SSブログ

ロマンティック・コンチェルト... レーガーを巡って... [2011]

ロマンティックを極める!というわけではないのだけれど...
何となく、ロマン主義が続きます。そして、hyperion名物、ロマンティック・ピアノ・コンチェルト・シリーズ、ロマンティック・ヴァイオリン・コンチェルト・シリーズから、レーガーを聴いてみることに。
マックス・レーガー(1873-1916)。あまり馴染のない作曲家... というか、何となく取っ付き難いイメージがある。バッハ由来の、ドイツのアカデミックな音楽の系譜を受け継ぐ存在。そんな位置付けが、漠然と気難しいイメージを醸し出すのか... 一方で、実際にその音楽に触れてみると、それはそれはロマンティックで、聴く者を酔わせさえする。また、その先に、ロマンティシズムの顛末としての調性の拡大、さらには崩壊の予兆が滲み始め... で、未だにレーガーを量り切れないでいる。保守的であるとしながら、その当時としての先進性も見せ、潮流から距離を取るようで、本流に乗ってさえいる不思議な存在。ここで、ひとつ、レーガーのコンチェルトを聴きまして、その存在を見据えてみようかなと。ま、思い付きでもあるのだけれど... ターニャ・ベッカー・ベンダーのヴァイオリン、ローター・ツァグロゼクが率いるベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団の演奏で、ヴァイオリン協奏曲(hyperion/CDA 67892)。マルク・アンドレ・アムランのピアノ、イラン・ヴォルコフの指揮、ベルリン放送交響楽団の演奏で、ピアノ協奏曲(hyperion/CDA 67635)を聴く。


伝統の形と新たな時代の狭間に、レーガー... ヴァイオリン協奏曲。

CDA67892jpg
2003年、庄司紗矢香(当時は、まだまだアイドル的存在?だった頃... )が、レーガーのヴァイオリン協奏曲を日本初演する?!ということで、レーガーって誰?どんな音楽?と、何気にシーンが沸いた覚えがある。何となくその名前は視野に入ってくるのだけれど、実際に聴くとなると、その機会は少ないレーガー。ぼんやりとイメージはあっても、実際どうなのかが見えてこない、もどかしい存在でもあった。そこに、庄司紗矢香の弾くレーガー... というのが鮮烈で、強く印象に残っている。そして、今、改めて聴く、レーガーのヴァイオリン協奏曲。
ブラームス的なガッチリとした保守性と、リヒャルト・シュトラウスやシェーンベルク(12音技法を発明する前、無調に至る一歩手前のウルトラ・ロマンティックな... )による先進的なロマンティシズムが同居する巨大な音楽... ヴァイオリンが埋没してしまいかねないようなオーケストラのうねりと、それに必死で抗うヴァイオリンのせめぎ合いが、切なくなるような1楽章... とにかく長大で、それだけで1曲のコンチェルトになりそうな勢い。続く、2楽章(track.2)は、まさにマーラーの時代のロマンティシズム!調性の箍が緩み出す、ロマンティックの末期症状による緩叙楽章の危うげな雰囲気は、魅惑的。と、ここまでは、世紀末(作曲家は、19世紀末を過ぎての20世紀初頭なのだけれど... )が濃厚に広がるのだけれど、終楽章(track.3)では一転、ヴァイオリンがキャッチーなメロディを軽やかに奏で、気分を一新する。この切り返しが、絶妙で。それこそブラームスのヴァイオリン協奏曲の終楽章、フォークロワなテイストのキャッチーさが思い起こされるのだけれど。次第に、その快活なあたりに、擬古典主義的なモダニスティックな気分も見出し、レーガーの音楽の多層性を興味深く聴くことに。そうか、レーガーはそういう狭間を生きた人なのだな。と、ぼんやりとしていたイメージが、今さらだけれど、やっと腑に落ちるものとなったかなと...
そんな、レーガーのヴァイオリン協奏曲を弾く、ベッカー・ベンダーのヴァイオリンがすばらしく。堂々たる演奏で、ツァグロゼク+ベルリン・コンツェルトハウス管の重厚な響きに押し負けない... いや、その確信に満ちた、力強い演奏が印象的。かと思えば、コンチェルトの後での2つのロマンス(track.4, 5)では、美しい音色で、繊細に、まさにロマンスを歌い上げ、また違う魅力を聴かせてくれる。

