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バロック、ヴェネツィアで、ヴァカンス。 [2006]

8月になりました。いや、暑い... 暑過ぎます!どうにかしてください!
と言ったところで、どーにもならないのだけれど、つくづく参ってしまう今日この頃。体調を崩さないように気を付けないと... なんて、湿気ったことばかりも言ってられないので、こういう時はヴァカンス!もちろん、当blogでのヴァカンスは、音楽でのヴァンカンス。そして、ヴァカンスといえば南下!連日、ロンドンが熱いのを振りほどいて、イタリアへ!夏を思わせる晴れやかさと、テンションと、南が持つ魅力に酔い痴れたい... ということで、イタリアにインスパイアされたシューベルトを聴いた前回に続いての、バロック期のヴェネツィアへ。
2006年にリリースされた、ジャン・クリストフ・スピノジ率いる、アンサンブル・マテウスと、ピリオドで活躍する豪華歌手陣による、naïveの"VIVALDI EDITION"からの、ヴィヴァルディのオペラ『グリゼルダ』(naïve/OP 30419)と、マティアス・ユング率いる、バツドルファー・ホフカペレと、ザクセン・ヴォーカルアンサンブルによる、ロッティの晩祷のための詩篇集(cpo/777 180-2)を聴き直す。


ヴェネツィアのオペラ王、ヴィヴァルディ、充実の『グリゼルダ』。

OP30419.jpg06op.gif
バロック・ロック路線にあって、さらにヤリ過ぎなくらいの激烈な演奏(バロック・パンク・ロック?)を繰り広げるスピノジ+アンサンブル・マテウス。が、そればかりではない?という、厚みのある演奏を聴かせてくれたのが、この『グリゼルダ』。"VIVALDI EDITION"に衝撃をもたらした、『試練の中の真実』(OPUS111/OP 30365)の強烈なインパクトを思い返せば、彼らも丸くなってしまったかと、少しガッカリもしたのだけれど... いや、それ以上に、響きに余裕を以って生み出されるスケールの大きな演奏に魅了され、その存在を見直すことに... そして、今、改めて、その『グリゼルダ』を聴き直すのだけれど...
ヴィヴァルディがキャリアの絶頂にあった頃の『グリゼルダ』の、その充実感!まず、その聴き応えに圧倒される。アンサンブル・マテウスが派手に立ち回る必要も無く、音楽そのものが雄弁で。驚くべき超絶技巧から、じっくりと歌い上げるものまで、多彩なアリアの数々は飽きさせることなく、どのナンバーも魅了されずにいられない。そして、そのキャストの豪華さに、改めて驚いてみたり... タイトルロールを歌うルミュー(コントラルト)に始まって、カンヘミ(ソプラノ)、ケルメス(ソプラノ)、ジャルスキー(カウンターテナー)。ヴィヴァルディの難しさを諸共しない確かなテクニックと、何よりそれぞれに個性的な歌声。ルミューの深さ、ケルメスの押しの強さ、ジャルスキーの軽やかさ... キャラクター性が活かされて描かれるドラマの大きなうねりというのは、バロック・オペラを凌駕する聴き応えをもたらすようでもある。もちろん、超絶技巧も!圧巻なのが、カンヘミが歌う"Agitate da due venti"(disc.2, track.4)。これぞバロック!という最高難度に、後半では装飾音まで付けて、鮮やかに決めてくる。そんな歌声を聴いていると、何だかテンションが上がってしまう!いや、これこそがヴィヴァルディ・オペラの醍醐味。
そして、スピノジ+アンサンブル・マテウス。彼らならではのケレン... そのボリュームを絞って聴こえてくる、バロック・パンク・ロックをやり切れるだけの確かな器量。ヴィヴァルディの音楽人生の最も好調だった頃の充実ぶりを、そのまま音とする、地に足の着いた演奏が、好印象。そうして生まれる、表情豊かなワン・シーン、ワン・シーン... 歌手たちの熱演をきっちりとサポートしつつも、ところどころアンサンブル・マテウス流のスパイスも効かせて、鋭く切り込むところは、鋭利に攻めて。そんなメリハリのある演奏が、ヴィヴァルディにより大きなスケール感を生み出すのか。3枚組、久々に聴き通して、圧倒される。

