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ラルペッジャータの道行き。 [2010]

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クリスティーナ・プルハル率いる、気鋭の古楽アンサンブル、ラルペッジャータ。大胆に古楽から踏み出すことを恐れない、フレキシブルなセンス、それを形に成し得る器用さ... 彼らの魅力は、古楽のレパートリーをきっちりと仕上げるばかりでない、+αがあること。そんな+αを、また期待して、手に取った、彼らの新しいアルバム"VIA CRUCIS(十字架の道行き)"(Virgin CLASSICS/6071070)。何か、おもしろいことをしてくれるのだろう... と、漠然とした期待から、特に、詳しく、その中身について知らずに、聴き始めたのだが... 驚いた!
イエスの受難をテーマに、イタリアのバロック期前半の音楽と、地中海各地のトラッドを並べて、ラルペッジャータ流に、新たに紡がれる受難曲?いや、「受難曲」なんて、堅苦しさは抜きに、おもちゃ箱をひっくり返したような多彩な音楽で、飽きさせない... そんなアルバムを聴く。

ビーバーの『ロザリオのソナタ』から、印象的な1曲目、「お告げ」で始まる"VIA CRUCIS"。まさに、十字架の道行きへと至る、イエスの生涯の始まりを告げるベスト・チョイス!なのだが、「ラテン」のイメージが強いプルハル+ラルペッジャータだけに、アルプスの北側の音楽(ビーバーは、チェコ出身、ザルツブルク大司教の宮廷で活躍した... ちなみにプルハルはオーストリア出身なのだけれど... )をチョイスしたことが、ちょっと驚き。また、即興的な伴奏で彩られた歌モノ... のイメージも強い彼らだけに、ヴァイオリン・ソナタという器楽曲(ミラ・グロデアヌのヴァイオリンも、もちろん素敵で... )を聴くことが、とても新鮮。最初から、ワクワクさせられる。で、次から次へと、様々な音楽が繰り出され、驚きに事欠かない。
そうした中で、深くフォークロワな世界と向き合ってきたラルペッジャータならではと言うのか、コルシカのトラッドを歌うヴォーカル・アンサンブル、バルバラ・フルトゥーナを招いての歌声は、インパクトがある。特に、無伴奏で歌われるコルシカ民謡(track.7, 10)は、圧倒的!地中海文化圏を感じさせるエスニックなトーン、力強さ、エモーショナルさには、ただただ魅了される。軽業師的なラルペッジャータに対して、バルバラ・フルトゥーナのドスの利いた迫力が、"VIA CRUCIS"に、受難の血を滲ませて、アルバム全体をグっと引き締めもする。
かと思えば、アルバムの最後(track.18)で登場するヴィンチェンツォ・カペズットにはびっくりさせられる。その声、てっきり女性かと思えば、男性なのだ。テノリーノ・ナポレターノ(ナポリ民謡用軽いテノール?)と紹介されているのだが、カウンター・テナーすら飛び越えた不思議ヴォイスに、目を丸くする。
そして、忘れてならないのが、フィリップ・ジャルスキー(カウンター・テナー)に、ヌリア・リアル(ソプラノ)。前作、"Teatro d'Amre(愛の劇場)"同様に、やわらかで美しい歌声を聴かせ。そんな2人の歌声を絶妙に彩るラルペッジャータの腕利きの面々... ジャンルをひょいと飛び越えて、いつのまにやらジャジーな臭いを漂わせたり... 彼らの真骨頂も、しっかり楽しませてくれる。
それにしても、少しヤリ過ぎなのでは?というくらいに盛りだくさん。なのだが、まとめてしまうから凄い。また、そこには、ラルペッジャータとしての集大成的な意味合いも見受けられ。彼らのこれまでのアルバムで印象的だったメロディが、"VIA CRUCIS"から再び聴こえてくるのも興味深いところ。さらに、限定盤として、結成10周年のDVDがおまけに付いていて。ここには、かつての盟友、地声テノール、マルコ・ビーズリーや、ラルペッジャータの存在を知らしめた"La Tarantella"(Alpha/Alpha 503)で、強烈な個性を見せつけたナポリ民謡の歌い手、ルッチラ・ガレアッツィの姿があり、印象深い(さらにキングス・シンガーズ、ヴェロニク・ジャンまで!)。
"VIA CRUCIS"、オーガニックな地中海世界の受難曲を綴りつつ、何気にラルペッジャータのこれまでの道行きのカタログに仕上がっているあたりが、魅力的。

VIA CRUCIS L'ARPEGGIATA CHRISTINA PLUHAR

Maria - La visione
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ビーバー : 『ロザリオのソナタ』 から 「お告げ」
ナポリ民謡 : ニンナ・ナンナ *
メルランディ : マリア 〔タランテラ "la Cprinese" による〕 *
メールラ : Hor ch'e tempo di dormire *
ビーバー : 『ロザリオのソナタ』 から 「お告げ」

La morte di Xsto - O Diu, tante suffranze
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レグレンツィ : オペラ 『世界の分割』 より Lumi, potete piangere **
コルシカ民謡 : Suda sangue *
フェッラーリ : Queste pungente spine *
ロッシ : オラトリオ 『悔やむ罪人』 より Voglio morire
コルシカ民謡 : スターバト・マーテル *
サンチェス : モテット 『マリアの嘆き』 より スターバト・マーテル *
カッザッティ/メアッリ : パッサカリア
マンブリーニ、カサロンガ、アクァヴィーヴァ : Lamentu di Ghjesu 〔フォリア による〕 *

Ci vedrem in Paradiso
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メールラ : シャコンヌ
モンテヴェルディ : 主をほめたたえよ *
アッレグリ : Canario
作曲者不詳 : Ciaccona di Paradiso e dell'Inferno *
グラニャニエッロ : 'Stu criatu 〔タランテラ による〕 *

ヌリア・リアル(ソプラノ) *
フィリップ・ジャルスキー(カウンター・テナー) *
バルバラ・フルトゥーナ(ヴォーカル・アンサンブル) *
ヴィンチェンツォ・カペズット(テノリーノ・ナポレターノ) *
クリスティーナ・プルハル/ラルペッジャータ

Virgin CLASSICS/6071070




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