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紀元前1世紀、ギリシア危機。 [2011]

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明日にも世界は終わるかもしれない!くらいの勢いで、大いに盛り上がったG20だったけれど。それで、どーなった?国民投票は回避され、首相は退陣、大連立が成り、新しい首相が決まって、ギリシア危機は去ったか?いや、そんな単純な事態ではなかったはず... が、近頃ではあまりニュースに上らなくなり。いや、結局、そんなものか... 喉元過ぎれば熱さ忘れて、冷めすらしてしまう。結局、メディアが稼ぐために、本質とは違うところで盛り上げられる危機(TPP騒動もまたしかり... )。なのかも。そんなことを考えると、危機そのものより鬱々とした気分にさせられる今日この頃。ならば、気分を変えて、音楽!で、ギリシア危機を聴く(って、聴けるものなのか?)。
それは、21世紀ではなく、紀元前1世紀のギリシア危機。大帝国へと変貌を遂げつつあるローマ共和国と、沈みゆくヘレニズム世界、ポントス王国の攻防を背景としたオペラ... ディエゴ・ファソリス率いるイ・バロッキスティに、ツェンチッチ(カウンターテナー)をタイトルロールに迎えての、ヴィヴァルディのオペラ『ファルナーチェ』(Virgin CLASSICS/0709142)を聴く。

モーツァルトを始め、様々な作曲家が取り上げているポントス王家の悲喜交々。ギリシア、最後の抵抗勢力(ポントス王家の出自はペルシア系なのだけれど... )として、長年、ローマと戦ったポントス王、ミトリダテス6世(在位 : BC.120-BC.63)と、ファルナケス2世(在位 : BC.63-BC.47)の親子の、ドラマティックな生涯は、まさにオペラ・セリア向き(もちろん、しっかりと脚色されて劇場に掛けられるのだけれど... )。そして、ヴィヴァルディもまたオペラにしていて... ファルナケス2世=ファルナーチェを主役に、カッパドキアの女王、ベレニーチェ(=ベレニケ、って、かの有名なクレオパトラの姉さんのことか?)との熾烈な争いを描く。
という、ヴィヴァルディのオペラ『ファルナーチェ』を、ファソリス+イ・バロッキスティで聴くのだけれど... とうとう彼らがヴィヴァルディのオペラを取り上げる!と、聴く前からテンションの上がってしまった全曲盤。もちろん、期待に違わぬすばらしい演奏で。個性際立つ(場合によっては、際立ち過ぎる... )ピリオドの世界にあって、節度を以って作品と向き合う彼らの真摯さが、このオペラでもしっかりと活かされ。個性的なアクセントで、キツ目のコントラストで、熱っぽく演奏することは、今やありふれているわけだが、アクセントやコントラストで煙に巻くのではなく、ひとつひとつの音に熱を込めて響かせるイ・バロッキスティ... そうして生み出される充実感、スケール感は、ピリオドの枠を凌駕するようなところがあって、ヴィヴァルディのオペラを、よりゴージャスに、情感豊かに聴かせる。始まりのシンフォニアから、肉厚の最高級ステーキをレアでいただくような、そんな感覚?
そして、主役たちの登場!ピリオドの世界で活躍する歌手たちを手堅くキャスティングして生まれる揺るぎなさ、危なっかしさの無いパフォーマンスが、ヘレニズム世界のバトル・ロワイヤルに、華麗にして、ドスを効かせるような迫力を生み、レチタティーヴォからただならず凄味を見せ、そこはかとなしにドラマティック。そこから、力強いアリアとつなげられ... 当然、アリアも見事!誰が凄いというではなく、どのアリアが凄いというでもなく、カウンターテナーのスター、ツェンチッチを筆頭に、ドノーゼ(メッゾ・ソプラノ)、ネシ(ソプラノ)、ハレンベリ(メッゾ・ソプラノ)、ゴーヴァン(ソプラノ)、ベーレ(テノール)、トロ(テノール)、全ての歌手が、全てのアリアで凄い!その隙の無さに、眩暈を起こしそうなくらいで。けして簡単であるはずがないヴィヴァルディのオペラを、難なく歌い切ってしまう凄さ... そこに、イ・バロッキスティの熱演も相俟って、1曲1曲が圧倒的な存在感で迫って来る。
1727年にヴェネツィアで初演され評判となった『ファルナーチェ』を、フェッラーラで再演するにあたって見直された版(結局、パードレ・ヴィヴァルディの女性問題?などもあり、教皇領、フェッラーラでは上演が流れてしまう... )を再現するファソリス+イ・バロッキスティによる全曲盤。なのだが、ヴィヴァルディの再演に掛ける並々ならぬ情熱が滲み、その一曲入魂的な強い思いが、ナンバー・オペラの単調さを打ち破るようで、巧みに差し挟まれる重唱、コーラスもアクセントとなり、息つく暇なく繰り広げられるドラマに、希代のオペラ作曲家としてのヴィヴァルディを再認識させられる。いや、期待通り... ファソリス+イ・バロッキスティのヴィヴァルディのオペラは、圧巻!バロックにして、バロック以上の聴き応えを体験させてくれる。

I Barocchisti Diego Fasolis VIVALDI FARNACE

ヴィヴァルディ : オペラ 『ファルナーチェ』 RV.711

ファルナーチェ : マックス・エマヌエル・ツェンチッチ(カウンターテナー)
タミーリ : ルクサンドラ・ドノーゼ(メッゾ・ソプラノ)
ベレニーチェ : メアリー・エレン・ネシ(ソプラノ)
セリンダ : アン・ハレンベリ(メッゾ・ソプラノ)
ジラーデ : カリナ・ゴーヴァン(ソプラノ)
ポンペオ : ダニエル・ベーレ(テノール)
アクイリオ : エミリアーノ・ゴンザレス・トロ(テノール)

ルガーノ・スイス放送合唱団
ディエゴ・ファソリス/イ・バロッキスティ

Virgin CLASSICS/0709142




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