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冬、熱い?ヴィヴァルディ... [2010]

今、最も多く、オペラの全曲盤がリリースされる作曲家は誰だろうか...
もしかして、ヴィヴァルディ?そう思えてしまうほど、ヴィヴァルディのオペラは、コンスタントにリリースされ続けている。で、そうした状況に驚かされる。ヴェルディではなく、ヴィヴァルディなのだ... 普遍を謳っているはずのクラシックも、思っている以上にうつろっている。のかもしれない。
ということで、この冬、実は、ヴィヴァルディのオペラがかなり熱い。もちろん、ヴェルディではないので、派手に注目されることは無いのだけれど... イタリア・ピリオド界が誇る2大アンサンブルが、ヴィヴァルディのオペラの全曲盤でぶつかる、密かに驚愕の事態!まず、ファビオ・ビオンディ率いる、エウローパ・ガランテが、ゴージャスにもスターたちを結集して挑んだ、オペラ『テルモドンテのエルコレ』(Virgin CLASSICS/6945450)。そして、現代におけるヴィヴァルディ演奏の伝説、ジョヴァンニ・アントニーニ率いる、イル・ジャルディーノ・アルモニコが、とうとうオペラの全曲盤に挑んだ、オペラ『離宮のオットーネ』(naïve/OP 30493)を聴く。


エルコレ、マニフィーク・ヴィヴァルディ。

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『バヤゼット』(Virgin CLASSICS/5 45676 2)に続く、ビオンディ+エウローパ・ガランテによるヴィヴァルディのオペラの全曲盤、『テルモドンテのエルコレ』。まず驚かされるのが、そのキャスティング... ヴィラゾン(テノール)、チョーフィ(ソプラノ)、ダムラウ(ソプラノ)、ディドナート(メッゾ・ソプラノ)、ジュノー(メッゾ・ソプラノ)、ジャルスキー(カウンターテナー)と、EMI/Virgin CLASSICSが誇る歌手たちが結集されて、レーベルの威信を掛けた?とも思える、ゴージャス極まりない布陣。かつ、バッソ(メッゾ・ソプラノ)、レーティプー(テノール)といった、naïveの"VIVALDI EDITION"に欠かせない歌手も招き、まったく隙がない。
そうした中、気になるのが、タイトルロール、エルコレ(=ヘラクレス)を歌うヴィラゾン... ピリオドのフィールドに本格参戦(ヘンデルのアリア集などをリリースしてはいるが... )というあたり、多少、不安もあったのだけれど、下手に気負うことなく、スター、ヴィラゾンそのままにヴィヴァルディを歌って、様になってしまっていて。すると、エルコレの野卑なトーンも孕んでの輝かしさ、勇ましさは際立つようで、ピリオドのフィールドで活躍している歌手たちに囲まれ、かえってヴィラゾンのカラーが活き、この全曲盤にいい具合にアクセントとなっているから、おもしろい。それにしても、歌の饗(競)宴!である。ヴィラゾンばかりではない、いや、それ以上に、それぞれの歌い手たちが見事なテクニックを披露し、また、それぞれの持つカラーが見事に映えて、バロック・オペラの典型的なナンバー・オペラではあるけれど、ひとつひとつのアリアが生気に充ち、ただならない。また、そこには、このオペラに対するビオンディの並々ならぬ思いも滲むようであって...
『テルモドンテのエルコレ』は、ヴィヴァルディ、絶頂期の1723年、ローマで初演され、大成功した作品だが、そのスコアは後に散逸... 近年、そのパーツの数々が再発見され、復元の試みがなされている。そして、ビオンディ自らも、改めて散逸したスコアを求め、復元作業を試み、この録音に至ったとのこと。そして、その演奏には、ヴィヴァルディの絶頂期、バロック音楽の最も輝かしい時に思いを馳せ、蘇らせようとする熱意が漲り、始まりのシンフォニアから圧巻。ヴィヴァルディをより華やかに、よりリッチに響かせて、スターたちは居並び、花火が次から次へと打ち上げられるかのような展開に、バロック期、オペラハウスを熱狂させたヴィヴァルディ・サウンドを、21世紀の今に、追体験させてくれるかのよう。

