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やさしい音楽。 [2011]

2010年のマーラー生誕150年、2011年のマーラー没後100年、
前半、後半と、2年も続くマーラーのメモリアル... だったが、そろそろ、その終わりが見えて来て、何となく寂しい。とにかく、次から次へとマーラーの交響曲がリリースされて、ツィクルスは完成されて、これほど収穫の多いメモリアルになるとは想像もしていなかった(近頃、クラシックは元気が無かった分... )。
そうした中、印象に残る、ジョナサン・ノット率いる、バンベルク交響楽団のマーラーのツィクルス。メモリアルだからと浮足立つことなく、じっくりと時間を掛けて進められている彼らのツィクルスは、メモリアルの前半に2番、「復活」(TUDOR/TUDOR 7158)を、後半に3番(TUDOR/TUDOR 7170)をリリースして、ちょうど折り返しを過ぎたところ。そのペースに、多少、もどかしさを感じながらも、メモリアルに合わせてツィクルスを完成する... なんてことはしない、彼らならではのマイペースぶりが、他にはないマーラーを育みつつある(で、完成にはあと5年くらいは掛かる?)。ということで、2番、「復活」と、3番を聴く。


オペラハウス仕込みの「復活」...

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昨年のリリースではあるのだけれど、最新盤、3番のリリースに合わせて取り上げてみる、ノット+バンベルク響の「復活」。何となく、今こそ復活な気がしたり... で、音楽もまた感動的だし... 単純なものだから、聴く度に感動してしまう、あのフィナーレへと至る長い道程!以前は、その大仰(コーラス付くし、オルガン鳴るし、タイトル「復活」だし... )なイメージに、抵抗感すらあったものの、一度、いい演奏に出会ってしまえば、もう、虜。煮詰まって深みを見せる晩年のマーラーもいいけれど、若いマーラーのよりダイレクト(そのあたりが、「大仰」な方向へと向かわせるのだろうけれど... )なセンスが生み出すスケール感は、聴く者を、否が応にも感動の渦へと呑み込んでしまう。が、そうなり得るには、指揮者のセンスが大いに問われるように感じる。盛りだくさんの交響曲を、如何にナチュラルに感動的なフィナーレへと運んでゆくのか?
ドイツの伝統を受け継ぐ保守的なオーケストラに、オペラハウス仕込みの現代音楽のエキスパートという異色のマエストロの組合せは、これまで、聴き馴染んだクラシックの名作(例えば『春の祭典』!あれは、何だったんだ... ということで、このあたりは次回につづく... )を、思いもよらぬ場所へと持って行って、驚かせてくれたわけだが、「復活」は?意外にも、とても分かり易い音楽として聴かせてくれる。もっと、驚かされると思っていた分、多少、肩透かしを喰らった気分なのだが。ま、そう思わせて、肩越しからとんでもないオーラを放って、後からアっ!と言わせたりするのがノットだけに、聴き込む内に、まったく違う世界が拓けて来る可能性は大いにあるのだろうけど... しかし、まず、その"とても"分かり易いことが凄い。
長大で、大仰ですらある作品が、巧みに筋立てられ、次から次へと場面が展開し、あれよあれよとフィナーレへと吸い込まれるように導かれてしまう。大作を前に、それだけ整理できてしまう処理能力の高さ!その明晰さは、現代音楽のエキスパートならでは。が、そういう段階に留まらないノット。オペラハウス仕込みならではのセンスこそ活きる。物語にしっかりとメリハリを付けて、着実に盛り上げる職人芸... というのか、聴く者に長大さ、大仰さを、一切、強いない。最終的には、「復活」という名のエンターテイメントを繰り広げてくれるようであり。マーラーの、やはりオペラハウス仕込みのセンスを「復活」から探り当て、交響曲というよりは、シアトリカルな音楽として聴かせる。この感覚が、"とても"分かり易い音楽を生み出していて、おもしろい!何より、始まってからフィナーレまでが、あっという間!変にハイスピードというわけではない、聴く側をまったく飽きさせない、濃密な音楽を、さらりと軽く仕上げてしまう... となると、やっぱりノットは、「復活」を、思いもよらぬ場所へと持って行ってしまったのかも。

