私的な日記。 [2010]
アレクサンドル・タローが、Virgin CLASSICSに?!
そのニュースを聞いた時は、とにかく驚いた。我が道をゆき、じわりじわり注目を集めてきたタロー... その「我が道」を極めて生み出す独特さこそ、タローの芸術。しかし、メジャー・レーベル(Virgin CLASSICSは、また趣きを変えるわけだけれど... )に移って、我が道を歩めるのだろうか?と、多少、心配にもなる。また、Virgin CLASSICSからの第1弾が、メモリアルに合わせてのショパンのアルバムとなれば、ますます...
が、そんなメジャー・レーベル的、いかにもなデビューを、楽しんでいる?我が道をストイックに突き詰めてのこれまでとは一味違うタローがそこに... 少しアバウトに構えて、余裕を見せるのか、遊びすらあるようにも思えるタローの最新盤。ショパンの生誕200年のメモリアルを飾るアルバム、"Journal Intime(私的な日記)"(Virgin CLASSICS/6855652)を聴いてみる。
タローのピアノは、クリアで、スタイリッシュ... 辛気臭くなりがちなクラシックにあっても、いつも「現代」にフィットする音を聴かせてくれる。そこには、タローならではの作品とのストイックな向き合い方があって... モードに左右されることのない我が道を貫いて、弾きたいものを弾いてこぼれる、ピュアな喜び、楽しさが伝わってくる。が、ショパンを弾く"Journal Intime(私的な日記)"は、一味違う?ショパン・メモリアルにショパンを弾いて、メジャー・レーベルからデビューする照れか?どこか素直でないような... いつものクリアさ、スタイリッシュさに、ちょっぴりあざとさが乗っかって、ピアノの詩人、メランコリックでセンチメンタルなショパンの音楽世界に、ポップなトーン(ショパンの音楽というのは、ある意味、19世紀における「ポップ」だったはず... )を見出す。それは、わずかにチープにも響くようで。また、ポジティヴにチープであることを捉えれば、時にキッチュでもあり。ショパンの姿を、ひとつのポートレートに留めてしまうのではなく、どこか所在なげに、イメージをブレさせて、スナップとして切り取ってくる。そんなタローのスタンスが絶妙!そのあたりが「私的な日記」?
ショパンの魅力的な小品を集めて、カタログ的にもまとめられたVirgin CLASSICSからのデビュー・アルバム。メモリアルだからか、メジャー・レーベルだからか、これまでのタローに比べると、間違いなく華やいで聴こえる。のだけれど、その華やぎに、照れるようなタローのショパンでもあり。照れ隠しに、いつもより遊んでみて... まさに"intime(仏語、くつろいでいるさま。親しいさま。とのこと... )"な空気感を作り出す。正直に言ってしまえば、"Journal Intime"は、タローらしからぬ1枚... だが、「らしからぬ」に直面して見せる、タローのちょっとした心の波紋(戸惑い?)が、ショパンに広がって、たまらなく気の置けない音楽に昇華してしまう。メモリアルにありがちなアルバム... だが、「私的な日記」としての味わいは、他では味わえない、これまでのタローでも味わえない、素敵なものに仕上がっている。
Alexandre THARAUD | CHOPIN Journal Intime
■ ショパン : マズルカ 第41番 嬰ハ短調 Op.63-3
■ ショパン : バラード 第1番 ト短調 Op.23
■ ショパン : マズルカ 第10番 変ロ長調 Op.17-1
■ ショパン : マズルカ 第49番 イ短調 Op.68-2
■ ショパン : 幻想曲 ヘ短調 Op.49
■ ショパン : 夜想曲 第20番 嬰ハ短調 「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」 〔遺作〕
■ ショパン : マズルカ 第6番 イ短調 Op.7-2
■ ショパン : バラード 第2番 ヘ長調 Op.38
■ ショパン : マズルカ 第13番 イ短調 Op.17-4
■ ショパン : ラルゴ ハ短調
■ ショパン : 3つのエコセーズ Op.72-3
■ ショパン : コントルダンス 変ロ長調
■ ショパン : 幻想即興曲 Op.66
■ ショパン : 夜想曲 第2番 変ホ長調 Op.9-2
アレクサンドル・タロー(ピアノ)
Virgin CLASSICS/6855652
■ ショパン : マズルカ 第41番 嬰ハ短調 Op.63-3
■ ショパン : バラード 第1番 ト短調 Op.23
■ ショパン : マズルカ 第10番 変ロ長調 Op.17-1
■ ショパン : マズルカ 第49番 イ短調 Op.68-2
■ ショパン : 幻想曲 ヘ短調 Op.49
■ ショパン : 夜想曲 第20番 嬰ハ短調 「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」 〔遺作〕
■ ショパン : マズルカ 第6番 イ短調 Op.7-2
■ ショパン : バラード 第2番 ヘ長調 Op.38
■ ショパン : マズルカ 第13番 イ短調 Op.17-4
■ ショパン : ラルゴ ハ短調
■ ショパン : 3つのエコセーズ Op.72-3
■ ショパン : コントルダンス 変ロ長調
■ ショパン : 幻想即興曲 Op.66
■ ショパン : 夜想曲 第2番 変ホ長調 Op.9-2
アレクサンドル・タロー(ピアノ)
Virgin CLASSICS/6855652
さて、音のタイル張り舗道... と、なりました。
再び、サティ作品から名前を借りて... ほぼ、思い付き...
という具合に、これからは、ユルめに歩んで行くつもりです。
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