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古楽から新音楽。 [2006]

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古楽と、異なるジャンルのコラヴォレーション...
意外に多いように思う。というより、古楽自体が、ヨーロッパのトラッドと極めて近い存在であり、ワールド・ミュージックの範疇とも言えそう。クラシックにカテゴライズされながら、ただならずプリミティヴな古楽。また、そうした古楽に即興性は欠かせなく、ジャズなどと共鳴し得る感覚を持っているのか。何より、音楽がアカデミックに武装する以前である古楽の自由さは、より多様な音楽とつながる可能性を秘めているのかもしれない。
その可能性を見事にサウンドにしたアルバム... リュートの名手、ロルフ・リスレヴァンが、古楽界を彩る豪華なアーティストたちとともに、ルネサンスから初期バロックにかけてのレパートリーを、現代の感性で以って巧みに仕立て直し、古楽から新音楽を生み出した1枚、2006年にリリースされた"Nuove musiche"(ECM NEW SERIES/476 3049)を聴き直す。

ロナルディのリュートを聴いて、ふと思い付き、引っ張り出してきたアルバム、リスレヴァンの"Nuove musiche"、新音楽(そのタイトル、ルネサンスから初期バロックへの転換期、カッチーニが1601年に出版した『新音楽』を引用とのこと... )。リスレヴァンのリュート(あるいは、テオルボ... 時々、ギター... )を中心に、豪華過ぎるくらいに古楽のスペシャリストたちが結集しての、ECM的、ニューエイジな古楽... ルネサンスから初期バロックを彩ったリュートの名手たち、作曲家たち、カプスベルガー、ペッレグリーニ、ピッチニーニ、ナルバエス、フレスコバルディ、ジャノンチェッリ、マーガレット・ボード・リュート曲集からの作品を素材に、新しい音楽を紡ぎ出す1枚は、とにかく新鮮で、大きなインパクトを残してくれたのだけれど... 今、改めて聴き直してみれば、"Nuove musiche"、新音楽の魅力に、やっぱり魅了され、またはまりそう。
様々な撥弦楽器のめくるめくアルペッジォで始まり、やがてアリアンナ・サヴァールのやわらかな歌声がそこに乗り、古楽にして古楽を超越したサウンドが広がる。とにかく、のっけから惹き込まれてしまう。古楽器にして、この鮮やかさはいったい... そして、リスレヴァンが、古い音楽に魔法を掛け、ルネサンス、初期バロックの音楽から、驚くべき表情を生み出してしまう。スパニッシュなエスニックさだったり、ケルティックなトラッドの素朴さだったり、場合によってはブルースな仄暗さだったり... 素材を活かしつつも、「古楽」のイメージから大きく飛躍した音楽世界を展開するリスレヴァン。それは、古楽というベースから生み出されたフュージョンだろうか?ジャズとの、ワールド・ミュージックとのコラヴォレーションはあったけれど、"フュージョン"というのは、ありそうで無かったように思う。何より、このフュージョン的なセンスが、とにかくカッコいい!古楽が持つ可能性と、現代の感性とのフュージョン=融合から生まれるサウンドは、思い掛けなく様々なテイストを繰り出して飽きさせず、なおかつきっちりとひとつのトーンに貫かれ、圧巻!1枚のアルバムとして、見事な仕上がりを聴かせる。
そんな新音楽を実現させた、リスレヴァンをはじめとする、古楽のスペシャリストたちのパフォーマンスがすばらしい... まず、イェレミールのコラショーネ、ジョンセンのキタッラ・バテンテと、リュート属の楽器の瑞々しくヴィヴィットな響きが印象的で。そこに、リスレヴァンが、リュート、テオルボ、さらにはギターで、鮮やかな妙技を繰り広げ、ただならずクール。さらに、アッコルドーネを率いる鬼才、モリーニの弾くクラヴィコードが、にわかにサイケなトーンを加え。サヴァール家のプリンセス、アリアンナのトリプル・ハープも加われば、撥弦楽器群(クラヴィコードも、そのメカニズムは基本、撥弦なので、入れてしまう... )の独特の爪弾いて生まれるキリっとしたサウンドと、その後のより色彩的な余韻が、それぞれに共鳴し、アコースティックを越えたサウンドを感じ、おもしろく。そして、伝説の太鼓叩き、エステバンが刻む、息衝くリズム!何気ないひと叩きに深みは溢れ、「新音楽」に人間臭さのようなものを纏わせ、絶妙なスパイスに。そこに、要所、要所で歌われるアリアンナのクリーミーなヴォーカル、その浮世離れした存在感もまた独特で。彼女の声が加わると、もう異次元...
それにしても、ハイ・センス!それでいて、ナチュラル... けして簡単では無かったはずのフュージョン=融合をやってのけたリスレヴァンのバランス感覚、音楽性に改めて感服させられ、その絶妙な仕上がりに魅了されずにいられない。何より、この心地良さがたまらない。

ROLF LISLEVAND NUOVE MUSICHE

ロルフ・リスレヴァンによる 『新音楽』

ロルフ・リスレヴァン(リュート/バロック・ギター/テオルボ)
アリアンナ・サヴァール(トリプル・ハープ/ヴォーカル)
ペドロ・エステファン(パーカッション)
ビョルン・イェレミール(コラショーネ/コントラバス)
グイド・モリーニ(オルガン/クラヴィコード)
マルコ・アンブロジーニ(ニッケルアルパ)
トー・アラルド・ジョンセン(キタッラ・バテンテ)

ECM NEW SERIES/476 3049




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