GUSTAV MAHLER: SYMPHONIE NO. 2

マーラー : 交響曲 第2番 ハ短調 「復活」

ジョナサン・ノット/バンベルク交響楽団
アンネ・シュヴァネヴィルムス(ソプラノ)
リオバ・ブラウン(アルト)
バンベルク交響楽団合唱団

TUDOR/TUDOR 7158




やさしい音楽、3番...

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「復活」に続いての、最新盤となる3番... 大作揃いのマーラーの交響曲の中でも、最も長い3番なわけだが、「復活」同様、その規模をもろともせず、明晰に捉えてゆくノット。その細部までを丁寧に見つめ、作品の中に篭められた、この交響曲のピュアな姿を探るようでもあり。そうして響いてくるマーラーは、あどけなさも残る無邪気なファンタジーか。交響曲というアカデミックな理屈っぽさはすーっと消え、楽章ごとに、それぞれ豊かな表情に溢れ、まるで絵本を次から次へとめくるような、ワクワクした気持ちにさせる。
理知的で現代的なマエストロたちは、今や、そう珍しい存在ではない。彼らは見事な手捌きで、きっちり作品を腑分けして、それまで見えて来なかった部分を明らかにし、鮮烈なイメージで聴く者を驚かさてくれる... そういう怜悧な演奏というのはとてもクールで、現代っ子世代には魅力的に映る。が、ノットの仕事というのは、そうした腑分けに留まらない。作品をさらに細かくし、いつの間にやらDNAを採取して、そのDNAに記載された、作品の核心に迫る気質のようなものを、くっきりと音楽として響かせる。すると、作品は、怜悧どころか、独特の温度感を持ち、色彩感を持ち、よりしっかりとした存在感を見せ始める(時折、そうしたあたりに戸惑うこともあるのだけれど... )。これがノットのおもしろいところであり、凄いところ。この3番でも、ノットなればこそのマーラーの姿が露わになり、魅了されるわけだが、そうしたノットのヴィジョンを実際に形にするバンベルク響の存在を忘れるわけにはいかない。
往年のマエストロたちに率いられ、古き良きオーケストラをイメージさせるバンベルク響も、ノットが着任してからすでに10年以上が経過し、すっかりノットのオーケストラとなっているわけだ。が、流行りのモードに追随するようでもなく、かえってモードに埋没しない個性が、作品にはいい刺激にもなるのか... 3番では、思いの外、様々な色を持ち、少しマッドなタッチで、ノットが見出すマーラー像を、勝手知ったそぶりで、きっちり鳴らしてゆく。研ぎ澄まされたハイテク・オーケストラにはないマイペース感が、3番に隠されていた素朴さのような感覚を、温もりを以って引き出していて、どこか人懐っこい。そこに、藤村(アルト)の深い歌声が、どこか母性的なやさしさで寄り添い、4楽章(disc.2, track.3)は、子守唄のよう。バンベルク響の演奏も相俟って、美しい...
それにしても、マーラーの音楽は、何てやさしいのだろう?!酸いも甘いも知った巨匠(3番を作曲した当時は、作曲家はまだ若かいのだけれど... )が、その全てを包み込んで、人生を愛しむように編んだ音楽。今の時代にこそ、深い感動と癒しをもたらしてくれるよう。

GUSTAV MAHLER: SYMPHONIE NO. 3

マーラー : 交響曲 第3番 ニ短調

ジョナサン・ノット/バンベルク交響楽団
藤村 実穂子(アルト)
バンベルク大聖堂少年合唱団、バンベルク交響楽団合唱団(女声)

TUDOR/TUDOR 7170




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