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バロック三大テノール。 [2010]

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「三大テノール」といえば、お馴染みの、あの3人だ。が、そんなお馴染みの「三大テノール」から時代を思いっきり遡って、18世紀、バロック期に活躍した「三大テノール」を取り上げる、イアン・ボストリッジ(テノール)の新しいアルバム、"THREE BAROQUE TENORS"(EMI/6 26864 2)。これまでも、バロック期に活躍したスター歌手をフィーチャーするアルバムはいくつかあったが、それらは、どれも伝説のカストラートたちで... やっぱり、バロックというとカストラートのイメージが強い。そうした中で、テノールという視点が何とも新鮮!
モデナの音楽一家に生まれ、イタリアでキャリアを積み、ウィーンで活躍、その後、ロンドンへと渡ったフランチェスコ・ボロジーニ(ca.1688-ca.1750)。ボローニャの出身で、ローマでデビューし、ヴェネツィア、ナポリというオペラ最先端の場で活躍した後、ロンドンへと渡ったアンニバーレ・ピオ・ファブリ(1697-1760)。王室礼拝堂の聖歌隊から、やがて国際音楽都市、ロンドンで、オペラにオラトリオと活躍したイギリス人、ジョン・ビアード(ca.1717-91)。元祖?「三大テノール」たちの活躍にスポットを当てた"THREE BAROQUE TENORS"を聴く。

カストラート一辺倒だったバロックの時代に、脇役ではなく、スターとして劇場を魅了した3人のテノール、ボロジーニ、ファブリ、ビアード。今となっては、テノールこそスターだが、パヴァロッティ、カレーラス、ドミンゴへと繋がるテノール=スターの系譜の始まりが、バロック期にあったとは発見だ。そして、バロックの「三大テノール」が歌ったナンバーというのは、そのまま、バロック期のオペラハウスで人気を博したナンバーだったわけで... ボロジーニがウィーンで歌ったコンティに始まり、ロンドンのヘンデル、ヴェネツィアのヴィヴァルディ、ウィーンのカルダーラ、ナポリのアレッサンドロ・スカルラッティ... "THREE BAROQUE TENORS"には、今に見るバロック像とは、多少、異なる、その当時、インターナショナルに活躍し、人気を集めた作曲家たちによるナンバーが並ぶ(となると、バッハなんてのは、当然、含まれない... のだな... )。
一方で、ビアードが歌ったイギリスの作曲家たちによるナンバーが興味深い。ルール・ブリタニアで有名なアーン(1710-78)、なかなか素敵な交響曲を残しているボイス(1711-79)、それから、ヘンデル同様にドイツからの帰化作曲家、ガリアード(ca.1666-1747)。「ヘンデル」はクローズアップされても、18世紀のイギリスの音楽そのものに触れる機会は極端に少ない中で、イギリス独自の、英語による音楽劇の一端に触れることができたのは、とても貴重な体験。18世紀、国際音楽都市として、ヨーロッパ中の音楽家を集めたロンドン(ボロジーニは1724年のシーズンに... ファブリは1729年から2シーズン、ロンドンで歌っている... )だが、その一方で、イギリスのローカルな音楽、当時のロンドンっ子たちを沸かせたナンバーというのも、魅力的だ。
と、バロック期のヨーロッパを網羅する、極めてヴァラエティに富む"THREE BAROQUE TENORS"。単なるバロックのアリア集ならば、ピリオド・ブーム以降、掃いて捨てるほどある。が、これまでと違う視点で、少し掘り下げてアリア集を綴ってみれば、当時のリアルな音楽シーンを感じることができ、新鮮!また、世界初録音のナンバーを6曲も含むという構成に、ボストリッジの意気込みを感じずにはいられない。が、流れてくるその歌声は、ちょっと単調?ボストリッジのイタリア語は、どうも英語訛り?だからか、バロックならではの灰汁の強さみたいなものに欠ける帰来が... しかし、英語で歌われるものは、見事にはまってくる!
ヘンデルの『ヘラクレス』、"From celestial seats descending"(track.3)の、情感たっぷりなあたり。アーンの『ロザモンド』、"Rise, Glory rise"(track.7)での輝かしさ!ボイスの『ソロモン』、"Softly rise, O surthern Breeze"(track.14)の流麗さ... 「バロック」となると、どうしても攻撃的ですらある超絶技巧に、ゾクっとくる艶っぽさのようなものが強調されがちだが、その点、ボストリッジはマイペース。この人ならではの軽やかさと、柔らかさを活かしきり、丁寧に、そして繊細に歌い綴る。また、その繊細さに、そこはかとなく詩情を漂わせ、やっぱり魅了される。そんな、ボストリッジを好サポートする、ベルナール・ラバディの指揮によるイングリッシュ・コンサートの演奏も、どこか朗らかで、それでいて端正。ボストリッジのトーンにしっくりとくるサウンド。

HANDEL ・ VIVALDI ・ A.SCARLATTI ・ BOYCE etc.
IAN BOSTRIDGE ・ BERNARD LABADIE


コンティ : オペラ 『ドン・キショッテ』 より "Qui sto appeso"
ヘンデル : オラトリオ 『ヘラクレス』 より "Where congeal'd the nothern streams"
ヘンデル : オラトリオ 『ヘラクレス』 より "From celestial seats descending"
ヴィヴァルディ : オペラ 『ポントスのアルシルダ王妃』 より "La tiranna e avversa sorte"
ガスパリーニ : オペラ 『バジャゼット』 より "Forte e lieto a morte andrei"
ヘンデル : オペラ 『タメルラーノ』 より "Forte e lieto"
アーン : オペラ 『ロザモンド』 より "Rise, Glory rise"
カルダーラ : オラトリオ 『ヨアズ』 より "Lo so, lo so: con periglio"
ヘンデル : オペラ 『インド王ポーロ』-D'un Barbaro scortese"
アレッサンドロ・スカルラッティ : オペラ 『アッティーリオ・レゴーロ』 より "Se non sa qual vento"
ヘンデル : オペラ 『ジューリオ・チェーザレ』 より "Scorta siate a pasi miei"
ヴィヴァルディ : オペラ 『アテナイの人々』 より "Ti stringo inquest' amplesso"
ヴィヴァルディ : オペラ 『イペルメストラ』 より "Saziero col morir mio"
ボイス : セレナータ 『ソロモン』 より "Softly rise, O surthern Breeze"
ガリアード : オペラ 『王の狩り』 より "With early horn"

イアン・ボストリッジ(テノール)
ベルナール・ラバディ/イングリッシュ・コンサート

EMI/6 26864 2




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