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ハイパー"ワールド"ミュージック。 [2011]

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キンモ・ポホヨネンという人は知らないが、クロノス・クァルテットなら知っている!
ということで、手に取ったアルバム、"UNIKO"(ONDINE/ODE 1185)。フィンランドのアコーディオン奏者、キンモ・ポホヨネンと、異能の現代音楽スペシャリスト集団、クロノス・クァルテットによるコラヴォレーション... クロノス・クァルテットのことだから、また刺激的な、おもしろいことをしているに違わないのだろうけれど、フィンランドのアコーディオンというものが、まったく見当付かず、どんな音楽になるのだろうと、おっかなびっくりだったのだが... やっぱり刺激的!ワールド?コンテンポラリー?ロック?ジャズ?タンゴ?掴みどころのない音楽の姿がそこにあるのだけれど、そのサウンド自体はキャッチー!やっぱり、クロノス・クァルテットはおもしろい... いや、この場合、ポホヨネンの希有なセンスの炸裂と言うべきか...

で、キンモ・ポホヨネンとは... 何者?!
というところから始めねばならなかったのだけれど... 調べれば、調べるほど、よくわからない。アコーディオンという、地味目な楽器の使い手ながら、彼が挑んでいる音楽は一筋縄ではゆかず。また、様々なジャンルのアーティストたちとコラヴォレーションを重ねているようで、その豪華な面々にも驚き。で、その表現は、アコーディオンに限らず、歌ってしまう?踊ってしまう?さらには、アート・パフォーマンスのようなものまであって、凄まじい。が、一応、ジャンルとしては、ワールド・ミュージックの人。という認識が日本では通っている?みたいなのだけれど、"UNIKO"から聴こえて来るサウンドというのは、「ワールド・ミュージック」と安易に説明できたものではない。ONDINEではこのアルバムを、クロスオーヴァー/ジャズと位置付けているのだけれど、クロスオーヴァー?というレベルでなく、突き抜けていて... ジャズ?そんな洒落たものでもなく...
アコーディオンに、弦楽四重奏という、古風な響きの一方で、変幻自在に繰り出されるサムリ・コスミネンによるサンプリング、プログラミングが冴え、ポホヨネンの独特のセンスを増幅し、"UNIKO"を他では体験し得ない音楽世界にまとめ上げる。激しく刻まれるリズムは、トルコのような、東欧のような、オリエンタルな気分を漂わせてダンサブル。ポホヨネンのヴォイス・パフォーマンスは、声明のようであり、刺激的なアクセントになって。また、ポホヨネンのアコーディオンが切れ味鋭く歌えば、タンゴ調にも聴こえ。クロノス・クァルテットのエッジの効いた弓捌きを聴けば、それはもう近代音楽であり、現代音楽であり。それらを総合すれば、ロックのようなエモーショナルさに満ち、ただならず惹き込まれる。そのエモーショナルさの端々には、土臭さが漂い。大地に根差した底知れなさ、パワフルさを見出しつつ、既存のジャンルからジャンプする最新鋭のロケット(打ち込み... )も装備していて、ハイパー・ワールド・ミュージック?間違いなく「ワールド」なスケール感で繰り広げられる恐るべき音楽は、圧巻。
一見、何かのようで、けしてそれは、その何かではない。掴みどころのない雑多さが、単に雑多で終わることなく、圧倒的な推進力で、うねりとなって聴く者を呑み込み。ポホヨネンという強烈なセンスが牽引するサウンドに、心を掻き乱される思い。激しく掻き乱されながら、最後、Avara(track.7)では、また感動的だったりで。何か、ポホヨネンにやられっぱなしの1枚。そして、これこそが、リアルな現代の音楽としての「現代音楽」な気がして来る。
21世紀、どんなに技術が高度に発達したとしても、人間そのものは生々しく生き続けているわけで、その何とも言えない危ういバランスが、世界中にありとあらゆる歪みを生み。それを、連日、ニュースなんかで目の当たりにすると、妙に息苦しく感じてしまったり。それでも、高度な技術は必要で、人間が生きる上で生々しさは性であって。断ち切れぬ歴史(クラシック?)、伝統(トラッド?)に、最新鋭(サンプリング、プログラミング... )の響きが絡み付き、混然一体となって、存在感を放つ、"UNIKO"。当分、この衝撃から立ち直れそうもない。
恐るべし、ポホヨネン!見事、コスミネン!

UNIKO Kronos Quartet ・ Kimmo Pohjonen ・ Samuli Kosminen

ポホヨネン & コスミネン : Utu
ポホヨネン & コスミネン : Plasma
ポホヨネン & コスミネン : Särmä
ポホヨネン & コスミネン : Kalma
ポホヨネン & コスミネン : Kamala
ポホヨネン & コスミネン : Emo
ポホヨネン & コスミネン : Avara

キンモ・ポホヨネン(アコーディオン、ヴォイス)
サムリ・コスミネン(サンプリング、プログラミング)

クロノス・クァルテット
デヴィッド・ハリントン(ヴァイオリン)
ジョン・シェルバ(ヴァイオリン)
ハンク・ダット(ヴィオラ)
ジェフェリー・ツァイクラー(チェロ)

ONDINE/ODE 1185




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