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イタリア、近代音楽を探して... [2010]

「近代音楽」と言えば... まず、ストラヴィンスキーに象徴される、刺激的なロシア・アヴァンギャルド!ロシアの近代音楽が思い浮かぶ... それから、末期症状的ロマン主義と、その煮詰まった先に12音を展開してみせたドイツ語圏の近代音楽があって... さらに、近代に入って、その個性を取り戻したとも言える、百花繚乱のフランスの近代音楽。フォークロワなセンスに立ち返ったスペイン、東欧の近代音楽。ヴィヴィットなサウンドに、ポップなセンスも漂うイギリスの近代音楽。と、話しは尽きないのだけれど、イタリアの近代音楽はどうだろう?レスピーギばかりが際立ち(時々、ブゾーニ... )、他がほとんど見えてこない...
が、ジャナンドレア・ノセダと、彼が率いるBBCフィルハーモニックによる"MUSICA ITALIANA"のシリーズは、レスピーギに留まらず、ダッラピッコラ、ヴォルフ・フェラーリと、イタリアの近代音楽を巡る興味深いリリースが続く。そして、最新盤(といっても、リリースは夏前だったのだけれど... )では、気になるカゼッラが登場... ということで、カゼッラの2番の交響曲(CHANDOS/CHAN 10605)と、そのひとつ前のリリース、ダッラ・ピッコラの作品集vol.2(CHANDOS/CHAN 10561)を聴く。


イタリア流、モダニズム。カゼッラの場合...

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アルフレード・カゼッラ(1883-1947)。
ちょうど一年くらい前になるのか、フランシス+ケルンWDR響による3番の交響曲(cpo/777 265-2)を、ちらりと試聴。ショスタコーヴィチっぽい?というあたりが意外で、かなり気になったのだけれど、なかなか手を伸ばせず... そこに、ノセダ+BBCフィルによる2番の交響曲がリリースされ、聴いてみることに。NAXOSからも、ラ・ヴェッキア+ローマ響による1番の交響曲(NAXOS/8.572413)がリリースされ。さらに、2番の交響曲(NAXOS/8.572414)も、まもなくリリースとのこと。今、カゼッラの交響曲は、何気にブーム?
これまで、カゼッラというと、擬古典主義のど真ん中にある作品、スカルラッティアーナ(その名の通り、スカルラッティのチェンバロの軽やかな作品を、ピアノと小管弦楽のために編曲... )を聴くくらいだったわけだが、そのイメージでいると、カゼッラの交響曲には驚かされる。まさしく「近代」が、重くのしかかってくるようなヘヴィーさ... HMVでは、ラ・ヴェッキア+ローマ響による2番の交響曲について、「マーラーの影響色濃い話題作!」と、紹介しているのが印象的なのだけれど、ノセダ+BBCフィルによる演奏に触れると、そこには、マーラーだけでは済まない近代の諸相が織り成していて... ブルックナー→マーラー→ショスタコーヴィチという、アウトサイダー的、交響曲の流れを俯瞰するようなところもあり、興味深い。なおかつ、イタリアならではの色彩の豊かさ、リリカルなメロディがところどころ覗かせて、魅力的。で、ノセダ+BBCフィルによるすばらしい演奏もあって、聴き応えは十分。そんなカゼッラの交響曲、もっと取り上げられてもいいはず...
一転、アルバムの後半、スカルラッティアーナ(track.6-10)では、軽やかで美しい音楽が展開される。それは、交響曲のヘヴィーさとは好対照のキラキラとしたサウンド。ヴィヴァルディを再発見した人物でもあるカゼッラが、擬古典主義の枠組みの中で、ドメニコ・スカルラッティの音楽に新たな輝きを与えたスカルラッティアーナ。そこには、カゼッラの、御先祖様、イタリアの18世紀の音楽への真摯なリスペクトを見出すようで... そうした繊細な輝きを丁寧に拾った演奏からは、イタリアの次世代マエストロ、ノセダの、イタリアの近代音楽への愛情がこぼれ出すようで、何だか、やさしい気持ちになれるよう。

CASELLA: SYMPHONY NO. 2 / SCARLATTIANA - Roscoe / BBC Phil. / Noseda

カゼッラ : 交響曲 第2番 ハ短調 Op.12
カゼッラ : スカルラッティアーナ Op.44 *

マーティン・ロスコー(ピアノ) *
ジャナンドレア・ノセダ/BBCフィルハーモニック

CHANDOS/CHAN 10605




イタリア流、モダニズム。ダッラピッコラの場合...

CHAN10561.jpg
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ルイージ・ダッラピッコラ(1904-75)。
12音技法というと、新ウィーン楽派となるわけだが、イタリアにも12音技法に取り組んだ作曲家がいる。それが、ダッラピッコラ。で、このアルプス以南のセンスが紡ぎ出す12音というのが、ことのほか魅力的でして... ダッラピッコラの12音による音楽には、アルプス以北の12音による音楽に感じる刺々しさというか、寒々しさというのか... そういう感覚とは一味違う、流麗さがあり、どことなく艶っぽさすらあって、ダンディに響く。12音技法を用いることで、オペラ=イタリア的な、イタリアの作曲家としての性を断ち切りつつ、リリカルで、メロディックなイタリアのDNAからは逃れられない、ダッラピッコラの音楽が抱える矛盾が、かえってクールなサウンドを生む... なんて魅了されたのが、ノセダ+BBCフィルによるダッラピッコラの作品集vol.1(CHANDOS/CHAN 10258)。そして、続くvol.2では、12音ばかりではないダッラピッコラも聴かせてくれる。
1曲目、パルティータ(track.1-4)は、ダッラピッコラが12音技法を完全に取り入れる前の作品... ということで、ドビュッシーのような印象主義に彩られていて興味深い。なんでも、ドビュッシーの作品を初めて聴いたダッラピッコラは、一度、作曲の筆を折ったのだとか(いつもながら、wikiにての情報... )。ともなれば、再び筆を取り、書き始めた作品、パルティータは、大いにドビュッシーの影響を受けている。最後のパート(track.4)は、ソプラノ独唱が加わり、まるでドビュッシーのカンタータ。リリカルで、美しい... のだが、ドビュッシー・ショックから抜け出そうという姿勢も見受けられ、その先にあるメシアンを思わせる表情もちらつき、間違いなくおもしろい。
さて、ノセダ+BBCフィルによるダッラピッコラ作品集vol.2、もちろん、イタリア流、12音技法も楽しませてくれる。その中で、特に印象に残るのは、ジリアン・キース(ソプラノ)のやさしげな歌声が、夢見るようにダッラピッコラの12音を捉えてゆく、アントニオ・マチャドの4つの抒情詩(track.10-13)。リリカルな歌と12音という組合せの妙と、12音の中をたゆたうキース、やわらかに12音を紡ぎ出すノセダ+BBCフィルの好演が相俟って、不思議な魅力で酔わせてくれる。こういう感覚、新ウィーン楽派ではちょっと味わえないのかも...

DALLAPICCOLA: PARTITA / DIALOGHI ETC. - Keith / Watkins / BBC Phil. / Noseda

ダッラピッコラ : パルティータ 〔管弦楽のための〕 *
ダッラピッコラ : 対話 〔チェロと管弦楽のための〕 *
ダッラピッコラ : アントニオ・マチャドの4つの抒情詩 *
ダッラピッコラ : 3つの問いと2つの答え

ジリアン・キース(ソプラノ) *
ポール・ワトキンス(チェロ) *
ジャナンドレア・ノセダ/BBCフィルハーモニック

CHANDOS/CHAN 10561




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