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メンデルスゾーン、200年の感動。 [2009]

イル・ジャルディーノ・アルモニコによるヘンデルの合奏協奏曲(L'OISEAU-lYRE/478 0319)に始まり、とにかく、突っ走って来た2009年+今月。新譜を追って、追いきれなくて、振り返って数えてみれば、ここまで110タイトル... いろいろな意味で、クラクラしてくる。当然、感慨もあるが、もう、いい加減にしたくもあり... 何となしに複雑な心境。しかし、そんな110タイトルは、おもしろかった!そして、2009年分の最後は、2009年を象徴する作曲家のひとりを取り上げてみようかと...
生誕200年、メンデルスゾーンのメモリアル。とうとう完結した、トーマス・ファイ率いる、ハイデルベルク交響楽団による、メンデルスゾーンの交響曲のシリーズ。第5弾、3番、「スコットランド」(hänssler/98.552)と、完結編、2番、「賛歌」(hänssler/98.577)を聴く。


ロマン主義が滴る、「スコットランド」。

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5つの交響曲だけでなく、少年メンデルスゾーンによる習作的な13の弦楽のための交響曲も全て網羅しての、ファイ+ハイデルベルク響によるメンデルスゾーンの交響曲のシリーズ。ハイドンのスペシャリスト、ファイ+ハイデルベルク響だけに、ハイドンが逝った年に生まれた少年メンデルスゾーンによる、「18世紀」を多分に含んだ弦楽のための交響曲の演奏に、よりしっくりくるものがあって。また、ハイデルベルク響ならではの、ノン・ヴィブラートで繰り広げる弦セクションの切れ味の鋭さが、快活な古典派のみならず、劇的なバロックすらリヴァイヴァルしてくる弦楽のための交響曲の、スリリングなあたりを際立たせ、恐るべき少年メンデルスゾーンの音楽をスパークさせた。のだが、青年メンデルスゾーン以降に作曲された交響曲では、なかなか「19世紀」のピントに合わず、空回るようなところがあった。ような... しかし、第4弾、5番、「宗教改革」(hänssler/98.547)で、ファイ+ハイデルベルク響によるメンデルスゾーン像は見定まったか、彼ららしさと「19世紀」の折り合いがしっかりと着けられ、シリーズは俄然、おもしろくなった。そして、第5弾、3番、「スコットランド」、期待せずにはいられないわけでして...
ロマンティシズムが滴り落ちるような瑞々しさ!ファイ+ハイデルベルク響のクリアな響きにより、視界は限りなく良好... より雄大なスコットランド風景が広がる。それは、重々しい筆致で描かれたスコットランドの古い風景画などではない、ハイヴィジョンで撮影された、ありのままに美しいスコットランド風景。最初の一音から、ただならず瑞々しい。そして、「ありのままに」籠められている、作為の無いロマンティシズムを、サウンドとして解き放つような... ロマン主義がピュアな輝きを未だ放っていたメンデルスゾーンの時代に還り、生まれたてのメンデルスゾーンの響きを再現してくれるかのような演奏。で、そういう境地に至っているファイ+ハイデルベルク響に、新鮮な思いをする。
モダンとピリオドのハイブリットによるハイデルベルク響... となれば、オリジナル主義的な指向を持つ存在ではあるが、ファイのアンファン・テリヴルな個性が、必ずしもストイックなオリジナル主義へとは向かわせて来なかったようにも思う。だからこそ、ひと癖あるハイドンは、どれもスパイスが利いていて、飽きさせることはまったく無かった。が、そういうスパイス無しで、「スコットランド」と向き合ったなら... 19世紀、ロマン主義に、とりあえず飛び込んでみて、素直にその世界に塗れてみる。と、ハイデルベルク響の高機能性が、メンデルスゾーンのおもしろさを全て拾い上げて、見事な音楽を響かせる。交響曲としての構築感、スコットランドを活写した描写性... 相反する2つの要素をまとめ上げて、メンデルスゾーンを代表する名曲のひとつを、改めて「名曲」だなと、感じ入らせてくれる。ファイ+ハイデルベルク響、期待は裏切らない...

