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Combattimenti ! [2011]

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ここのところ、古楽のリリースが減っている?
いや、サヴァールの"DINASTIA BORJA"(Alia Vox/AVSA 9874)を聴いたばかりではあるのだけれど... それこそ気を吐いているのは、自身でレーベルを持つサヴァールくらい?は、ちょっと極端な見方かもしれないが、以前に比べると、間違いなく、古楽は勢いを失っているように感じてならない。
そんなことをふと思ったのが、ル・ポエム・アルモニークの久々のリリース。Alphaの主力アンサンブルにして、センスの良いアルバムをコンスタントに届けてくれていた彼らだったが、前作、"FIRENZE 1616"(Alpha/ALPHA 120)からは、いつのまにやら3年も空いてしまって... そうか、そんなにも彼らのアルバムを聴いていなかったのかと、変に噛み締めてしまう最新盤。モンテヴェルディとマラッツォーリの作品による"Combattimenti !"(Alpha/Alpha 172)を聴く。

モンテヴェルディ(1567-1643)のマドリガーレ集、第8巻から、『タンクレーディとクロリンダの戦い』と、マラッツォーリ(ca.1602-62)のインテルメディオ『ファルファの市場』を中心に、初期バロック、オペラ黎明期における、マドリガーレから音楽劇へ... という流れを、さり気なく追う"Combattimenti !"。新しいスタイルが模索された時代、まだまだ形の定まらないオペラ(ここで取り上げられる作品は、「オペラ」とは言い切れないものだが... )の自由闊達な姿に、とにかく魅了されずにはいられない。ルネサンスのスタイルから大きく逸脱し、バロックのスタイルが未だ確立されていない、過渡期、初期バロック... それまでと、これからのスタイルから解放されたような自由さ、スタイルそのものに囚われない率直な音楽の姿に、改めて驚かされてみたり。そして、そういう姿が、現代に通じるセンスを秘めているようで、何ともヴィヴィッド!
1曲目、マドリガーレ「今や天も地も、そして風さえも押し黙り」(track.1, 2)、続く「ニンファの嘆き」(track.3-5)の沈鬱な音楽から、『タンクレーディとクロリンダの戦い』(track.6, 7)の悲劇へと盛り上げられてゆくあたりが見事で... マドリガーレの多声が、やがて単声へとよられてゆくような、ドラマが煮詰まってゆく展開が印象的。また、タンクレーディを歌うヤン・ヴァン・エルサッカー(テノール)のレチタール・カンタンド(初期バロックには欠かせない「歌いながら語る」... )が、何とも魅惑的で、影を帯びつつ複雑な感情を紡ぎ、白熱のドラマを繰り広げ、惹き込まれる。のだが、"Combattimento(戦い)"で、感情が頂点に達した後で、一転、他愛の無い市場の風景を描く、マラッツォーリのインテルメディオ『ファルファの市場』(track.8-11)というのが、絶妙。悲劇から、良い意味で脱力し、モンテヴェルディの音楽をパロディとして用いたり、すっかり、楽しませてくれる。
いや、見事な構成!これまで知ることの無かった作品を目ざとく拾い上げ、巧みに取り上げ、トータルでセンスの良い、ル・ポエム・アルモニークならではの仕上がり。マドリガーレから入って、するするっとオペラへと近付きつつ、悲劇から笑劇へ... 大胆なコントラストを描いてしまうその器用さ。丁寧に作品と向き合い、ひとつひとつの響きを大切に生まれるバランスの良さが、レチタール・カンタンドの鋭さを、興を削ぐことなく、音楽としてのやわらかさ、艶やかさを大事に、ナチュラルな響きにまとめてしまう。まったく以って、彼らならでは... 特異な音楽性があってこそ成せる技。「クラシック」というイメージが出来上がってしまう以前の音楽の、剥き出しの魅力を、こんな風に素敵に響かせてしまうことが驚きだ。そして、粒ぞろいの歌手たち、演奏家たちが織り成す初期バロックの、何と豊かな響き!初期バロックのイメージが変わるよう。

Monteverdi & Marazzoli, Combattimenti !
Vincent Dumestre, Le Poème Harmonique


モンテヴェルディ : 今や天も地も、そして風さえも押し黙り
モンテヴェルディ : ニンファの嘆き
モンテヴェルディ : 『タンクレーディとクロリンダの戦い』
マラッツォーリ : インテルメディオ 『ファルファの市場』

ヴァンサン・デュメストル/ル・ポエム・アルモニーク

Alpha/Alpha 172




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