SSブログ

サイケデリックな時代のリアル。 [2010]

MDG61316002.jpg
1010.gif
またもMDG... そう、マニアックなMDG...
で、そんなMDGを象徴する、マニアックを突き詰めるピアニスト(時々、作曲家... )、シュテファン・シュライエルマッハー。近代から現代に掛けて、とにかく幅広く、そして丁寧に、重箱の隅もきっちり突いて、次から次へと様々なシリーズを繰り出す、密やかに驚異の人物... その仕事ぶりは、たったひとりで(もちろんピアノで... )、音楽における近現代史事典を綴ってしまいそうな、そんな勢い。もはや、「近現代のスペシャリスト」というレベルを越えて、近現代博士... けしてメジャーには成り得なかったとしても、独特の存在感がある。
で、彼の最新盤(といっても、リリースはかなり前になっちゃうのだけれど... )は、フィリップ・グラスのシリーズから。初期作品集(MDG/MDG 613 1027-2)、ダンス&ソナタ(MDG/MDG 613 1428-2)に続く、"How Now"(MDG/MDG 613 1600-2)を聴く。

ミニマル・ミュージックというと、オプティミスティックな印象を受ける。その軽やかなリズムに乗せられて、トリップできそうな、まさに、サイケデリック、ラヴ&ピースな頃のサウンド... ヒッピー文化の無邪気さ、朗らかさ、ポップさが、無限に広がって、ハイになれる?で、ハイになれるほどの軽さが、背景にあるラヴ&ピースのムーヴメントと切り離すことも可能とし、21世紀の今でも、その新鮮さは失われず、クール!なのだけれど、シュライエルマッハーの"How Now"は、そう単純にはいかない... 1曲目、同じ動きの音楽(track.1)の、エレクトリック・オルガンの、強烈に時代を感じさせるサウンドに中てられるというのか、その、ただならずサイケデリックなトーンに、クラクラさせられ、眩暈を起こしそうになる。ような。
同じ動きの音楽、"How Now"、そして5度の音楽... アルバム"How Now"に収録された3作品は、どれも60年代後半の作品。で、まさに「ミニマル」の頃のミニマル・ミュージック... ここ最近の、映画音楽などでもよく耳にする、キャッチーなフィリップ・グラスに慣れてしまうと、その濃厚なミニマル感に、ガツンと殴られたような感覚すらあって。今でも新鮮さを失わないミニマル・ミュージック... ではなく、過去となった、まさにサイケデリックな時代のリアルが、とてつもない存在感で横たわり、独特の迫力で、強烈に迫って来る。
ラヴ&ピースの裏には、時代の閉塞感やら、とても平和的とは言えない現実があって... そうした背景を見つめれば、それは、現実逃避的ムーヴメントだったのかもしれない。そして、シュライエルマッハーの奏でる60年代後半のグラスには、現実逃避と、逃れきれない現実とが重なって、ただならずヘヴィー。白鍵だけで奏でられるはずの5度の音楽(track.3)も、仄暗く... ラヴ&ピースを希求しながらも、成し得なかったムーヴメントの遣る瀬無さが滲むようで、より感覚的なミニマル・ミュージックにあって、どこか感情的なものを見出してしまう。
そんな、自身のリアクションに、ちょっと不思議なものも感じるのだけれど... かつてと今の状況、感覚が、共鳴するようなところがあるのか?シュライエルマッハーの、サイケデリックな時代のリアルを呼び覚ます、骨太のミニマル・ミュージック。一本筋の通った揺るぎない「ミニマル」の渦に巻き込まれると、ミニマルではいられないような、裏腹の心地にさせられて、インパクトは大きい。

Glass: How Now ・ Schleiermacher

グラス : 同じ動きの音楽
グラス : How Now
グラス : 5度の音楽

シュテファン・シュライエルマッハー(エレクトリック・オルガン、ピアノ)

MDG/MDG 613 1600-2




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。