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弦楽四重奏で、中東欧を巡る。 [2007]

中秋の名月、綺麗でした。空も、次第に高くなっております。もう蝉は聴きません。
が、暑い!まったく、いつまで続くんだ... と、ゲンナリさせられてしまう。あの夏の酷暑に比べれば、さほどではないはず。が、一度、下り始めた気温が、思うように下降して行かないじれったさに、残暑は際立つようで。変に身体に堪えたり。となれば、音楽くらいは秋っぽく... と、ここのところ、秋にしっくり来るものを求めて、棚をガサゴソと弄っている。多少、汗ばみながら、秋を探す。
ということで、中東欧の弦楽四重奏曲なんかを手に取って見る。それは「秋」なのか?と、多少、迷いもありつつなのだけれど... 2007年にリリースされた、ツェートマイアー四重奏団による、バルトークの5番とヒンデミットの4番の弦楽四重奏曲(ECM NEW SERIES/476 5779)。パヴェル・ハース四重奏団による、ヤナーチェクの1番とハースの1番と3番の弦楽四重奏曲(SUPRAPHON/SU 3922-2)を聴き直す。


ツェートマイアーのストイックさで、バルトーク... ヒンデミット...

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ツェートマイアーならではのストイックな響きと、近代のひと癖ある作曲家たちという組合せが、思いの外はまってしまって、聴く者を寄せ付けないような峻厳な音楽がそびえ立ち、たじろいでしまう... 何だか、強烈なインパクトばかりが印象に残っている、ツェートマイアー四重奏団によるバルトークとヒンデミットの弦楽四重奏曲のアルバム。そして、今、改めて聴いてみるのだけれど...
1曲目、バルトークの5番の弦楽四重奏曲(track.1-5)。その1楽章の、突き刺さるような、ガサガサしたサウンドは、やっぱり尖がっている。何なのだろう?この感覚... ストラヴィンスキーやシェーンベルクよりも先にない音楽でありながら、独特の取っ付き難さのある音楽。耳馴染みのするはずのフォークロワなテイストは、バルトークの手に掛かり近代音楽として作品に練り込まれると、やたら攻撃的に響いてくる。が、その攻撃的なあたりが、おもしろいのかもしれない。5番の弦楽四重奏曲を改めて聴いて、その出だしの激しいあたりに、ちょっとロックな気分を見出してしまう。いや、出だしに限らず、冒頭の激しい動きが現れる度に、弦楽四重奏の持つある種の渋さを凌駕する迫力が、バルトークに骨太のロック感を漂わせる。
当然、ストイックなツェートマイアーだからこその、隙の無い響き... その隙の無さが、作品の取っ付き難さを強調してもいる。1シーズンに1プログラム、作品は全て暗譜で... ツェートマイアーのクァルテット対する厳しい姿勢が、徹底して音楽に反映され、作品はやつれるほどに絞られて、そこからマラソン・ランナーのような力強さを放つ。音楽の持つ豊かさとは逆のベクトルを持つ彼らのサウンドは、どこかで反逆的なのかもしれない。そのあたりがロックなバルトークのイメージへと至るのか?おもしろい。どこか優等生的にも思える弦楽四重奏というスタイルを、ストイックに突き詰めて、ロックで裏切るツェートマイアーの天の邪鬼さに、大いに刺激を受けてしまう。
一方、ヒンデミットは、モダンでドライなサウンド... になる前の、表現主義的な色合いを留める4番の弦楽四重奏曲(track.6-10)。そのあたり、ツェートマイアーのストイックさとは綱引きするかのようなのだが、その引き合いが、かえって底の見えない音楽を響かせるようでもあり。どこかでロマンティックを引き摺り、弦楽四重奏という、それこそストイックな編成が、異様なスケール感を漂わせるのがおもしろい。
が、取っ付き難い... 取っ付き難いが、そこにある音は間違いなく見事に鍛えられたもので、その強靭さ、鋭さに息を呑む。だからこそ、取っ付き難い... というジレンマか?なんて、堂々巡りを頭の中でやっている内に、その魅力の虜になっていることに気付いた。

BARTÓK / HINDEMITH
ZEHETMAIR QUARTETT


バルトーク : 弦楽四重奏曲 第5番 Sz.102
ヒンデミット : 弦楽四重奏曲 第4番 Op.22

ツェートマイアー四重奏団
トーマス・ツェートマイアー(ヴァイオリン)
クーバ・ヤコヴィッツ(ヴァイオリン)
ルース・キリウス(ヴィオラ)
ウルスラ・スミス(チェロ)

ECM NEW SERIES/476 5779




パヴェル・ハース四重奏団の瑞々しさで、ヤナーチェク... ハース...

