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君よ知るやイタリアへのシューベルトの憧れ... [2012]

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いや、オリンピックが始まりました!
で、早速の熱戦... にわかにヒートアップせずにはいられない状態に、妙な感じはしているのだけれど、何かしら試合をやっていれば、ついテレビに吸い寄せられてしまって、これがオリンピックの魔法か?で、深夜、見入ってしまう重量挙げ。重量挙げ?なんて、自分でも驚くのだけれど、見入ってしまう... そして、選手たちの踏ん張り様に、リスペクトせずにいられない!で、三宅選手の銀!寝る予定が、変にテンション上がってしまって、眠れなくなる... けど、こういう感じも悪くない。世界のトップアスリートたちの4年間の集大成、勝っても負けても、何だか眩しいなと、つくづく思う。しかし、ラトルとMr.ビーンの衝撃(?)の共演から、3日しか経っていないというのに、あの開会式が、随分と前に感じられてしまうオリンピックの熱さ... やっぱり凄い...
ということで、その熱さ、ハイ・テンションのままに、音楽も聴いていこう!そんなアルバム、ミヒ・ガイグ率いる、ロルフェオ・バロックオーケスターによる、シューベルトのイタリア風序曲と5番の交響曲(deutsche harmonia mundi/88697911382)を聴く。

シューベルトは暗い... 漠然とそういうイメージがあるのだけれど、ガイグ+ロルフェオ・バロック管は、そうしたイメージを鮮やかに裏切ってくる。それは、とにかく明るいシューベルトを集めたアルバムで... ロッシーニの影響もある?2つのイタリア風序曲を軸に、普段、あまり聴くことの無い楽しげな序曲を並べて、その中で、朗らかな5番の交響曲を取り上げる。「君よ知るや南の国」というのか、アルプスの北で生まれた作曲家の南への渇望が、明るい音楽を生み出し、その明るさをさっくりとすくい上げるような1枚。「イタリア風」という言葉のイメージもあるかもしれないけれど、アルバム全体が、シューベルトにして、イタリア的に明るい?!
まず、始まりの変ロ長調の序曲のフレッシュさ!まだロマン主義には至らない、古典派のスタイルで書かれているその序曲は、ロッシーニ登場前夜の、オペラ・ブッファの序曲を思わせて、軽快で、モーツァルトのオペラが懐かしくなる楽しさ!続いて、5番の交響曲(track.2-5)が取り上げられるのだけれど、前の作品の楽しげな気分をそのままに、より浮き立たつような音楽を響かせるガイグ。この交響曲の牧歌的なあたりが、北から南を見つめる理想化されたイタリアの風景のようで、興味深く、新鮮。これまで、5番の交響曲に関しては、多少、退屈にも感じていたのだけれど、ガイグの新たな切り口で聴いてみると、俄然、魅力的に響くからおもしろい。続く、ニ長調の序曲(track.6)では、キャッチーなメロディが登場して、ロッシーニが席巻した頃を思い起こさせつつ、ベートーヴェンのような荘重さ、ドラマティックさもあって、イタリアとドイツのおもしろい折衷を響かせる。これが当時のウィーンの音楽シーンの、リアルな感覚でもあるのだろう... そうして、2つのイタリア風序曲が登場する。
まず、D.590(track.7)のイタリア風序曲。ベートーヴェンも頭を抱えたロッシーニ・ブームに対するパロディ的な意味合いもある作品とのこと。が、パロディというよりは見事にロッシーニのテイストをカヴァーしていて、ロッシーニ・クレッシェンドなんかもあったりで、器用にツボを押さえるシューベルト。またそうした姿が微笑ましくもあり、楽しませてくれる。続く、D.591(track.8)のイタリア風序曲では、ロッシーニを踏まえつつも、独自路線を切り拓きつつあって、その進化が興味深い。最後は、イタリアを乗り越えて、シューベルトそのものを聴かせてくれるホ短調の序曲(track.9)。短調ということで、グっとシューベルトらしくなって、ドラマティックで、何よりロマンティック。すると、次の時代となるヴェルディ風になるおもしろさ。イタリアという触媒から見つめる暗くないシューベルトには、イタリアへの憧れと、イタリア音楽への嫉妬が滲み、いつもとは一味違う姿を見出す。
しかし、ガイグ+ロルフェオ・バロック管の視点の鋭さに感心させられる。彼らならではのマニアックさが最良の形でシューベルトを捉えていて、なおかつ、古典派、ロッシーニ、ロマン主義と、時代の変遷... それも急速な変化も捉えて、ピリオド・オーケストラだからこその、時代の生々しい空気感も伝える。そして、思いの外、パワフルな演奏!シューベルトの暗いイメージなど吹き飛ばすようなテンションで以って、活き活きと鳴らしてくるロルフェオ・バロック管。スコアをきっちりと読み切り、クリアなサウンドを実現しつつ、もう一歩、踏み込んで、より魅力的な音楽を探って得られる確かな聴き応え... 必ずしも、シューベルトの人気作、代表作とは言えない序曲、交響曲を取り上げながらも、これだけ楽しめてしまうことに、脱帽。

SCHUBERT: Concert Overtures ・ Symphony No. 5
L'Orfeo Barockorchester ・ Gaigg


シューベルト : 序曲 変ロ長調 D.470
シューベルト : 交響曲 第5番 変ロ長調 D.485
シューベルト : 序曲 ニ長調 D.556
シューベルト : イタリア風序曲 ハ長調 D.591 Op.170
シューベルト : イタリア風序曲 ニ長調 D.590
シューベルト : 序曲 ホ短調 D.648

ミヒ・ガイグ/ロルフェオ・バロックオーケスター

deutsche harmonia mundi/88697911382




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