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秋の夜長に... [2010]

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ふと目線を上げると、街路樹が何となく紅葉し始めているようで... 気温もグっと下がり始めて、中途半端に進行していた衣替えも、さすがに答えが出る時がやって来た。そうして、秋を捉えて、気持ちもどこかで落ち着くのか、穏やかな日々を過ごせつつあるような(ま、能天気なのだろうけれど... )。で、そんな穏やかなあたりから聴く音楽というのは、より深く浸ることができるのか、いつもよりイマジネーションは広がって、感じ入るところ、多いのかもしれない。そんな季節に、たっぷりと浸れる音楽を...
ジャズと古楽(必ずしも古楽に限ったものばかりではないのだけれど... )の新たな対話が生む、ボーダーレスなアンビエント・サウンド... ヤン・ガルバレク(サックス)と、ヒリアード・アンサンブルによるコラヴォレーション、最新作、"Officium Novum"(ECM NEW SERIES/476 3855)を聴く。
まさに、秋の夜長のための1枚。

1993年、"Officium"(ECM NEW SERIES/445 369-2)のリリースは、今や伝説... ガルバレク+ヒリアード・アンサンブルのコラヴォレーションを初めて体験した時の衝撃は、未だに忘れ難い。透明なア・カペラに乗って、伸びやかに歌うサックスが、それまで味わったことのない感覚をもたらし、ただただ美しかった。中途半端にボーダーを越えるのではなく、安易な折衷でもない、新たな領域へと踏み込んだそのコラヴォレーションは、クラシックというカテゴリーにおける、理想的な越境の仕方として、先鞭を付けた1枚に... その後、"Mnemosyne"(ECM NEW SERIES/465 122-2)がリリースされ... 世紀を越えて、ついに3枚目のアルバムがリリース!いや、3枚目が来るとは、思ってもいなかった... だけに、嬉しい驚き!
という、"Officium Novum"。アルメニアの作曲家、コミタス(1869-1935)の作品で始まり、ビザンツ聖歌が続き、どこか東方的なトーンが漂う。ガルバレクのサックスも、ところどころオリエンタルな気分を漂わせ、前々作、前作とは、また趣きを異にして、魅力的。もちろん、ヒリアード・アンサンブルの透明なア・カペラ、自由に中空を舞うようなガルバレクのサックスはこれまでと大きく変わることはないのだけれど。東方教会の祈りの歌を中心にまとめて、その「東方」に、より純朴な姿を見出すのか。21世紀の荒涼とした世界で聴く「東方」は、何とも言えず、不思議に懐かしく。それでいて、前々作、前作にはない仄暗さのようなものがあって、その仄暗さに温もりを感じ、よりヒューマニスティックなのかも。で、そんなサウンドに触れていると、時間の流れがゆっくりになるようで... 忙しなかった日常から知らず知らずに切り離され、切り離された「ゆっくり」の時間中で、その「ゆっくり」を楽しむような、そんな感覚がある。秋の夜長には、これ以上のアルバムは無い。かも。
"Officium"から17年、ガルバレク+ヒリアード・アンサンブルのコラヴォレーションは、間違いなく深化している。ガルバレクのサックスは冴えているし、ヒリアード・アンサンブルのア・カペラは美しい。それでいて、互いが絶妙に共鳴してみせる。見事なコラヴォレーションであることは、"Officium"、"Mnemosyne"と、変わるところはない。が、"Officium Novum"は、より味わい深い。アンビエントなサウンドで、癒しで... という次元を越えて、味わいながら聴き、楽しむことのできる1枚に仕上がっている。

JAN GARBAREK / THE HILLIARD ENSEMBLE
OFFICIUM NOVUM


コミタス : なんという奇蹟
ビザンツ聖歌 : 不滅の神の栄光
ガルバレク : すべてのものは
ケドロフ : 連祷/リポヴァン古儀式派伝承歌 : 我らが父/作曲者不詳 : 威厳
コミタス : 聖体礼儀
ペルト : 生神女マリア
作曲者不詳/16世紀スペイン : 3人のムーア娘
コミタス : 我が心は震える
コミタス : この教会に
ペロタン : アレルヤ、乙女マリアの誉れある御誕生
ガルバレク : 我らは星々なり

ヤン・ガルバレク(サクソフォン)
ヒリアード・アンサンブル

ECM NEW SERIES/476 3855




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araiguma

オープニング映像
2010 Sep.14 "Officium Novum" World Premiere Tour, St Michaelis, Hamburg, Jan Garbarek & The Hilliard Ensemble
by araiguma (2010-10-30 18:08) 

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