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踊る私的演奏協会。 [2010]

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アルノルト・シェーンベルク... 「クラシック」を殺した、最重要参考人。
それまで連綿と育まれて来た西洋音楽史の伝統を、12音技法という凶器で、グサり?いや、彼の革新性は、「クラシック」という観点に立てば、未だに破壊的な印象を受ける帰来がある。一方で、シェーンベルクは教育者でもあった。20世紀を彩る、多くの作曲家を育てた人物... シェーンベルク・スクールとも言うべき、新ウィーン楽派は、まさにその産物なわけだが。破壊しつつ、育てもした。シェーンベルクのイメージというのは、いろいろな部分で、パラドックスを抱えているようで、なかなかおもしろい。
そんな、シェーンベルク... 12音の世界からは最も遠いところにある音楽、ウィンナー・ワルツの編曲を取り上げるアルバム、リノス・アンサンブルによるワルツ編曲集(CAPRICCIO/5004)を聴く。

教育者としてのシェーンベルクの、興味深い副産物が、バロックから、ロマン派から、シェーンベルクの同時代の作曲家(つまり、その当時の現代音楽... )まで、様々な作品の編曲。それらに倣った教え子たちによる編曲(プロフェッサー・シェーンベルクの許に提出されたレポート?のようなもの... )も含めて、シェーンベルク・スクールによる編曲の数々は、それぞれに、なかなか乙なテイストを楽しませてくれる。そこには、12音技法といった堅苦しさはなく、飄々とオリジナルと向き合い、どこか音楽を素で楽しむような姿があるよう。とはいえ、そうして編曲された数々は、保守的なウィーン楽壇への挑戦である「私的演奏協会」(1918-21)で発表されたわけで、必ずしものんきなものではなかったわけだが...
そうしたあたりを丁寧に取り上げてきた、ドイツの室内楽アンサンブル、リノス・アンサンブル。エルヴィン・シュタインの編曲による室内楽版、マーラーの4番の交響曲(CAPRICCIO/10 863)に始まり、ハンス・アイスラー、エルヴィン・シュタイン、カール・ランクルの3人による室内楽版、ブルックナーの7番の交響曲(CAPRICCIO/10 864)。「私的演奏協会」が開かれた当時の現代音楽、シェーンベルク作品も含む編曲集(CAPRICCIO/10 865)と、極めて興味深いを音楽を、すばらしい演奏で聴かせてくれたわけだが、それから、かなり時間が開いてのワルツ編曲集。シェーンベルク・スクールの編曲では、最もポピュラーかもしれない。そういう点で、目新しさはないが、リノス・アンサンブルのすばらしい演奏で聴けば、やはり、シェーンベルク・スクール(今回は、シェーンベルク自身と、ベルク、ヴェーベルンによる... )の編曲の妙がクリアになるようで。また、そうした編曲を経て、さらにシュトラウスの音楽がクリアにされてゆくようなところもあって、つい聴き入ってしまう。のだが。
久々に聴くワルツ!普段があまりにマニアックなものだから、ウィンナー・ワルツは多少、軽薄にすら感じてしまいそう?いや、それこそがツボ!久々に、あーだこーだ考えずに楽しんでしまう。何より、リノス・アンサンブルの明快で、かつホットな演奏が、本当に楽しいワルツを展開していて。例えばウィーン訛りの3拍子だとか、オーケストラ編成による流麗なサウンドとか、お上品に楽しむ嗜好品としてのワルツとは違う、踊り出したくなるような楽しさが溢れた本物のワルツを体感。また、そうした感覚を絶妙に引き出すのが、新ウィーン楽派の、12音ばかりでない、確かな手腕であって、見事!

SCHÖNBERG ・ WEBERN ・ BERG
Walzer Bearbeitungen ― The Waltz Arrangements


ヨハン・シュトラウス2世 : ワルツ 「酒、女、歌」 Op.333 〔ベルク編曲〕
ヨハン・シュトラウス2世 : ワルツ 「南国のばら」 Op.388 〔シェーンベルク編曲〕
ヨハン・シュトラウス2世 : 入り江のワルツ Op.411 〔シェーンベルク編曲〕
ヨハン・シュトラウス2世 : 皇帝円舞曲 Op.437 〔シェーンベルク編曲〕
ヨハン・シュトラウス2世 : 宝石のワルツ Op.418 〔ヴェーベルン編曲〕

リノス・アンサンブル

CAPRICCIO/5004




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