SSブログ

元気が出るモーツァルト。 [2006]

2007年を聴き直した勢いで、2006年を聴き直す。
2006年にスタートした当blogの、第1空白期(ちょこちょこ更新して、いい具合に進んでいたはずが、9月に入って、どういうわけか電池切れ... 更新停止... 2007年を迎えるまでの放置状態)を補完するための、2006年のリリースを聴き直す試み(ちなみに、第2空白期が、2007年の春から2008年の春まで... 先日まで振り返っていた75タイトルで、補完完了!)。ということで、2006年、どんなアルバムがリリースされて、どんなアルバムを聴いていたのだろうと、ざっと振り返ってみたのだが、いや、凄い!6年前のクラシックは、とにかく盛りだくさん!これから聴き直すが、俄然、楽しみになる!一方で、つまりクラシックは、衰退しているのだなと... 複雑な気分に... いや、過去を振り返るとは、そんなものか... 未来に明るさが持てないのは、クラシックに限らずか... と、暗くなっていても始まらない。ということで、2006年を聴き直す。さて、2006年の盛りだくさんだったクラシックの中心に何があったか?モーツァルトの生誕250年のメモリアル!

今さらモーツァルト... されどモーツァルト... だった2006年。ラ・フォル・ジュルネは、もちろんモーツァルトをフィーチャーし、それをまたNHKが、一日中、東京国際フォーラムから生中継したりと、クラシックにとって、最高のお祭りだったなと... で、そういうのを、少し醒めた目線で遠巻きに見つめるのが、クールだったのかもしれないけれど、結局、10タイトルを越えるモーツァルトのアルバムを聴いていたことを、ざっと振り返ってみて、思い知る。何だかんだ言っても、モーツァルトが好き。やっぱり、18世紀の音楽が好き。なのだなと。
サヴァールも、コンチェルト・ケルンも、アイネ・クライネ・ナハトムジークで。ビオンディの弾く、ヴァイオリン協奏曲集に、ミンコフスキの「ジュピター」と、名曲が並び... ヤーコプスの指揮の下、ピリオド系、実力派たちによる『ティートの慈悲』、コジェナー&ラトル(もちろん、オーケストラはベルリン・フィル)によるアリア集には、インマゼールがフォルテピアノで参加という、ゴージャスな面々によるアルバムがあって... 一方で、メモリアルならではのマニアックなアルバムも。ホグウッドが弾くクラヴィコードでの秘作集、マルゴワールはリオ版のレクイエム、フライブルク・バロック管は、1778年、モーツァルトのパリ滞在をクローズアップ... と、実に興味深かったモーツァルトのメモリアル・イヤー。何だかんだで、お祭りに乗っかって、浮かれて、楽しんでいたのだなと。そして、2006年を聴き直す、最初の1枚が、フランスを代表するソプラノ、ナタリー・デセイ、ヴェロニク・ジャンスの豪華共演による、ルイ・ラングレの指揮、ル・コンセール・ダストレによる「大ミサ」(Virgin CLASSICS/359309 2)。
3593092.jpg
デセイとジャンスの豪華共演こそ、目玉なのだろうが、この「大ミサ」の最大の魅力は、ラングレの見事に活き活きとした音楽づくり!アイムのピリオド・アンサンブル、ル・コンセール・ダストレから、ピリオドでありながら、ピリオドのスケール感を越えるサウンドを引き出し、大胆にモーツァルトを、18世紀の音楽を描き上げる。そんな「大ミサ」を聴いていると、遠くにベートーヴェンの荘重さ、ロマン派のドラマティシズムが見え始め... モーツァルト離れしたダイナミックな音楽に、ただならず魅了されてしまうことに...
