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ポーランドへ、チェコへ、ヴァイオリンに導かれて... [2007]

電車の窓から... その辺を少し歩いていて... 何気なく目に入ってくる色付く木々...
紅葉の名所まで行かなくとも、すぐそこに、深まりゆく秋がすでにある。そして、そんな風景の中にあると、妙に落ち着いた気分になって、しみじみしてきて。澄み切った空に冬を見つけ、夕方の空のやたら綺麗なグラデーションを目にしてしまうと、変に感傷におそわれたり。というのは、ちょっとオーバーか?けど、冬を前にする哀愁みたいなものは、間違いなく濃くなってきている晩秋の頃、なのである。今年も終わりが見えつつある。そんな秋の深まりに、中東欧の音楽、ヴァイオリンの音色... センチメンタルを加速させるようなアルバムを聴いてみようかなと。
2007年にリリースされた2つのアルバム、ベンジャミン・シュミット(ヴァイオリン)が弾く、ポーランドのヴァイオリン協奏曲集(OEHMS CLASSICS/OC 597)と、ボフスラフ・マトウシェク(ヴァイオリン)と、クリストファー・ホクヴッドの指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団という贅沢な組合せで繰り広げられたマルティヌーのヴァイオリンとオーケストラのための作品全集から、第1弾(hyperion/CDA 67671)を聴き直す。


ポーランドを辿る... シュミットのヴァイオリン...

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ヴィエニャフスキ(1835-80)、シマノフスキ(1882-1937)、ルトスワフスキ(1913-94)...
ロマン派、近代、現代と、ヴァイオリン協奏曲で、見事にポーランドの音楽史をまとめてしまう1枚。ポーランドの音楽と言えば、とにかく「ショパン」の一言で片づけられがちなわけだが、ショパンばかりでないポーランドの音楽を年代順に聴けるのが、まず興味深く... 国民楽派が台頭し始める頃、ロマン派全盛の時代ならではの、たっぷりと哀愁を漂わせるヴィエニャフスキの2番のヴァイオリン協奏曲のメロディックな音楽の後で、独特の近代を織り成す、ミステリアスで神秘的なサウンドを響かせるシマノフスキの2番のヴァイオリン協奏曲... その先で、よりミステリアスに謎めく感覚に包まれるルトスワフスキのチェイン2... 次第次第にイマジネーションは広がり、1曲ごとに、より深い世界へと下りてゆくようなおもしろさもあって。いや、改めて聴いてみれば、ポーランドの音楽史を追うばかりでない、その綴り方の巧さに、シュミットのセンスを感じてしまう。
が、最も凄いところは、ロマン派から現代までをナチュラルに1枚のアルバムに表現し得てしまうシュミットの音楽性... シュミットならではの繊細な響きは、ヴィエニャフスキのヴィルトゥオージティ溢れるコンチェルトを、スタイリッシュに仕上げ。シマノフスキではよりポエティックに、それでいて伊達に。ルトスワフスキでは、緊張感の中にシュミットの繊細な響きがより冴えて。時代もスタイルも難なく飛び越えて、縦横無尽。それでいて、3人の作曲家を並べての流れのようなものをさり気なく意識させてくる。どこか翳を帯びつつの独特の華麗さ... 渋さの中に秘めた煌びやかさ... クリアな美音を響かせながらも、雰囲気のあるシュミットのヴァイオリンが、ポーランドの音楽の魅力を知らず知らずのうちに引き出して。はっと気が付けば、この国の詩情にすっかり魅了されて。一度、キャッチーなヴィエニャフスキの音楽に乗ってしまえば、ルトスワフスキまで、ただならず惹き込まれてしまう。
そして、シュミットを絶妙にサポートするのが、彼のコンチェルトの録音に欠かせない指揮者、ライスキン... ポーランド、シロンスクのオーケストラ、ブロツワフ・フィルを巧みに導いて、まったく異なるテイストの3作品をそれぞれきっちりと形にしてくる。シュミットのヴァイオリンがこのアルバムにひとつの流れを作るならば、ライスキンは3作品のテイストをよく見極め、くっきりとコントラストを描き出す。このシュミットとライスキン、それぞれのスタンスと連携が、このアルバムをより刺激的なものにして、見事!