REGER VIOLIN CONCERTO ・ TWO ROMANCES
TANJA BECKER-BENDER ・ KONZERTHAUSORCHESTER BERLIN / ZAGROSEK


レーガー : ヴァイオリン協奏曲 イ長調 op.101
レーガー : 2つのロマンス Op.50

ターニャ・ベッカー・ベンダー(ヴァイオリン)
ローター・ツァグロゼク/ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団

hyperion/CDA 67892




やっぱり一筋縄にはいかない、レーガー... ピアノ協奏曲。

CDA67635.jpg
ヴァイオリン協奏曲に負けず、ドスの効いたオーケストラの重厚なサウンドで始まるレーガーのピアノ協奏曲。ピアノという楽器の性格からか、ヴァイオリン協奏曲とは一味違う煌びやかさもあるのだけれど、この作曲家の晦渋なあたりはより強まっていて、掴みどころを探すのに一苦労... 派手にうねるオーケストラに、ピアノがガツンガツンとパワフルに楔を打ち込んでゆくような、ただならなさが充満する1楽章。そうした昂りが静まれば、ピアノの美しいタッチが浮かび上がり、印象的なのだけれど... いや、レーガーは甘くない... ヴァイオリン協奏曲でちょっと知った気でいると、ブン殴られるようでもある。それにしても、この感覚は何なのだろ?ひとつひとつのパーツを紐解けば、ロマン主義の内にある音楽のはずなのに、それが束となって、互いに絡み付いて、果てはこんがらがるような、一筋縄ではいかない音楽となる。その"too much"さに、中てられてしまう。が、2楽章(track.2)では、波が引き、ひとつひとつのパーツが、楚々と輝き。その輝きを、少ない音でつないで、「間」で聴かせてしまう。いや、あれだけの1楽章があれば、こういう2楽章が必要となるか... このコントラストは確信犯?そして、終楽章(track.3)は、多少、毒づくようなトーンがありながら、ゴージャスかつ、ヴィルトゥオージティで彩って、魅惑的な音楽を展開する。しかし、凄いコンチェルトだ... 久々に、タジタジになってしまう。
で、その後にリヒャルト・シュトラウスのブルレスケ(track.4)が取り上げられるのだけれど... その、聴き易さたるや!肩の力がやっと抜ける。そして、素直に音楽を楽しみ... いや、こんなにも素敵な曲だった?と、とても新鮮な思いで、ブルレスケを聴くことに。いや、そこには、演奏する側にも、レーガーからの解放(?)があるようで... 何気に、超絶技巧を要求されるブルレスケ... そのあたりは、さすがアムラン!水を得た魚とでも言うのか、滅法、活き活きとし出し。そのひとつひとつのタッチに揺るぎない力強さがあって、この作品を実にホットに仕上げる。そして、ヴォルコフの指揮、ベルリン放送響がまた見事にアムランのピアノに応えて、エキサイティングな音楽を繰り出してゆく。そして、アムランの鮮やかなピアノと、リヒャルト・シュトラウスのウィットがしっかりと結び付き、胸すくような圧巻のブルレスケが響き出す!

REGER PIANO CONCERTO IN F MINOR OP 114 ・ STRAUSS BURLESKE
MARC-ANDRÉ HAMELIN ・ RUNDFUNK-SINFONIEORCHESTER BERLIN / VOLKOV


レーガー : ピアノ協奏曲 ヘ短調 Op.114
リヒャルト・シュトラウス : ブルレスケ ニ短調

マルク・アンドレ・アムラン(ピアノ)
イラン・ヴォルコフ/ベルリン放送交響楽団

hyperion/CDA 67635




nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。