ラングレというと、リエージュ・フィルの音楽監督(2001-06)を務めていた頃、例えばフランクの交響曲(ACCORD/476 8069)、ル・ゲ(ピアノ)とのコンチェルトなどで、すばらしい録音を残してくれている。一方で、イギリスのピリオド・オーケストラ、エイジ・オブ・エンライトゥンメントを指揮しての、デセイのモーツァルトのアリア集(Virgin CLASSICS/5 45447 2)などでは、デセイの歌よりもインパクトを残す(とはいえ、デセイもすばらしかった!)、刺激的な演奏を繰り広げ、ピリオド可の隠れた逸材... そして、「大ミサ」では、ラングレという個性が如何なく発揮される。キリエの始まりの、あの勿体ぶった出だしから、ヴィヴィットで、濃密で、ただならない雰囲気がひたひたと迫り、何だか凄い... そのただならなさを破るのが、デセイのソロ... そのクリーミーな歌声が、あまりに天国的で... 始まって、ものの5分でノック・アウト。続く、グローリア(track.2)では、モーツァルトならではのポジティヴさが炸裂!テンションは高めに、切れ味は鋭いまま、オーケストラはよく鳴り、コーラスはよく歌い、思い掛けなくパワフルなル・コンセール・ダストレ(アイムではこうはいかない... )の姿に驚かされてしまう。録音風景を撮影したおまけのDVDを見ると、マエストロはこともあろうに右手を骨折中の様子... が、左手から活き活きとしたアクションを繰り出し、ル・コンセール・ダストレに火を着けてしまうのだから、ラングレ・マジック、恐るべし。
しかし、力強いモーツァルトだ。あらゆる場面で、力強い... 音の芯から活力に溢れ、取り澄ましたモーツァルトではない、生命力が漲るモーツァルトがそこにある。そんなモーツァルトに触れていると、モーツァルトの生きた時代の喧騒が聴こえてきそう。教会音楽にして、そういう枠組みを越えた生々しさがあり、ところどころ、生命力が漲るがゆえの艶っぽさとでも言うのか、魅惑的な気分もあって、ドラマティックな盛り上がりに、熱くなる。デセイも、ジャンスも、いつもとは一味違って熱っぽく、印象的。さらに、印象に残るのが、ル・コンセール・ダストレのコーラス部隊。グローリアの最後、クム・サンクト・スピリトゥ(track.9)のフーガでは、声がグルグルと渦巻くよう。そのすぐ後で、クレド(track.10)の、大胆にティンパニが叩かれて刻まれるリズムに乗り、歌う、コーラスときたら!ギアが入り、思わぬスピード・アップが衝撃的... いや、カッコよすぎる... またそのあたりに、革命が目前に迫るような時代のきな臭さを感じ、とにかく刺激的(小気味よく、キャッチーで、勇ましいあたり、革命歌っぽい... )。そして、息つく暇なく、最後のベネディクトゥス(track.13)まで、突っ走る。キリエに始まって、あっという間... 何事かという勢いなのだけれど、元気が出る。久々に聴いたが、やっぱり元気になれる!
で、おまけのようにフリーメイソンのための葬送音楽(track.14)が取り上げられるのだけれど、これがまた、独特のドラマティシズムを放ち、存在感を際立たせる。輝きに充ちた「大ミサ」の後で、不思議なトーンの葬送の音楽を滔々と響かせる。この不思議さが、フリーメイソンのミステリアスさだろうか。それを絶妙にスパイスとしてアルバムを締め括るのが、また粋で...

MOZART: MASS IN C MINOR K 427
DESSAY ・ GENS ・ LEHTIPUU ・ PISARONI ・ CONCERT D'ASTREE ・ LANGRÉE


モーツァルト : ミサ曲 ハ短調 K.427 「大ミサ」
モーツァルト : フリーメイソンのための葬送音楽 K.477

ナタリー・デセイ(ソプラノ)
ヴェロニク・ジャンス(ソプラノ)
トピ・レーティプー(テノール)
ルカ・ピサローニ(バス)
ルイ・ラングレ/ル・コンセール・ダストレ

Virgin CLASSICS/359309 2




nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。