F. Mendelssohn Bartholdy Symphony No. 3 ・ String Symphonies No. 11

メンデルスゾーン : 弦楽のための交響曲 第11番 ヘ長調
メンデルスゾーン : 交響曲 第3番 イ短調 Op.56 「スコットランド」

トーマス・ファイ/ハイデルベルク交響楽団

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シリーズ完結、そして感動の「賛歌」。

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シリーズが完結するという、感無量感?何なのだろう... ファイ+ハイデルベルク響によるメンデルスゾーンの2番の交響曲、「賛歌」は、最初から感動に包まれているような気がしてしまう。もちろん、「賛歌」というタイトルに相応しい音楽が感動的で... シンフォニア、冒頭から登場するメイン・テーマがキャッチーで、すでに感動的... いや、そうしたあたりが大好きな交響曲なのだけれど、そればかりでない感動があるような...
ファイ+ハイデルベルク響の演奏は、いよいよ以って、メンデルスゾーンを完全に受け入れるのか?ファイならではのテンションの高さ、スピーディーな展開、ハイデルベルク響ならではの透明感と、パワフルさを維持しながらも、どこか落ち着いた空気感が漂い、よりナチュラルな響きが広がる。何より、交響曲としてはあまりにイレギュラーな「賛歌」。シンフォニア(track.1-3)と呼ばれる、オーケストラだけで演奏される前半と、3人のソリスト、合唱が加わり、まるでオラトリオのような後半。この異質な、前半、後半を、無理なくまとめ上げ、その多彩なパートの、全て活かしきる。
2番、「賛歌」は、グーテンベルクの活版印刷発明400年記念の祝典のために書かれた交響曲とのことだが、5番、「宗教改革」、同様、どことなしにナショナリスティックで、プロパガンダ的な性質を持つのか?メンデルスゾーンにより編み込まれた「感動」は、実に巧みであって、機会音楽として、見事な仕事ぶりを見せてくれる。が、そうした流れに、そのまま乗っかって、逆に、その「感動」をマキシマムに展開して見せるファイ+ハイデルベルク響。そうして生まれるサウンドというのは、芯から悦びに満ちていて... そこに、ドイツ室内合唱団による、輝きに充ちた合唱が加われば、感動は倍増... 細かいことを考えずに、目の前で繰り広げられる「感動」に、素直に感動してみる... そんな気分にさせられる。
一方で、発見もある。ところどころ、ワーグナーが浮かび上がるようで、おもしろく。ソプラノによるアリア(track.5)で聴こえてくる木管のトレモロは、ワーグナーのどこかで、間違いなく聴いているぞ?!なんて、興味深くも思い... メンデルスゾーンの先進性というのか、ワーグナーの源流というのか、連綿と続くドイツ音楽の系譜を、この「賛歌」の中で感じるとは思わなかった。で、そんな発見を味わえるのも、ファイによるメンデルスゾーンと丁寧に向き合う姿勢があるからこそ。メンデルスゾーンという作曲家を信じ切って生まれる音楽の、ひとつひとつが味わい深い。そして、そのひとつひとつを、しっかりと味わえば、感動は、やはり大きくなるのかも。メンデルスゾーン、200年の感動が、そこにある。

F. Mendelssohn Bartholdy Symphony No. 2 ・ "Lobgesang"

メンデルスゾーン : 交響曲 第2番 変ロ長調 Op.52 「讃歌」

エレオノーレ・マルグエッレ(ソプラノ)
ウルリカ・ストレムステッド(メッゾ・ソプラノ)
マルクス・シェーファー(テノール)
ドイツ室内合唱団
トーマス・ファイ/ハイデルベルク交響楽団

hänssler/98.577




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