EUROPA GALANTE FABIO BIONDI VIVALDI ERCOLE SUL TERMODONTE

ヴィヴァルディ : オペラ 『テルモドンテのエルコレ』 RV.710

アンティオペ : ヴィヴィカ・ジュノー(メッゾ・ソプラノ)
イッポリタ : ジョイス・ディドナート(メッゾ・ソプラノ)
オリツィア : パトリツィア・チョーフィ(ソプラノ)
マルテシア : ディアナ・ダムラウ(ソプラノ)
エルコレ : ロランド・ヴィラゾン(テノール)
テゼオ : ロミーナ・バッソ(メッゾ・ソプラノ)
アルチェステ : フィリップ・ジャルスキー(カウンターテナー)
テラモーネ : トピ・レーティプー(テノール)
サンタ・チェチーリア室内合唱団
ファビオ・ビオンディ/エウローパ・ガランテ

Virgin CLASSICS/6945450




オットーネ、アヴァン・ヴィヴァルディ...

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誰もが知る、名曲、「四季」(TELDEC/4509-90850-2)では、それまでのヴィヴァルディ像を過激に破壊し、バルトリが歌うヴィヴァルディのアリア集(DECCA/466 569-2)では、それまであまり触れられることの無かったオペラの大家としてのヴィヴァルディ像を鮮烈に打ち出して... 90年代以降、バロック・ロックなヴィヴァルディはクール!というモードを牽引して来たアントニーニ+イル・ジャルディーノ・アルモニコ。このイタリア・ピリオド界の革命児たちが、ゼロ年代以降、ヴィヴァルディ録音の中心となったnaïveの"VIVALDI EDITION"から、とうとうオペラの全曲盤をリリース!となれば、期待せずにはいられない。またそれが、ヴィヴァルディにとっての初めてのオペラ、『離宮のオットーネ』というから興味深い。
"VIVALDI EDITION"からのオペラの全曲盤は、『離宮のオットーネ』が11作目(で、いいのかな?)。となると、すでに、いろいろなヴィヴァルディのオペラを楽しんで来たわけだ。かつ、ヴィヴァルディのオペラのカラーも何となく見出せてきたように思う。そうしたところから聴く、ヴィヴァルディの最初のオペラというのは、とても新鮮... 94ものオペラを作曲したと豪語しているヴィヴァルディだが、1713年に初演された『離宮のオットーネ』には、その後の海千山千のヴィヴァルディのオペラとは違う、慎重さのようなものが聴き取れて、初々しく。またそこに、真剣にオペラと向き合っての充実感もあるようで、予想以上に聴かせる仕上がり。絶頂期の『テルモドンテのエルコレ』の後で聴けば、よりそんな風に感じられて、おもしろい。また、アントニーニ+イル・ジャルディーノ・アルモニコも、このオペラのそうした初々しさを拾い上げて、丁寧な演奏が印象的。
ピリオドとしてのキレ、エッジの鋭さはそのままだが、楽器、ひとつひとつの、何気ない響きを大切に、ひとつひとつのシーンを繊細に紡いで、『離宮のオットーネ』の初々しさを、美しさに昇華させる。またそこには、ピリオドのフィールドで活躍する実力派のキャストたちによる、丁寧な仕事ぶりが光っていて... プリーナ(コントラルト)、カンジェミ(ソプラノ)、レージネヴァ(メッゾ・ソプラノ)、インヴェルニッツィ(アルト)、レーティプー(テノール)と、確かな歌手たちによる手堅いアンサンブルは、レチタティーヴォに至るまで、活き活きと仕上げられ、思いの外、魅了さてしまう。
それにしても、尖がるばかりでなく、まろやかに、豊かな音楽性で以って、ヴィヴァルディを奏でるアントニーニ+イル・ジャルディーノ・アルモニコの姿には驚かされ、彼らがまた新たな次元へと旅立ったことをさらりと印象付ける。そのさり気なさに、してやられた感もあり。だからこそ、コンスタントに彼らの演奏を聴きたいのだけれど... 彼らのホームたる、DECCAのピリオド・ライン、L'OISEAU-LYREは、どうなってしまうのだろう?

Vivaldi Ottone in villa

ヴィヴァルディ : オペラ 『離宮のオットーネ』 RV.729

オットーネ : ソーニャ・プリーナ(コントラルト)
カイオ・シリオ : ユリア・レージネヴァ(メッゾ・ソプラノ)
クレオニッラ : ヴェロニカ・カンヘミ(ソプラノ)
トゥッリア : ロベルタ・インヴェルニッツィ(アルト)
デチオ : トピ・レーティプー(テノール)

ジョヴァンニ・アントニーニ/イル・ジャルディーノ・アルモニコ

naïve/OP 30493




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