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大軍隊協奏曲。 [2007]

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もう、昔のようには行かない。今、あらゆる場面で言えること。
そして、クラシック... その権威もすっかり失せてしまい、もちろん、昔のようには行かない。が、そんなクラシックが新しい?権威が失せて、ステレオタイプは崩れ、クラシックの多様性が今さらながらに許容され始める?しゃっちょこばるばかりがクラシックにあらず!ドアティの作品を聴いて、そんなことをふと思う。そして、ドアティの劇画の世界から、オッフェンバックの戯画の世界へ... 19世紀のB級は、21世紀に一級のエンターテイメントに!
2007年にリリースされた、マルク・ミンコフスキと、彼が率いるフランスのピリオド・オーケストラ、レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルによるオッフェンバックの管弦楽作品集、"OFFENBACH ROMANTIQUE"(ARCHIV/477 6403)を聴き直す。やっぱり、オッフェンバックはおもしろい。

かつてはB級で通っていたオッフェンバックだったが、前世紀末あたりから、そのB級感こそがリスペクトされ... アーノンクール、ミンコフスキらが積極的に取り上げたことで、オッフェンバック・ルネサンスを迎えることに。そこで知る、オッフェンバックのおもしろさ!19世紀、パリを席巻し、ヨーロッパ中で人気を博したその音楽は、間違いなく運動会用の音楽ではない。意外にも古典(古代ギリシアに、グルックに... )を器用に引っ張り込んで、相当にシニカルに社会をブった斬って、おとぼけなメロディで、ハイ・テンションなリズムで、聴く者を圧倒する。クラシックのステレオタイプからは外れる音楽... これもまた、クラシック。で、ミンコフスキ+レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの"OFFENBACH ROMANTIQUE"なのだが...
始まりは、オッフェンバックを象徴する"天国と地獄"、『地獄のオルフェ』序曲。トンデモ離婚劇、『地獄のオルフェ』の名場面をつないで、最後は運動会でお馴染みの... いいとこ取りの、ある意味、オッフェンバックのカタログのような序曲は、軽いアペリティフに過ぎない。"OFFENBACH ROMANTIQUE"の目玉は、何と言ってもチェロとオーケストラのための大協奏曲「軍隊協奏曲」(track.2-4)!
オッフェンバックは、作曲家として成功する以前、チェロのヴィルトゥオーゾとして活躍していた... ということを垣間見せる、ヴィルトゥオージティに溢れた、見事なチェロ協奏曲。さらに、「大協奏曲」というだけあって、40分強の大作!いや、あの軽妙洒脱なオペラ・ブッフを次々と繰り出した作曲家が、こういう規模のコンチェルトを書いていたことに、まず驚かされる。そして、アルバムのタイトル、"OFFENBACH ROMANTIQUE"にある通り、チェロがロマンティックに印象的に歌い... 2楽章、緩徐楽章(track.3)は、特にロマンティック!ロマン派の作曲家たちにまったく負けていない... が、やはりオッフェンバックはオッフェンバック。サブタイトル「軍隊協奏曲」とある通り、軍隊の軽快なあたりも含め、表情豊かな音楽を繰り広げる。それは、リヒャルト・シュトラウスの「ドン・キホーテ」のような雰囲気もあり、どこかユーモラスで、物語めいていて、イマジネーションはより広がり。これはひとつのオペラなのかも?そこに、オッフェンバックならではのキャッチーさがあちこちに散りばめられ、人懐っこく。チェロの超絶技巧もあり、聴き応え十分のエンターテイメントに仕上がっている。
そのエンターテイメントをすばらしい演奏で盛り上げるジェローム・ペルノーのチェロがすばらしい!チェロのヴィルトゥオーゾが作曲しただけに、チェリストとしては一筋縄ではいかないコンチェルトだとは思うが、ペルノーのテクニックは、気持ちいいぐらいに超絶技巧をクリアし、丁寧に作品を捉え、ヴィヴィットに歌う。そして、聴かせ所は、終楽章(track.4)のペルノーによるカデンツァ!小太鼓を伴奏に、チェロの超絶技巧が繰り出される、シュールなサウンドの妙!これぞオッフェンバックのエスプリ!ペルノーのウィットに脱帽。派手に立ち回ることはせず、作品に寄り添うペルノーの演奏は、カデンツァのみならずウィットに富み、40分強の大作をまったく飽きさせない。そこに、ミンコフスキ+レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの活きのいい演奏が繰り広げられ、文句無し!いや、改めて"OFFENBACH ROMANTIQUE"を引っ張り出して聴いてみれば、レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの巧さに魅了されてしまう。そこに、ミンコフスキ流のテンションの高さと、目ざとく作品のおもしろさをついてくる巧みさがあり。他の指揮者、他のオーケストラでは、こうはならないだろう... という、密度の濃さが、作品に本物の輝きをもたらしている。で、こんなにもおもしろい作品だった?と、聴き直して、今さらながらに思う。
さて、大作の後には、「ホフマンの舟歌」のメロディに彩られた『ラインの妖精』序曲(track.5)など、オペラからの管弦楽曲が並ぶのだが、やはりオッフェンバックの真骨頂はオペラそのものであって、アルバムの最初の『地獄のオルフェ』序曲もそうなのだが、物足りなさは否めない。

OFFENBACH ROMANTIQUE
LES MUSICIENS DU LOUVRE | MARC MINKOWSKI


オッフェンバック : オペラ・ブッフ 『地獄のオルフェ』 序曲
オッフェンバック : チェロとオーケストラのための大協奏曲 「軍隊協奏曲」 *
オッフェンバック : オペラ 『ラインの妖精』 より 序曲/バレエ/グランド・ワルツ
オッフェンバック : オペラ・フェリ 『月世界旅行』 より 雪片のバレエ

ジェローム・ペルノー(チェロ) *
マルク・ミンコフスキ/レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル

ARCHIV/477 6403




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