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20世紀レクイエム。 [2010]

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ヴァイル、ヒンデミット、ストラヴィンスキー、ミヨー...
20世紀前半、モードとは一線を画して、多少、灰汁の強さもあって、個性を際立たせた作曲家たちの、メッセージ性の強い作品を並べたフラマン放送合唱団の新しいアルバム(GLOSSA/GCDSA 922207)は、かなりエッジの利いた1枚。ポール・ヒリアーを指揮者に招いたというあたりも、気になるところ。なのだが、まず目に入るのは、そのアートワークス。作品が作曲された頃、1920年代、1930年代の、エッジーな気分を取り込んだデザインは、クール!ジャケットはもちろん、ジャケットを開いた内側も、ディスクの盤面も、バウハウスのスタイルを思わせる。が、下地は古い書類の裏面なのか、黄ばみを見せ、凝った仕上がり。ディスクに籠められた音楽を、巧みにヴィジュアルとして秀逸。ディスクをプレーヤーに掛ける前から、ちょっとただならない。
で、そんなアルバムの中身は?

チャレンジング!
ヴァイル、ヒンデミット、ストラヴィンスキー、ミヨーという、個性のおもちゃ箱になりそうな作曲家を揃えながらも、取り上げる作品はどれも渋い。第1次世界大戦後、革命半ばに殺されたローザ・ルクセンブルクの死に捧げられた、ブレヒトとヴァイルのコンビによるベルリン・レクイエム(track.1-6)。ファシズムが席巻する中、得意の機械仕掛けのような音楽ではなく、ルネサンスを思わせるスタイルで、ヘルダーリンのロマンティックな詩に作曲した、ヒンデミットの死(track.8)。第2次世界大戦へと殺気立つ中、いつものお祭り騒ぎのサウンドとは打って変わって、無伴奏で、神妙に歌い上げる、ミヨーの戦争カンタータ(track.12)と、平和のカンタータ(track.13)。そこに差し挟まれるストラヴィンスキーの管楽八重奏曲(track.9-11)の、調子外れな軽さは、妙に不気味で、ある種の死の舞踏なのか?両大戦間の激動の時代、不穏な空気感を背景にした作品で綴られたアルバムは、20世紀の生々しい記憶を留めて、ただならずヘヴィーだ。
そんなヘヴィーさを、クリアでライトな音楽を紡ぎ出すヒリアーが、どう形にするのだろう?と、かなり気になるところなのだが... オールド・ファッションな印象もあるフラマン放送合唱団を、きっちりと整理し、ヒリアーらしいクリアなハーモニーを紡ぎ出す。そして、20世紀の暗い影と傷を背負った作品も、彼ならではのセンスで、気負うことなくシンプルに、素直に音楽が運ばれて。ヴァイルのベルリン・レクイエムなどは、レクイエムといえども、ヴァイル流のけれんがある。が、そうしたところは強調しない。淡々と荘重に進める。すると、作品に籠められたメッセージ性、インパクトは、より際立つ。他の作品もまたそうだ。
一度、時代が背負う影や傷を洗い流し、ヒリアー流の透明感で以って響かせれば、そこから本当の重みがズシリと感じられるようであり。また、静かにも素直に滔々と歌えば、作品の持つヘヴィーさが、独特の美しさに昇華するようでもあり。ヒリアー+フラマン放送合唱団が生み出す、20世紀、2つの大戦間の音楽というのは、聴き入るほど独特。その独特さに至るセンスが見事。ヴァイル、ヒンデミット、ストラヴィンスキー、ミヨーという絶妙のチョイスがあって... 一筋縄ではいかない作曲家たちの、いつもとは一味違う作品で聴かせるメッセージ・アルバム。じわりじわりと、感心させられる。

ところで、ヴァイルもミヨーもユダヤ系だ。そして、ヒンデミットはナチスに目を付けられたわけだ。作曲家が命がけで作曲した時代を振り返ると、今という時代はどうなのだろう?作品を創作するにあたって、21世紀の空気感というのは、どうなのだろう?と、少し、考えてしまう。

Kurt Weill Das Berliner Requiem
Flemish Radio Choir / I Solisti del Vento Paul Hillier


ヴァイル : ベルリン・レクイエム **
ヴァイル : 森に死す **
ヒンデミット : 死 *
ストラヴィンスキー : 管楽八重奏曲 *
ミヨー : 戦争カンタータ *
ミヨー : 平和のカンタータ *

ポール・ヒリアー/フラマン放送合唱団 *
イ・ソリスティ・デル・ヴェント *

GLOSSA/GCDSA 922207




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