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ベートーヴェン、覚醒... [2011]

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Virgin CLASSICSからのモーツァルトの交響曲集(Virgin CLASSICS/234868 2)で、強烈なインパクトをお見舞いされたジェレミー・ローレル率いる、フランスの次世代ピリオド・オーケストラ、ル・セルクル・ドゥ・ラルモニ。その向こう見ずなモーツァルトに、クラシックもここまで来ましたか?!と、感慨やら、中てられるやら、どうリアクションを取るべきか、戸惑ってしまうほどだったのだけれど、今度はambroisieからベートーヴェンの交響曲をリリース。1番の交響曲をメインに、ベートーヴェンが「ベートーヴェン」へと覚醒する1800年代にスポットを当てる興味深い1枚、"BEETHOVEN the biarth of a master"(ambroisie/AM 204)。
フランスの次世代が、ピリオドのフィールドで、どんなベートーヴェンを聴かせてくれるのだろうか?やはり、強烈なインパクトで攻めて来るのか?興味津々で聴いてみる。

確かなテクニックに支えられたキレ味の鋭さ、若さが生み出す瑞々しさ...
そういう点で、期待通りの演奏。だが、好悪分かれるギリギリのラインを窺うようなところは無い... そうした点で、ちょっと、肩透かしを喰らったような気分にもなるのだが(あのモーツァルトに捉われ過ぎか?)。丁寧に聴いてみれば、ル・セルクル・ドゥ・ラルモニのメンバーひとりひとりの巧さ、一糸乱れぬアンサンブルに感じ入ってみたり。いや、そのそつ無くまめられたサウンドに、ピリオド界の「現代っ子」っぷりを見るよう。
悪戦苦闘しつつピリオド奏法を開拓して来た第1世代にはない感覚を持つル・セルクル・ドゥ・ラルモニ。彼らには、ピリオドならではの癖を味として... あるいは灰汁の強さで押し切る... さらにはモダンとの違いで弾き倒す... そうした、ある種の強引さがない。あまりに当たり前にピリオド楽器と向き合い、自らのものとし、揺るぎなく、ナチュラルに音楽を紡ぎ出す。モーツァルトでは、とにかく強烈なインパクトで驚かされたのだが、ベートーヴェンでは、無理することなく、やるべき仕事をきっちりこなし、なおかつそれが音楽として生気に溢れ、ピリオドであるなし、ベートーヴェンであるなしすら越えて、聴く側を真摯に魅了することに驚かされる。ピリオドとして、まったく気負いの無い、ナチュラル・ボーン・ピリオドの圧巻!
という、ローレル+ル・セルクル・ドゥ・ラルモニが綴る、"BEETHOVEN the biarth of a master"。ベートーヴェンが、今、我々が思い描く"master"の姿(かの、頭モジャモジャのポートレートのような?)に覚醒する頃、1800年代... バレエ『プロメテウスの創造物』(1801)の序曲に始まり、オペラ『レオノーレ』(1805)からのアリアに、ヴァイオリンとオーケストラによる2番のロマンス(1802)といった多彩な作品が取り上げられ、最後に1番の交響曲(1800)。こういう括りでベートーヴェンを聴くのは初めてで、とても新鮮!また、ローレル+ル・セルクル・ドゥ・ラルモニは、18世紀から19世紀へとうつろう瞬間を繊細に追い... モーツァルトの死(1791)からまだ間もない頃を、より古典派的なトーンで浮かび上がらせつつ、気鋭の存在として注目を集めていた若きベートーヴェンの自信に満ちた姿と、「ベートーヴェン」としての一歩を、そこはかとなく滲ませる。そのヴィヴィットな音楽の姿は、激動の真っただ中の、未だ方向性が定まらない19世紀初頭の空気感をリアルに捉えるようで、初々しさすら感じ。これまでとは一味違うベートーヴェン体験をもたらしてくれるよう。
そんな"BEETHOVEN the biarth of a master"を彩るソリストたちも忘れるわけにはいかない... 2番のロマンス(track.4)でソロを聴かせてくれるル・セルクル・ドゥ・ラルモニのコンサート・マスター、ジュリアン・ショーヴァンのヴァイオリンが美しく... これまでも(例えばハイドンのコンチェルト... )、すばらしい演奏を楽しませてくれてはいたけれど、ベートーヴェンのロマンスの、モーツァルト調の愉悦に包まれた、この上なくたおやかでメローなあたりを、きっちりノン・ヴィブラートで、センチメンタルに、伸びやかに、夢見心地の美音で歌い上げるあたり、また格別!いや、ベートーヴェンのコンチェルトが聴きたくなってしまう。それから、3つのアリアを歌う、アレクサンドラ・コクのクラッシーなソプラノも印象的で、ベートーヴェンの古典派としての端正なメロディには絶妙... 特に、シェーナとアリア「ああ、不実なものよ」(track.5)では、18世紀的荘重さの中に感情の起伏の激しさを乗せ、聴き応え十分!メインの1番の交響曲を聴く前に、しっかりと楽しませてくれる。
最初こそ肩透かしなんても思ったが、"BEETHOVEN the biarth of a master"は、予想以上の魅力が詰まった1枚だった。何より、ガツンと分かり易く個性を際立たせるのではない、ローレル+ル・セルクル・ドゥ・ラルモニのそつの無さ... 18世紀から19世紀へのうつろいの、一筋縄でいかない繊細な時代を、飄々と活写してしまう姿は、クール!これまで以上に、彼らの存在を注視せずにはいられなくなる。

BEETHOVEN the biarth of a master Le Cercle de l'Harmonie J. Rhorer

ベートーヴェン : バレエ 『プロメテウスの創造物』 Op.43 序曲
ベートーヴェン : オペラ 『レオノーレ』 より アリア 「おお、私があなたと一緒になれたら」 *
ベートーヴェン : シェーナとアリア 「いいえ、心配しないで」 WoO.92a *
ベートーヴェン : ロマンス 第2番 ヘ長調 Op.50 〔ヴァイオリンとオーケストラのための〕 *
ベートーヴェン : シェーナとアリア 「ああ、不実な者よ」 Op.65 *
ベートーヴェン : 交響曲 第1番 ハ長調 Op.21

アレクサンドラ・コク(ソプラノ) *
ジュリアン・ショーヴァン(ヴァイオリン) *
ジェレミー・ローレル/ル・セルクル・ドゥ・ラルモニ

ambroisie/AM 204




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