Wieniawski ・ Szymanowski ・ Lutosławski: Works for Violin and Orchestra
Benjamin Schmid ・ Daniel Raiskin ・ Wroclaw Philharmonic Orchestra


ヴィエニャフスキ : ヴァイオリン協奏曲 第2番 ニ短調 Op.22
シマノフスキ : ヴァイオリン協奏曲 第2番 op.61
ルトスワフスキ : チェイン 2 〔ヴァイオリンとオーケストラのための対話〕

ベンヤミン・シュミット(ヴァイオリン)
ダニエル・ライスキン/ヴロツワフ・フィルハーモニー管弦楽団

OHEMS CLASSICS/OC 597




フランス流ボヘミアン・サウンド、マルティヌー。

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久々に聴くマルティヌー... いや、チェコの音楽というのは、やっぱり独特!
マルティヌー(1890-1959)はチェコの出身ではあるけれど、パリでの活躍(1929-41)があって、第2次世界大戦を避けてアメリカ(1941-53)へと渡り、その後、ヨーロッパに戻ってもチェコへは帰ることなく... 何より、フランス仕込みの擬古典主義のスタイルで、軽やかにモダンの気分を音楽に乗せて人気を博した作曲家だけに、そのサウンドは民族的なトーンは薄く、よりインターナショナルなもの... だけれど、間違いなく、マルティヌーの音楽には、チェコの独特の感覚があるように感じる。その色彩感... 他のヨーロッパの国の作曲家にはないセンスのパレットを用いて、鮮やかなサウンドでモダンな作品の数々を紡ぎ出す。そうした作品の数々には、ちょっとクラシック離れしたような感覚も見出して... 21世紀の今、改めてその音楽を聴けば、そこはかとなしにポップだったり...
そんなマルティヌーの音楽に、おもしろい切り口で迫るシリーズ。チェコのベテラン、マトウシェクのヴァイオリンを中心に、チェコ音楽のスペシャリスト、ホグウッドの指揮、そして、チェコが世界に誇る名門、チェコ・フィルという手堅い組合せで綴る、マルティヌー、ヴァイオリンとオーケストラによる作品全集(全4作)。ここでは、そのvol.1を聴き直すのだけれど、その1曲目... フルートとヴァイオリンのための協奏曲(track.1-3)の、フルートとヴァイオリンという組合せから、まったくおもしろい。どこかフワフワとした掴みどころの無いような組合せが何とも不思議で... 軽やかなリズムを刻みつつ、不思議な色合いの音楽を展開する。しかし、それは実に小気味のよく、粋で洒落ていて、まさにフランス仕込みでもあり... おもしろいのは、同時代のフランスの音楽(6人組あたり... )よりもライトで、キャッチーで、センチメンタルも滲み、よりフランス的に感じられるところ。そこでふと過るのが、同郷の画家、ミュシャのポスターのイメージ。マルティヌーの音楽も、流麗でありながらグラフィカル?で、そんなことを思い付くと、ますます興味深く感じる「チェコ」というセンス。それは、続くデュオ・コンチェルタンテ(track.4-6)、2挺のヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲(track.7-9)でより感じられ。何気ないキャッチーなメロディに、はっとさせられる瞬間があって、フランス流ボヘミアン・サウンドに、改めて魅了されることに。
そして、忘れてならないのが、そんなマルティヌーの音楽の魅力を丁寧に引き出す、すばらしい演奏!マトウシェクを筆頭に、ソリスト陣のクリアなアプローチに、ホグウッドの歯切れのいい指揮、やわらかで豊かな響き紡ぎ出すチェコ・フィル... チェコが生んだ偉大な先人への愛情に溢れた彼らの演奏が、マルティヌーをより素敵なものにしていることは間違いない。

MARTINŮ THE COMPLETE MUSIC FOR VIOLIN AND ORCHESTRA - 1
MATOUŠEK ・ CZECH PHILHARMONIC ORCHESTRA / HOGWOOD


マルティヌー : フルート、ヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲 H 252 **
マルティヌー : 2挺のヴァイオリンと管弦楽のためのデュオ・コンチェルタンテ H 264 **
マルティヌー : 2挺のヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲 ニ長調 H 329 **

ボフスラフ・マトウシェク(ヴァイオリン) *
レジス・パスキエ(ヴァイオリン) *
ジェニファー・コー(ヴァイオリン) *
ヤンネ・トムセン(フルート) *
クリストファー・ホグウッド/チェコ・フィルハーモニック管弦楽団

hyperion/CDA 67671




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