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コレッリ氏、ロンドンへ... [2010]

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さて、昨年のハイドンのメモリアル、様々なハイドン関連のリリースの中で、特におもしろかったアルバムのひとつが、ギィ・ヴァン・ワース+レザグレマンの"Haydn à Paris(パリのハイドン)"(RICERCAR/RIC 277)。で、何がおもしろいかというと、パリのハイドンと言いながら、ハイドンはパリを訪れていないこと。だが、パリ・セットなる交響曲集もあるハイドン、本人は訪れていなくとも、パリでは「ハイドン」という名前が大きな意味を持っていたのだとか。というより、「ハイドン」という名前が勝手に独り歩きしだして... はてさて... という、18世紀の活き活きとした音楽シーンを活写した"Haydn à Paris"。飛行機もユーロスターも無かった時代、今とそう変わらない、インターナショナルに展開する音楽シーンの姿を垣間見せて、実に興味深かった。
そして、今年は、ロンドンを訪れていないはずのコレッリ氏が、ロンドンへ...
気鋭のリコーダー奏者、モーリス・シュテーガーによる"Mr. Corelli in London(ロンドンのコレッリ氏)"(harmonia mundi/HMU 907523)。これが、また、おもしろい!

今でこそ、「バロック」と言えば、バッハに、ヘンデル、そして、ヴィヴァルディ... てな感じなのだけれど、そういった21世紀の感覚と、バロック期、当時の感覚は、必ずしもイコールでは結べない。例えば、バロック期、バッハなどよりも、コレッリ(1653-1713)の存在は、国境を越えて、大きかった。19歳でパリでブレイクし、故郷、イタリアでも成功、ドイツでも活躍し... バロックの時代、巨匠としてその名は広く知られ、ロカテッリ、ジェミニアーニらが、コレッリの下で学んだ。で、そのジェミニアーニ(1687-1762)が、やがてロンドンへと渡り、師である巨匠、コレッリの作品を、ロンドンでのコレッリ人気のニーズに応えて、いろいろアレンジ。そんな作品の数々を集めたアルバムが、"Mr. Corelli in London"。となる。
イタリアのバロックを聴きながら、イタリア人のアレンジでありながら、ロンドンの18世紀の活き活きとした音楽シーンを体験する。コレッリそのものを聴くことは、そう珍しいことではないが、「コレッリ人気」を聴くことができるのが興味深い"Mr. Corelli in London"。前作では1625年のヴェネツィアにズーム(harmonia mundi/HMC 902024)したシュテーガーだが、その妙技だけでなく、時代の気分まで拾い上げるあたりも彼の魅力。その時代を楽しませてくれるのがうれしい。もちろん、その妙技も、相変わらず見事!でして...
シュテーガーのリコーダーというと、胸すく超絶技巧に、たまらなく爽快なものがあって、毎度のこと、魅了される。のだが、"Mr. Corelli in London"は、また一味そこに加わっていて。やさしい響きというのか、得も言えぬ温もりが感じられて... 特に、1曲目、10番の協奏曲(track.1-5)などは、最初の一音でノックアウト。何とやわらかな!そして、ただならず、やわらかな心地にさせられる... あぁ、癒される... なんてリアクション、本意ではないのだけれど、間違いなく癒される。で、そこには、フォークロワなテイストもあるのか?それが、イギリス趣味なのか?空を切るような鋭い超絶技巧とは違う、オーガニックなセンスが、コレッリをまろやかに響かせ、とても興味深い。しかし、間違いなく超絶技巧でもあって。リコーダーのかわいらしい音、ジェミニアーニ・アレンジによるやわらかな印象が耳に残る一方で、よくよく聴けば、もの凄いテクニックを繰り広げられていることに驚かされる。10番の協奏曲の終楽章(track.5)、7番の協奏曲の2楽章(track.18)などは、音楽こそ、愛らしく、センチメンタルだったりするのだが、その裏で、圧巻の超絶技巧!癒されたり、唸らされたり、この人はただ者ではない...
というシュテーガーを好サポートするのが、ローレンス・カミングスを指揮に招いたイングリッシュ・コンサート。エッジが鋭いだけのサウンドとは違う、素朴さも滲む、温かなピリオドの響きが、シュテーガーのオーガニックなセンスと良く合い。「ラ・フォリア」を基にした合奏協奏曲(track.11)などでは、より活きて、ラテンの血の濃い「ラ・フォリア」に、少し枯れた渋い表情を漂わせ、また魅力的。

Mr. Corelli in London MAURICE STEGER

フルートのための協奏曲 第10番 へ長調 〔原曲 : ヴァイオリン・ソナタ Op.5-10〕 *
フルートのための協奏曲 第8番 ホ短調 〔原曲 : ヴァイオリン・ソナタ Op.5-8〕 *
お気に入りのジーグ 〔コレッリ の ソナタ 第5番 から〕 *
合奏協奏曲 ニ短調 〔コレッリの「ラ・フォリア」に基づく〕
フルートのための協奏曲 第4番 ヘ長調 (原曲:ヴァイオリン・ソナタop.5-4〕 *
フルート協奏曲 第7番 ニ短調 〔原曲 : ヴァイオリン・ソナタ Op.5-7〕 *
ソナタ 第7番 の サラバンダ の テーマ を基にした グラウンド *

モーリス・シュテーガー(リコーダー) *
ローレンス・カミングス/イングリッシュ・コンサート

harmonia mundi/HMU 907523




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