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パーカッション付き?!ハースの2番の弦楽四重奏曲の、そのパーカッション付きなあたりに衝撃を受け、何よりそのクールなサウンドにすっかり魅了されてしまい... ハースだけでなく、その師、ヤナーチェクの1番の弦楽四重奏曲も鮮やかな印象が残る、パヴェル・ハース四重奏団のデビュー・アルバム(SUPRAPHON/SU 3877-2)。その続編となれば、大いに期待してしまったのだが... ヤナーチェクの1番と、ハースの1番と3番の弦楽四重奏曲を取り上げたアルバムは、前作のインパクトが強過ぎたか、どうも物足りなく感じられて... 印象は薄く... どんなだったか?そして、今、改めて聴いてみるのだけれど...
2002年に結成されたチェコの若いクァルテットも、まもなく10年目を迎える。となれば、いつまでも「若い」ばかりではないのだろうが、その名を戴くハースと、その師、ヤナーチェクの組合せによる2つのアルバムで聴く彼らのサウンドというのは、若さなればこその瑞々しさに彩られ、とにかくフレッシュ!チェコの、それもモラヴィア地方(ヤナーチェク、ハースともに、モラヴィア地方の出身... その地に根差した音に、大いに影響を受けている... )の、多少、癖のあるトーンも、彼らの若く現代的な感性によって洗練され、クールに聴こえてしまう。で、パーカッション無しの続編なのだが... 改めて聴き直せば、前作にまったく引けを取らない!
特に、1曲目、ヤナーチェクの1番の弦楽四重奏曲、「クロイツェル・ソナタ」(track.1-4)。トルストイの同名の小説にインスパイアされた作品(列車の中で語られる、妻の不倫を知り、刺殺したという公爵の話し... )は、音楽が丁寧にその物語を追い、まるで映画のようにイメージが紡がれて印象的なのだが、パヴェル・ハース四重奏団の演奏はまたヴィヴィットで、より映像的な感性を以って作品と向き合うのか。ナチュラルにシーンが流れてゆくあたりが心地良く。鬼気迫ることの顛末と、列車が疾走する背景とを重ねる終楽章(track.4)では、ドラマとしての盛り上がりも見事に描き、スリリング。興味深いのは、まるで、その続きのようにハースの1番の弦楽四重奏曲(track.5)が取り上げられること。やはり、同郷の師弟。無理なくつながってしまうあたりがおもしろい。
クラシックで、弦楽四重奏で... となると、やっぱり堅苦しさがある。その堅苦しさを、パーカッションで煙に巻いたのが前作だったが、パーカッション無しで、本来の姿で真っ向勝負を掛けた続編は、彼らの瑞々しさ、鮮やかさを再確認させられ、クラシックで、弦楽四重奏で... の、堅苦しさを、一瞬、忘れさせてくれるものだった。
しかし、弦楽四重奏というのは、おもしろい。色の数が少ない中で、如何に絵を描くか?作曲家のイマジネーションが試され、また、それを如何に音にしてゆくか、それぞれのクァルテットの個性は際立ち。一見、ミニマムな世界のようでいて、マキシマム!

JANÁČEK: STRING QUARTET NO. 1, HAAS: STRING QUARTETS NOS 1 & 3 PAVEL HAAS QUARTET

ヤナーチェク : 弦楽四重奏曲 第1番 「クロイツェル・ソナタ」
ハース : 弦楽四重奏曲 第1番 嬰ハ短調 Op.3
ハース : 弦楽四重奏曲 第3番 Op.15

パヴェル・ハース四重奏団

SUPRAPHON/SU 3922-2




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