ヘンデルのエッセンスを煮詰めて、歌えば、 [2010]
カウンターテナー... という声域自体が、個性的のようにも感じるのだけれど、さらに個性的なマックス・エマヌエル・ツェンチッチ。いや、その個性すら攪乱してくるようなところもあったり?髪の毛が無かったと思ったら、あったり... なんてルックスについてはともかく、カウンターテナーの王道からは少し距離を取る、興味深いアルバムの数々。他のカウンターテナーとは一味違う、マニアックなチョイスで、これまで楽しませてくれたツェンチッチ。だったが、Virgin CLASSICSに移っての2枚目、彼もとうとう王道へとやって来たか?
ディエゴ・ファゾリス率いるピリオド・オーケストラ、イ・バロッキスティの強力なサポート得て、ツェンチッチがヘンデルのオペラ・アリアを歌うアルバム(Virgin CLASSICS/6945740)を聴く。
例えば、歌モノの大家、アレッサンドロではなく、鍵盤楽器の大家、ドメニコ・スカルラッティのカンタータ集(CAPRICCIO/67173)だったり... カストラート後の時代、カストラートを意識して作曲されたロッシーニのズボン役のアリア集(Virgin CLASSICS/3857882)だったり... カウンターテナーに王道があるのだろうか?という疑問もあるのだけれど、間違いなく王道とは一味違う、興味深いアルバムの数々... ツェンチッチの魅力は、進んでマニアックな路線に挑むところにもあるように思う。
Virgin CLASSICSの看板カウンターテナーというと、やっぱりフィリップ・ジャルスキー。そこに来て、Virgin CLASSICSのもうひとりのカウンターテナー、ツェンチッチのポジションというのは、何気に微妙な気がしてしまう。破竹のジャルスキーの一方で、どう存在感を見せるのか?カウンターテナーという、ある種、特殊な声域で、どれほど個性を打ち出せるのだろうか?方向性を探り、試行錯誤(第2弾のアルバムが出るのに時間が掛かり... 髪の毛が無かったと思ったら、あったり... )もあるのだろう。が、王道を歌ってみれば... 大正解だった!
ツェンチッチならではの濃厚なアルトが、ヘンデルのオペラにぴたりとはまる。カウンターテナーならではの魅力、滴る独特の艶やかさは、ヘンデルでこそ焦点がきっちり合った気さえする。もちろん、ツェンチッチは、これまでもヘンデルを歌っているわけだが、アリア集として、ヘンデルのエッセンスを煮詰めて歌えば、その個性はより際立つよう。ドスの利いた「男」アルトの迫力というのか、ヘヴィーさを伴いつつ、ジェンダーを揺らがせてしまう妖しげなトーン... それはまさにバロック!だからこそ、ヘンデルのバロック性は、間違いなく迫力を増していて、より魅了されてしまう。いや、ツェンチッチという存在を再確認させられる思い。
それでいて、ファソリス+イ・バロッキスティが見事!最初の音が鳴りだした瞬間から、魅了されてしまう。楽器ひとつひとつが、明朗で極めて美しい音を響かせ。アリアひとつひとつで、それぞれに、より濃密なドラマ性を紡ぎ出す器用さ。アグレッシヴさと精緻さで、アリア集をけして単調なものにはしない見事な仕事ぶり、さすが。
CENCIC HANDEL Opera Arias
■ ヘンデル : オペラ 『イメネーオ』 HWV.41 から Sorge nell'alma mia
■ ヘンデル : オペラ 『フロリダンテ』 HWV.14 から Alma mia
■ ヘンデル : オペラ 『クレタのアリアンナ』 HWV.32 から Salda quercia in erta balza
■ ヘンデル : オペラ 『タメルラーノ』 HWV.18 から Benché mi sprezzi
■ ヘンデル : オペラ 『セルセ』 HWV.40 から Se bramate d'amar chi vi sdegna
■ ヘンデル : オペラ 『ゴールのアマディージ』 HWV.11 から Pena tiranna
■ ヘンデル : オペラ 『クレタのアリアンナ』 HWV.32 から Qual leon che fere irato
■ ヘンデル : セレナータ 『パルナッソス山の祭典』 HWV.73 から Non tardate fauni ancora
■ ヘンデル : オペラ 『アグリッピーナ』 HWV.6 から Come nube, che fugge de vento
■ ヘンデル : オペラ 『ラダミスト』 HWV.12 から Ombra cara
■ ヘンデル : オペラ 『オルランド』 HWV.31 から Verdi allori
■ ヘンデル : セレナータ 『パルナッソス山の祭典』 HWV.73 から Lunga seria, d'altri eroi
マックス・エマヌエル・ツェンチッチ(カウンターテナー)
ディエゴ・ファソリス/イ・バロッキスティ
スイス放送合唱団
Virgin CLASSICS/6945740
■ ヘンデル : オペラ 『イメネーオ』 HWV.41 から Sorge nell'alma mia
■ ヘンデル : オペラ 『フロリダンテ』 HWV.14 から Alma mia
■ ヘンデル : オペラ 『クレタのアリアンナ』 HWV.32 から Salda quercia in erta balza
■ ヘンデル : オペラ 『タメルラーノ』 HWV.18 から Benché mi sprezzi
■ ヘンデル : オペラ 『セルセ』 HWV.40 から Se bramate d'amar chi vi sdegna
■ ヘンデル : オペラ 『ゴールのアマディージ』 HWV.11 から Pena tiranna
■ ヘンデル : オペラ 『クレタのアリアンナ』 HWV.32 から Qual leon che fere irato
■ ヘンデル : セレナータ 『パルナッソス山の祭典』 HWV.73 から Non tardate fauni ancora
■ ヘンデル : オペラ 『アグリッピーナ』 HWV.6 から Come nube, che fugge de vento
■ ヘンデル : オペラ 『ラダミスト』 HWV.12 から Ombra cara
■ ヘンデル : オペラ 『オルランド』 HWV.31 から Verdi allori
■ ヘンデル : セレナータ 『パルナッソス山の祭典』 HWV.73 から Lunga seria, d'altri eroi
マックス・エマヌエル・ツェンチッチ(カウンターテナー)
ディエゴ・ファソリス/イ・バロッキスティ
スイス放送合唱団
Virgin CLASSICS/6945740
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