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恐るべき18人による、試演... 完結編。 [2010]

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シューマンのメモリアルということもあるのだけれど... ふと、振り返ると、ここのところ独墺系の作曲家にシフトしている?これまでの当blogの傾向を考えれば、それは、とてもイレギュラー。ま、裏を返せば、当blogこそイレギュラーなわけだけれど。そんなイレギュラーなあたりから、クラシックのレギュラーを見つめてみれば... 刺激的。で、若干、独墺系にはまり気味かも。
ということで、ベートーヴェン... ま、正統派のベートーヴェンとは言えないのだけれど... 鬼才、鍵盤楽器奏者、アルテュール・スホーンデルヴルト。その鬼才っぷりが炸裂した、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の試演を再現したシリーズ。4番と、5番、「皇帝」(Alpha/Alpha 079)に始まり、3番と、ピアノ版のヴァイオリン協奏曲(Alpha/Alpha 122)まで取り上げて、これまで、あらゆる面で驚かせてくれたわけだが、とうとうシリーズも完結。その最後となる、1番と、2番(Alpha/Alpha 155)を聴く。で、期待を裏切らず、やっぱり驚かせてくれる!

各パート、ひとり... という「試演」のための最小限の編成は、17人。その内、管楽器は2人ずつ... となると、弦楽器奏者(5人)よりも管楽器奏者(11人)の方が多くなり、随分とバランスの悪い室内オーケストラのようにも感じるのだけれど、そのバランスを逆手にとって、他ではあり得ないサウンドを繰り出す、スホーンデルヴルト率いるピリオド・アンサンブル、クリストフォリ(ティンパニと、スホーンデルヴルトのピアノを加えて、全部で18人... )。そんな試演版によるベートーヴェンも3枚目とあって、こなれてきた?いや、間違いなくこれまで以上に充実したサウンドを引き出している。1曲目、1番のピアノ協奏曲(track.1-3)、試演版ならではの、とてもピアノ・コンチェルトとは思えない、まるでピアノ六重奏のような出だし... が、管楽器が加わると、俄然、ピアノ・コンチェルトに。そのコントラストが、おもしろいくらいに見事!室内楽からオーケストラへのギア・チェンジというマジックは、アルバムの冒頭にして、鮮烈な印象を与えてくれる。
もちろん、前2作と、同じような編成... そのマジック、管楽セクションが加わるか、加わらないか... ということなのだけれど、これまで以上に、試演版であることが鮮やかに機能している?ピアノ・コンチェルトとピアノ六重奏の間を行き来する不思議な伸縮を、実にアグレッシヴに展開し、普段(いつもの編成... )、聴く以上に、作品にパワーを与えるかのよう。それは、作品そのもののイメージすら変えてしまう?ような... 何より、本当に17人?と、疑いたくなるような堂々としたサウンドに驚かされ、魅了される。
そして、スホーンデルヴルトのピアノ... 一音一音に漲るものがあって、前2作とは違う手応えを感じさせてくれる。ピリオドのピアノゆえのロートル感は、もちろんあるのだが、そのロートルなあたりをポジティヴに受け止めて、そこから最大限の可能性を引き出し尽くそうとする力強いタッチが、ただならない。そうして生まれてくるサウンドは、独特のヘヴィーさを醸して、雄弁ですらあり。で、ユルいところが一瞬たりとも来ない... 例えば、ソロではなく、トゥッティでの通奏低音としてのピアノですら、クリストフォリの演奏に交じって、絶妙な存在感を見せる。かと思えば、1番の2楽章、ラルゴ(track.2)では、途中、ピアノがワルツのリズムを捉えて、びっくり... そんなスホーンデルヴルトの鬼才っぷりも、しっかり楽しませてくれる。
ということで、驚くべきシリーズ、試演版によるベートーヴェンのピアノ協奏曲集、完結であります。斬新過ぎる切り口に、多少、うろたえそうにもなるのだけれど、聴き知った作品を、「試演」という、新たな地点から見つめ直すことは、とても刺激的だった。また、試演版というサイズで、音をタイトに切り詰めて演奏されることが、作品の輪郭をくっきりと浮かび上がらせ、作品の生々しい姿を改めて発見するようなところもあり、極めて興味深いシリーズとなったことは間違いない。

BEETHOVEN Concerti pour piano 1 & 2
Arthur Schoonderwoerd - Cristofori


ベートーヴェン : ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 Op.15
ベートーヴェン : ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調Op.19

アルテュール・スホーンデルヴルト(ピアノ : 1800年製、アントン・ヴァルターをモデルとしたウィーン式フォルテピアノ)
クリストフォリ

Alpha/Alpha 155




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