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Fascinating GERSHWIN ! [2010]

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まるで、人生の疲れを隠すが如く、サングラス。
そのあたり、何気に怪しげでして... 詐欺師か、探偵か、コートダジュールあたりを舞台に、多少ユルめのサスペンス?渋めのメロドラマ?が展開する、フランス映画... 相手役にはカトリーヌ・ドヌーヴあたり... なんて雰囲気のジャケットが、どうも微妙なジャン・イヴ・ティボーデ、久々のアルバム。ピアノ界切ってのミスター・エレガンス... のはずが、このヤサグレ観は一体?!と、ちょっと衝撃的。彼も年を取ったということか?
で、そんなジャン・イヴが弾くのは、ガーシュウィン。それも、ジャズ・バンド・ヴァージョンでのラプソディー・イン・ブルー(DECCA/478 2189)。そして、相手役にはマリン・オルソップと、彼女が率いるボルティモア交響楽団という、生粋のアメリカン・チーム。フランスが誇るミスター(ムッシュー)・エレガンスと、ビッグバンドも創設してしまったキャリアも持つオルソップ。この組合せによるガーシュウィンとは、どんなものに仕上がるのだろうか?と、かなり気になる1枚。

が、何か、割り切れないサウンド... どこかで消化不良な感覚もある第一印象。やはり、ティボーデのピアノはエレンガンス。そこに、ジャズ・バンド・ヴァージョンの採用。ポジティヴにチープで、スウィングしてこそのヴァージョンに、どこか向き合い切れていないようなジャン・イヴの姿あり。一方で、ビッグバンドはお手の物... なはずのオルソップだが、ボルティモア響はシンフォニック・オーケストラの殻を破り切れないようで、弾け切らず、遊び切れず... となると、いつもとは違うジャズ・バンド・ヴァージョンが、活きてこない?のかも。ティボーデ、ジャズ・バンド・ヴァージョン、オルソップ、ボルティモア響... という取り合わせが、微妙に軋むよう。
ところが、聴き進めてみて、その感覚に慣れてくると、それらがテイストになってくる。ジャケットのヤサグレ観に始まって、割り切れず、消化不良で、軋んでしまうあたりが、実は、悪くはない?
ジャジーに酔う(場合によっては管を巻く?)というより、エレガンスさから、あくまでもお洒落に、モダン・エイジのスタイリッシュさを切り取ってくるティボーデのタッチ。彼の思い描くガーシュウィンというのは、アールデコ?銀色に輝くクライスラー・ビルのイメージ?もちろん、ジャズ・エイジ... ジャジーな気分も漂うのだけれど、どこかメカニカルな表情を見せるアールデコの雰囲気で描かれるのか。それは、ガーシュウィン以後、形作られてゆく「ジャズ」のステレオタイプをフィルターに覗くのではない、ガーシュウィンが生きた時代の空気感の中で紡がれるガーシュウィン?変に生真面目なところもあるようなオルソップ+ボルティモア響も、実はいい味を醸していて、不器用そうな感じが、ティボーデのピアノにも、実は、はまって、絶妙。なのかも。
そんなラプソディー・イン・ブルーに続く、「アイ・ガット・リズム」変奏曲(track.2)、へ調のピアノ協奏曲(track.3-5)も、ラプソディー・イン・ブルーに合わせた編成によるヴァージョンで揃えられて、それぞれに興味深い音楽を聴かせてくれる。シンフォニック・オーケストラではなくビッグバンド編成による、いつもと違う響き... は、発見もあって、なかなか新鮮。特に、ピアノ協奏曲は、ラプソディー・イン・ブルーとはあべこべに、グローフェによって、ジャズ・バンド・ヴァージョンに仕立て直されていたりで(そんなヴァージョンがあったとは、驚き!)。また、そんな風に、ダウン・グレードされたあたりから、ガーシュウィンの音楽に籠められた「近代音楽」というアカデミズムを紐解くようなところがあって、刺激的。ガーシュウィンという存在を、改めて見直しもし。で、何気に器用なことをやってのけているオルソップの仕事ぶりが憎い。いや、見事。なのかも。
しかし、軽妙洒脱で、キャッチーなガーシュウィンのメロディには、心奪われる!改めて、なんと魅惑的な!

GERSHWIN: RHAPSODY IN BLUE & PIANO CONCERTO ・ THIBAUDET

ガーシュウィン : ラプソディ・イン・ブルー 〔1924年版〕
ガーシュウィン : 「アイ・ガット・リズム」 変奏曲 〔オリジナル手稿譜による1934年版〕
ガーシュウィン : ピアノ協奏曲 ヘ調 〔グローフェのアレンジによる1928年版〕

ジャン・イヴ・ティボーデ(ピアノ)
マリン・オルソップ/ボルティモア交響楽団

DECCA/478 2189




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