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for Solo Violin. [2011]

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レーガーのヴァイオリン協奏曲を日本初演(2003年の話し... )!と意気込むヴァイオリニスト... となれば、相当にマニアック。が、それが、クラシックの最も華やかな場所にいる若手ヴァイオリニストだとすれば?タダモノではない。庄司紗矢香。DGから、ヴァイオリンを弾くお人形さんのようにデビューした天才少女... けれど、その音楽性は、そんな類いのものではなく、実際に、その演奏に触れると、本当にタダモノではないことを思い知らされる(結局、そういう恐るべき特性をDGは活かせなかったよな... )。という彼女も、「若手」の域からそろそろ離陸するか?ラ・フォル・ジュルネを繰り出す気鋭のプロデューサー、ルネ・マルタンが主催するMIRALEからアルバムをリリース!レーガーの無伴奏ヴァイオリンのための前奏曲とフーガと、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータを組み合わせた、異色の2枚組(MIRARE/MIR 128)を聴く。

無伴奏ヴァイオリンによる、レーガー(1873-1916)の作品と、バッハ(1685-1750)の名作と並べてしまったら... という大胆な構成だが、ロマン派の末期(取り上げられる作品は20世紀に入ってからのもの... )にあって、バッハ以来のドイツの伝統をベースとしたレーガーだけに、その復古典主義的な音楽は、思っていた以上にバッハの音楽としっくりくる。そこに、「無伴奏ヴァイオリン」というストイックな響きもあって、レーガーからバッハへ... と、続けて演奏されると、その境界はぼやけ、ひとつに融けてしまうような印象も。いや、レーガーの作品からバッハの名作に入ってゆくと、バッハの音楽にロマンティックな色合いが滲み、いつもよりヴィヴィットに感じられる?それでいて、ヘヴィーにも... どこか、既存のイメージが狂ってくるような、そんな感覚も味わう。ただ、それは、レーガーとバッハを並べたからではなく、庄司紗矢香という、希有な存在があってこそなのかもしれない。
レーガーにしろ、バッハにしろ、基本的に、もの凄く真面目な音楽だと思う。頑強と言ってもいいかもしれない。そういう音楽に真正面からぶつかって、そのまま音にしてゆく力強さ。そこに生真面目さを感じつつ、そこにこそ真髄が現れもし。結局のところ、レーガーだ、バッハだ、関係なく、「無伴奏ヴァイオリン」というストイックさもあって、音楽の最も根源的な世界へとリンクしてゆくような、そんな感覚を味わう2枚組。庄司紗矢香、改めてタダモノでないということを再確認させられる... 再確認して、思うことは、純芸術音楽のパワー!
近頃、「芸術」という言葉をあまり聞かないような気がする。一方で、「アート」という言葉に関しては聞かない日はないように思う。「芸術」という堅苦しさは嫌われ、「アート」的な、軽く、親しみやすいことが好まれ、何より分かり易いことを是とする昨今。それもまた時代の流れで、仕方のないことかもしれない。が、この2枚組で味わう感覚というのは、そうした点で、極めて反動的なのかもしれない。純芸術音楽の、最も濃厚なるものを響かせてくる。ならば、聴く人を選ぶ音楽なのか?というと、けしてそうではない。庄司紗矢香の凄いところは、本物の「芸術」だからこそ、どんな人に対しても、圧倒的な説得力を以って迫ってくるところ。その生半可でないあたりが、頑強なドイツ精神をも、普段とは違うものに変えてしまいそう。やっぱりこの人が紡ぎ出す音というのは、ただならない。それは、音楽の原初の姿を、無意識に体現しているような... ある種の霊媒?巫女的な感覚?そんな響きで。そういう響きに触れていると、心の奥底に沈んでいた感情が逆巻き始め、日常を凌駕する音楽体験をもたらしてくれるような。2枚組を聴き終えての心地が、何とも言えない。
その最後、2枚組を締め括るバッハのシャコンヌ(disc.2, track.6)。久々に聴いたからか、心が大きく揺さぶられる思い。日本の半分もが大きく揺れ、未曾有の震災を目の当たりにし、復興への足音は聞こえつつあっても、誰もが心許無く、未だ惑っている。そうした中に響くシャコンヌは、圧倒的で、心に届いて、浄化をもたらしてくれるよう。そういうことを見越して録音されたようにすら感じてしまう。

聴く側に媚びることなく、聴く側に有無も言わさない存在感。純芸術音楽の底知れぬパワーを示した2枚組。今、社会は、もう一度、生真面目な方向へと向いていいように感じる。

Bach - Reger. Sonatas, partitas, préludes & fugues Sayaka Shoji / violin

レーガー : 無伴奏ヴァイオリンのための前奏曲とフーガ 第2番 ト短調 Op.117
バッハ : 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第1番 ト短調 BWV 1001
レーガー : 無伴奏ヴァイオリンのための前奏曲とフーガ 第1番 ロ短調 Op.117
バッハ : 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第1番 ロ短調 BWV 1002
レーガー : 無伴奏ヴァイオリンのための前奏曲とフーガ 第4番 ト短調 Op.117 「シャコンヌ」
バッハ : 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 ニ短調 BWV 1004

庄司 紗矢香(ヴァイオリン)

MIRARE/MIR 128




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