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心地好く流れ出すロマン主義... [2011]

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フィンランドを拠点とする、北欧のローカルなレーベル、ONDINEが、近頃、気になる。
というのも、エッシェンバッハ、プレトニョフ、ムストネン、ホロストフスキーと、メジャー・レーベルを華やかに彩ったアーティストたちを迎え、ローカルとも言い切れない展開を見せ始めていて... さらに、Virgin CLASSICSで活躍していたドイツのヴァイオリニスト、クリスティアン・テツラフが新たに加わり、これからONDINEは、どういう方向へと進むのか?どんな風に飛翔するのか?目が離せない。何より、ますますメジャー/マイナーの線引きが意味を成さなくなる中にあって、そうした状況に、クラシックの新たな潮流が見え始めるならば、実に刺激的だ。
さて、そのテツラフ、ONDINEへの移籍、第1弾... パーヴォ・ヤルヴィ率いるhr響とともに、ドイツ・ロマン主義のど真ん中のコンチェルトを取り上げる。それは、まるでメジャー・レーベルのような華々しさ!という、シューマンとメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲集(ONDINE/ODE 1195)を聴く。

テツラフのイメージというと、ストイックで繊細で、神経質そうにも感じる一方、そこに独特の濃密さがあって、どこか翳を帯びつつドラマティック... 一筋縄にはいかない魅力を感じてきた。が、テツラフもすでにベテランの境地(1966年生まれ?ということで、around 50... という現実にビックリ!つい、若手のお兄さん格くらいのつもりでいたものだから... )に入り、そうしたイメージも少しずつ変化を見せて... ONDINEからのシューマンとメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲集では、かつての独特さが抜け、より素直な音楽性を感じる。そうしたあたりが、管を巻く以前のロマン主義のヴィヴィットで若々しいサウンドによくはまり、いい意味でライトな仕上がり!
1曲目、シューマンのヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲... 物悲しい序奏の後での、ヴィルトゥオージティ全開の華麗な音楽を、軽やかに、明るく、さらりとまとめ上げて、何とも爽快!超絶技巧を要する装飾的なあたりが、まるで、小鳥のさえずりのように聴こえてしまうから、凄い。音楽以上に技巧が前面に立ち、変にくどくなるでもなく、ハイ・テクニックをこれ見よがしに、軽薄になるでもなく、少し高い位置からナチュラルな音楽を生み出すテツラフ... テツラフにして、ちょっとイノセンスな気分が新鮮。続く、メンデルスゾーンのコンチェルト(track.2-4)では、より今のテツラフの音楽性が活き... あの名旋律を繊細に歌いつつ、「名曲」という重みを断ち切るような軽やかさが印象的。そうすることでスコアの隅々まで風通しをよくし、全体をキラキラと輝かせ、メンデルスゾーンの上質な音楽をどこか天国的に仕上げてしまう。また、パーヴォ・ヤルヴィ+hr響の演奏が、そうしたテツラフの演奏に絶妙に応え。パーヴォならではの独特の温度感というのか... オリジナル主義を意識しつつ、我が道をゆく... ドイツ・カンマーフィルとのベートーヴェンのツィクルスがそうであったように、このメンデルスゾーンでも、テツラフの後ろで、飄々とおもしろい音楽を展開している。実は、テツラフもそうしたパーヴォの温度感に影響されている?しっかりと後ろに控えながらも、このアルバム、パーヴォが引っ張っている?ふと、そんなことが過る。
そして、最後は、シューマンのコンチェルト(track.5-7)。名曲、メンデルスゾーンのコンチェルトに比べれば、地味な存在。で、実は、初めて聴くのだけれど... 1楽章(track.5)の、終わりへ向けての盛り上がりが、思い掛けなくカッコよく... 2楽章(track.6)の、シューマンならではのメローさが美しく、琴線に触れるようで... そこに、いきなり始まる3楽章(track.7)の大胆さ... 大胆というか、どこか不器用な印象も受けなくもないが、おもしろい!というより、もっと取り上げられていい作品じゃない?なんて、今さらながらにシューマンのコンチェルトを認識する。ふと振り返ると、シューマンをあまりよく知らないのかも。どこかで聴かず嫌いだったのかも。
しかし、いい意味で肩の力が抜けて、心地好く流れ出すロマン主義... テツラフによるシューマンとメンデルスゾーンのコンチェルトは、いい音楽を、さらりと聴く贅沢さがある。これが、ベテランなればこその余裕だろうか。これまでとは違う、憑き物が落ちたというか、ひとつ次元を突き抜けたベテランのテツラフに、新たに魅了される。また、テツラフのジャケットにあるポートレートが、何気に垢抜けていて。これまでの、気難しそうなメガネは外し、レザーのジャケット(というハードなイメージが、また北欧っぽくて... )を着て、砕けて見せて。そんな姿からも、ONDINEでのテツラフのこれからが、楽しみになる。

MENDELSSOHN ・ SCHUMANN: VIOLIN CONCERTOS
CHRISTIAN TETZLAFF ・ FRANKFURT RSO ・ PAAVO JÄRVI


シューマン : ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲 ハ長調 Op.131
メンデルスゾーン : ヴァイオリン 協奏曲 ホ短調 Op.64
シューマン : ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Wo0 1

クリスティアン・テツラフ(ヴァイオリン)
パーヴォ・ヤルヴィ/hr交響楽団

ONDINE/ODE 1195




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