議で... こうなり得るのかと、ペシャの「前衛」に対するニュートラルなヴィジョンに、感心。それは、ヨーロッパから見つめるアメリカの「前衛」なのだろうか?シェーンベルクに学び、サティにインスパイアされていたケージの中の、ヨーロッパが浮かび上がるようで、興味深い。

John Cage Sonatas & Interludes Cédric Pescia

ケージ : ソナタ と インターリュード

セドリック・ペシャ(プリペアド・ピアノ)

æon/AECD 1227




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。