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フランスの現代音楽に引き寄せられて... [2011]

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さて、現代音楽が、続きます。で、フランスの現代音楽がおもしろい?
ここ数年、このblogで取り上げた現代音楽を振り返ると、何気にフランスの現代音楽に引き寄せられていて。それも、ブーレーズではなく、スペクトル楽派でもなく、その次の世代... ダルバヴィ(b.1961)、ペク(b.1965)、カンポ(b.1968)あたりが気になる... その、まさに「次世代」を意識させるフレキシブルな感性。現代音楽らしさと、こだわらなさとが、絶妙にカクテルされて、センスのいいものに仕上げてくる。そこに、フランス(印象主義からスペクトル楽派を経ての響きの多彩さ... エキゾティシズムからレヴィ・ストロースへと至る非ヨーロッパへの関心... )ならではのフレーバーも加わって、思いの外、魅力的(に、思うのだけれど... どうだろう?)。
そうした中で、目が離せない存在が、ブルーノ・マントヴァーニ(b.1974)。同世代ということもあって、妙に親近感を覚えつつ、この人ならではの独特さが興味深く... そんな彼の、ゼロ年代の作品、3つを取り上げるアルバム、"Time Stretch"(æon/AECD 1102)を聴く。

マントヴァーニの音楽は、独特...
まず、最初の印象は、取っ付き難い。それは、いわゆる"ゲンダイオンガク"的な難解さとは、またちょっと違うようにも感じる、掴みどころの無いイメージで... ちょっと、戸惑ってしまう。が、戸惑いつつ、もう一歩、踏み込んでみれば、想像していなかった世界が広がるのか。スザンナ・マルッキ+アンサンブル・アンテルコンタンポランの演奏で聴いた、「7つの教会」(KAIROS/0012722KAI)の体験が、忘れ難いものとなっている。いや、マントヴァーニという作曲家の凄さを知ったと言うべきか... 鋭敏な感性が紡ぎ出す、これまで味わったことの無いサウンドスケープの生々しさ、緻密に音楽で構築されて建ち現れる7つの教会(ボローニャにあるサント・ステファノ教会群の建物の構造を、音楽として描き出す... )の鮮烈な姿に、息を呑む。そして、ただならず魅了されて... それから3年、新たなマントヴァーニの作品集がリリースとなれば、聴かずにはいられない。
という、久々の作品集、まずは1曲目、2挺のヴィオラとオーケストラのための協奏曲。40分弱の大作は、聴き応え十分!それは、ヴィオラの繊細な動きと、オーケストラのダイナミックな動きがせめぎ合う、うねる音楽... 2挺のヴィオラのざわめきから、オーケストラの様々な響きが束になって、大波のようにヴィオラを呑み込むダイナミズムまで、振幅の大きいサウンドに揺さぶられるような感覚に中てられつつ、次第に呑み込まれて、もみくちゃにされる快感を味わうような、凄まじさ。また、凄まじさの中に、はっとする美しい響きが顔を覗かせて、幻惑させられもし。マントヴァーニならではの鋭敏な感性が、独特の「協奏曲」を響かせる。安易な分かり易さに歩み寄ることなく、厳しい音楽を響かせながらも、ひとつひとつの音を丁寧に選び取り、多彩な響きを編み上げて、息を呑む瞬間を生み出す... そこに、オーケストラという規模を駆使して、聴く者を圧倒するパワフルさも加え、インパクトはより強くなったか。「7つの教会」からは一歩踏み出した姿を見せてくれる。
そして、2曲目、アルバムのタイトルにもなっている、「タイム・ストレッチ」(track.2)。ルネサンス末の作曲家、ジェズアルドを特徴付けている半音階によるハーモニーを、そのマドリガーレから抽出し、それを基にオーケストラ作品を書いた... ということらしいのだが、ジェズアルド云々はさて置き、オーケストラが咆哮!これが、妙に気持ちがいい。何より、マントヴァーニの鋭敏な感性の下の咆哮は、暴力的でありながら鮮烈さを失わない... いや、美しくすらあって、ちょっと猟奇的?いや、これこそヴェノーサ公ジェズアルド的?最後は、ブザンソンの若手指揮者国際コンクール(2007年、第50回)のファイナルの課題曲として作曲された「フィナーレ」(track.3)。かのブザンソンでは、こういう作品も取り上げられるのかと、興味津々で聴くのだけれど... なかなかの難曲。コンクールの様子がどんなだったか、気になってしまう...
さて、この3作品を指揮するのが、パスカル・ロフェ。マントヴァーニ作品には欠かせない、現代音楽のスペシャリスト。N響、Music Tomorrow 2007に客演した際は、「タイム・ストレッチ」を取り上げるほどで... となれば、手際よくマントヴァーニ作品を響かせる。のだが、演奏するリエージュ王立フィルは、多少、張り切り過ぎ?NHK FMの『現代の音楽』で聴いた、N響、Music Tomorrow 2007での、N響による「タイム・ストレッチ」を思い起こすと、マントヴァーニの鋭敏さが、ダイナミズムに押されてしまうような印象もあり。そのあたり、わずかに残念。一方、協奏曲の2人のソリスト... タベア・ツィンマーマンに、アントワーヌ・タメスティという豪華な共演と、すばらしいパフォーマンスを忘れるわけにはいかない。

Bruno Mantovani Concerto ・ Time Stretch ・ Finale

ブルーノ・マントヴァーニ : 協奏曲 〔2挺のヴィオラとオーケストラのための〕 *
ブルーノ・マントヴァーニ : タイム・ストレッチ(ジェズアルドによる) 〔オーケストラのための〕
ブルーノ・マントヴァーニ : フィナーレ 〔オーケストラのための〕

タベア・ツィンマーマン(ヴィオラ)、アントワーヌ・タメスティ(ヴィオラ) *
パスカル・ロフェ/リエージュ王立フィルハーモニー管弦楽団

æon/AECD 1102




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