Vivaldi Griselda

ヴィヴァルディ : オペラ 『グリゼルダ』 RV 718

グリゼルダ : マリ・ニコル・ルミュー(メッゾ・ソプラノ)
コスタンツァ : ベロニカ・カンヘミ(ソプラノ)
オットーネ : シモーネ・ケルメス(ソプラノ)
ロベルト : フィリップ・ジャルスキー(カウンターテナー)
グアルティエーロ : ステファノ・フェッラーリ(テノール)
コッラード : イェスティン・デイヴィス(カウンターテナー)

ジャン・クリストフ・スピノジ/アンサンブル・マテウス

naïve/OP 30419




ヴェネツィアの巨匠、ロッティの、ポップでやわらかな晩祷のための詩篇集...

7771802
アントニオ・ロッティ(1667-1740)。
ヴィヴァルディ(1678-1741)の11歳年上、バッハ(1685-1750)、ヘンデル(1685-1759)の18歳年上... ヴェネツィアで活躍し、サン・マルコ大聖堂の音楽監督も務めた作曲家。ヴィヴァルディのコントラストのきつい音楽とはまた一味違い、どことなしにポップで、よりやわらかな感覚が、ロココの時代の先駆け、古典派の予兆としても聴こえる、かなり興味深い存在。バロックという型枠の中から、遠くにモーツァルトすら見えそうなその音楽は、もっとクローズアップされてもいいように思うのだけれど... という21世紀の現状はさて置き、ロッティが活躍した当時、ゼレンカ(1679-1745)らがその下で学び、その名声はヴェネツィアのみならず国際的にも知れ渡り、かの大バッハも影響を受けたと伝えられるわけだが... そんなロッティの、晩祷のための詩篇集...
得も言えず快活で、楽しげに始まるディキシット・ドミヌス(track.1-12)!「晩祷のための詩篇... 」なんてあると、重々しい音楽を想像させるのだが、そうはならないのはヴェネツィア流か。ヴィヴァルディとも一味違う、ふんわりとした雰囲気、色鮮やかなサウンドが、良くも悪くもあるバロックの硬さ、勿体ぶった感じを脱していて、ナチュラルな音楽が流れ出す。もちろん、バロックには違いないし、それどころか、時代を遡って、やはりサン・マルコ大聖堂の楽長を務めたモンテヴェルディを思わせる、初期バロックの牧歌的な面の朗らかさを感じるところもあるのだけれど、そうした古さも、さらりと明るくポップに響かせて、ロッティならではの魅力を振りまいてしまう。
そんなロッティの音楽を、活き活きと、それでいて何とも言えない微笑ましさで包む、ユング+バツドルファー・ホフカペレの演奏。サグセン・ヴォーカルアンサンブルのコーラス。いい具合に古色蒼然としたトーンで、どことなしにルネサンスの頃を思い出させるやわらかさが、何とも言えず耳に心地良く。そこに、4人のソリストたちの瑞々しい歌声が加わり、ぱっと花やぐ。この絶妙なアンサンブルが、ロッティの音楽のやさしい響きを際立たせていて、聴き入ってしまう。さて、おもしろいのが、ディキシット・ドミヌスの最後(track.12)。ヘンデルのディキシット・ドミヌスの最後に似ている?いや、『メサイア』の最後、アーメン・コーラスも聴こえる?ヘンデルも影響を受けていたのだなと、ロッティの存在の大きさに、改めて感じ入る。

Antonio Lotti ・ Vesper Psalms ・ Matthias Jung

ロッティ : ディキシット・ドミヌス 〔詩篇 第109番〕
ロッティ : ラウダーテ・プエリ 〔詩篇 第112番〕
ロッティ : クレディディ 〔詩篇 第115番〕
ロッティ : ラウタダーテ・ドミヌム 〔詩篇 第116番〕

バルバラ・クリスティーナ・シュトイデ(ソプラノ)
アネカトリン・ラーブス(ソプラノ)
ダフィート・エルラー(アルト)
トビアス・ベルント(バス)
サグセン・ヴォーカルアンサンブル
マティアス・ユング/バツドルファー・ホフカペレ

cpo/777 180-2




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