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オルガン付き交響曲。 [2007]

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何となくだけれど、ベルギー、リエージュのオーケストラが気になる。
このオーケストラの演奏によるブルーノ・マントヴァーニの作品集を聴いたばかり... ということもあるのだけれど、ベルギーの地方オーケストラにしては、意外と気になるアルバムが多いように感じていたり。最近では"Royal"の称号も戴いて、その存在感は大きくなりつつある?日本においても、新日本フィルの音楽監督でお馴染みのクリスティアン・アルミンクが、今シーズンから音楽監督に就任したことで、何かと注目を浴びたわけだが(ま、アルミンクも、いい加減、ヨーロッパで、ある程度のポストに着かないと、その先への展望が広がらないわけで、やっと新日本フィルを巣立ってくれたか... という思いでいるのだけれど... )。オランダ、ドイツ、フランスに囲まれた、クラシックにおいては、若干、地味な国、ベルギー。そのさらに地方のオーケストラとなる、リエージュ王立フィルハーモニー管弦楽団。実は、侮れない... ということを強く感じさせられた、リエージュ・フィル、2007年のリリース。
2009年まで音楽監督を務めていたパスカル・ロフェの指揮で、ジョンゲンとサン・サーンス、オルガン付き交響曲集(cypres/CYP 7610)を聴き直す。

ここのところ、現代音楽ばかりを聴いて来たものだから、妙に鮮烈で、思い掛けなく心に響いてしまう、ジョンゲンの協奏交響曲と、サン・サーンスの3番の交響曲、「オルガン付き」。19世紀の、ジャスト・クラシックなサウンド!さらに、シンフォニーに、オルガンが付いてくるわけだ... 凄いトッピングである。振り返ってみると、ありそうでいて、他には探せない組合せなのかも。何より、これでもかという壮大さ!
まずは、1曲目、ジョンゲン... オルガン付き交響曲として、ジョンゲンの協奏交響曲は有名ではあるけれど、サン・サーンスの「オルガン付き」に比べれば、聴く機会はまったく減ってしまう。となると、どんな音楽だったろうか?正直なところ、印象に残り難くい。そうしたところで、改めて聴くジョンゲン... 印象が薄い中で聴く、ロマンティックで壮大なその音楽は、今さらながらに圧倒されたりで、ふとホルストの『惑星』(1920)のイメージが過る。キャッチーなメロディと、鮮やかなサウンド... 十二分にロマンティックでありながら、ワーグナー、ブルックナーあたりの延長線上に、印象主義的な色彩感も見せる、独特のハイブリット感... で、調べてみたら、1926年の作品。サン・サーンスの「オルガン付き」(1886)と、ついセットで考えがちなものだから、てっきり19世紀の作品とばかり... と、驚きつつ、腑に落ちる。1920年代、最後のロマンティストたちが近代音楽に囲まれて生み出した音楽というのか、デュカス(1865-1935)や、ブゾーニ(1866-1924)、フローラン・シュミット(1870-1958)、フランツ・シュミット(1874-1939)らに通じる時代との距離感が興味深く。変拍子、不協和音、無調、音列... の対岸で、進化を遂げた伝統の姿の確かさのようなものをしっかりと味わう。
それにしても、煌びやか!シンフォニーとしての充実した響きに、パイプ・オルガンの壮麗さを乗せて、華麗に、アグレッシヴに攻めてくる!かと思えば、しっとりと豊潤な響きで、神秘的に、よりポエティックに描かれる、魅惑的な3楽章(track.3)など、美しく印象的... そんなジョンゲンを聴いた後での、サン・サーンスの3番の交響曲、「オルガン付き」は、ことのほかビターに聴こえて来る。1楽章(track.5)の出だしが渋い... ということも、もちろんあるのだけれど、短調から長調へ、苦しみから歓喜へという19世紀のロマン派の伝統にかっちりと納まった音楽が、妙にアカデミックに感じたり。端々から、ドイツの匂いが漂うような骨太感を見出し、おもしろく感じたり。ドビュッシーが、サン・サーンスの保守性を、手痛く攻撃したのも頷ける。しかし、その保守的だからこその魅力もあるわけで、ジョンゲンの後では、サン・サーンスの保守性がストイックに感じられ、スタイリッシュにも思えてくる... いや、クールなんじゃない?そんなサン・サーンスを聴かせてくれた、ロフェの指揮、リエージュ・フィルの演奏!何というか、目が覚める演奏で、印象すら変わるのかも。
サン・サーンスの名曲に、ドビュッシーではないけれど、やっぱりその保守性というのか、アカデミックに、きちっと書き上げられているあたりに、物足りなさを感じて来たかもしれない。そういうイメージからか、進んで聴きたいとは思わない作品だった。けれど、ロフェ、リエージュ・フィルの演奏に触れると、けしてそんなことはない!と、思い知らされる。それどころか、サン・サーンスの、アカデミックに、きちっと書き上げられたあたりが、見事に活きて。何より、シンフォニーとしての、見事なシンフォニックさ!節度を以って、丁寧にリエージュ・フィルを鳴らして来るロフェの指揮ぶりがとにかく印象に残る。現代音楽のスペシャリストとして、明晰に作品を捌くことはもちろん、捌くことで、エンターテインを見事に引き出すバランス感覚が見事。一方で、オルガンのラトリーの演奏は、若干、目立ちにくいようなところが... 名手、ラトリーだけに、少し残念ではあるのだけれど、オルガン付き"交響曲"としては、十分に魅力は伝わって来る。そして、理屈抜きに、楽しませてくれる。最後には感動が待っている!この竹を割ったような演奏には、ただならず元気付けられる!やっぱり、「オルガン付き」の終楽章(track.8)は、盛り上がる!

jongen | saint-saëns | symphonies avec orgue | latry | opl | rophé

ジョンゲン : 協奏交響曲 Op.81
サン・サーンス : 交響曲 第3番 ハ短調 Op.78 「オルガン付」

オリヴィエ・ラトリー(オルガン)
パスカル・ロフェ/リエージュ・フィルハーモニー管弦楽団

cypres/CYP 7610




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サンフランシスコ人

1915年 サン・サーンスの「カリフォルニア万歳!」 はサンフランシスコで世界初演....
by サンフランシスコ人 (2016-03-04 04:20) 

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