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リスレヴァンと一緒に... イタリアへ、スペインへ、 [2009]

1月も下旬... そろそろ、2009年分を、締めることを考えなくては...
が、聴きそびれているもの、書きそびれているもの、まだまだあって... ちょっと、頭を抱えてみる週末。ま、抱えるほどのことでもでないのだけれど、煮詰まる日曜。ならば、ここはひとつ、自分の好きなアーティストを取り上げてみる?ということで、古楽界の鬼才、ロルフ・リスレヴァン。ビウエラ、テオルボ、リュートに、ギターと、時代に即して、器用に撥弦楽器を弾き分けて。さらにはジャンルのボーダーラインを軽やかに越境してみせて、フレキシブルに、何よりナチュラルに音楽と向き合う希有なアーティスト。
そんなリスレヴァンが、昨秋、気になるアルバムを立て続けにリリース。リスレヴァン自身によるアンサンブルを率いての、彼ならではのフュージョン(?)的センスで、ルネサンスを響かせるアルバム、"DIMINUITO"(ECM NEW SERIES/476 3317)。リスレヴァンが、ギタリストとして招かれ、刺激的な演奏を繰り広げる、カルミナ四重奏団によるボッケリーニ、"Fandango"(SONY CLASICCAL/88697 46117 2)。この2つのアルバムを聴く。


イタリアへ、ディミヌイート...

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リスレヴァンのECMデビュー盤、"NUOVE MUSICHE"(ECM NEW SERIES/476 3049)。このアルバムの、古楽というフィールドから、フュージョンという方向に扉を開いた、斬新な切り口が、強く印象に残る... が、今度のリスレヴァンは、そうした方向へさらに踏み出していて。ルネサンス、最後の頃、16世紀、イタリアの、人懐っこいメロディを集めて、リスレヴァン流に、ECM的に、軽やかにジャンルを越境しつつ、ボーダーライン上に美しくまとめ上げた1枚が、"DIMINUITO"。
ルネサンスとはいえ、そのメインストリームを担った、フランドル楽派のポリフォニーとは一線を画し、素朴で、キャッチーな、"DIMINUITO"の素材の数々。トラッドのようであり、南米からのメロディあり、ルネサンスの頃のスタンダード?「ラ・スパーニャ」あり、フランスで流行ったというトゥルディオンあり... それはまた、16世紀、イタリアにおける、ボーダーライン上にあったサウンド?なのかもしれない。時にエキゾティックで、アヴァンギャルドで、刺激的。そんなサウンドというのは、潜在的に、ジャンルを越境する可能性を秘めた素材というのか、21世紀のアレンジを、無理なく受け入れて... それどころか、古さなど感じさせず、瑞々しく、新鮮なサウンドとして、21世紀にも息づいてくる。
そして、素材の可能性を、最大限に引き出す、リスレヴァンのアレンジも見事!陽気な、16世紀、イタリア... そのラテン気質を、瑞々しく、透明感、溢れる(このあたり、スウェーデン出身のリスレヴァンならではか?)、アンビエントなテイストでやさしく包み、たまらなく心地よいサウンドへと紡ぎ直してしまう。これが絶妙!素材を活かしながらも、美しくまとめ上げられた"DIMINUITO"は、16世紀でもなく、イタリアでもなく、古楽でも、"クラシック"でもなく... 逆に、あらゆる要素(時にジャズ?時にロック?それでいてニュー・エイジ... )を吸収して、ニュートラルな音楽世界を響かせる。
そこには、リスレヴァンのリュート、ビウエラを軸に、腕利きたちが揃えられたアンサンブルの、確かな演奏もあって。活き活きとした「セッション」の感覚がありながらも、派手にテクニックを見せつけるようなことはなく(しかし、妙技はしっかりと味合わせてくれる!)、一音一音を大切に、アルカイックな楽器が持つ美しいを響きを、丁寧に重ねてゆく。そうして生み出されるサウンドが、このアルバム、独特の、美しく、ナチュラルなトーンになり。また、ファグルセット、フリマン、2人のソプラノによる歌が、バッキング・ヴォーカルのようにアンサンブルに寄り添い、いい味を醸していて... 何より、リスレヴァンが奏でる、リュート、ビウエラの、クリアな美しい音に、たまらなく魅了される。そうして、16世紀、イタリアを素材に、極上のフュージョンを聴かせてくれる。他では味わえない感覚を、楽しませてくれる。

ROLF LISLEVAND DIMINUITO

カピローラ : Ricercate primo
ダルツァ : Saltarello
ダルツァ : Piva
テルツィ : Petit Jacquet/オルティス : Quinta Pars
作曲者不詳 : La Perra Mora
テルツィ : Susanne un jour/オルティス : Recercada Settima
フランチェスコ・ダ・ミラノ : Canon, La Spagna/ロビンソン : Passamezzo Gaillard/オルティス : Recercada Segunda
ムダーラ : Fantasía que contrahaze la harpa en la manera de Luduvico
テルツィ : Vestiva i colli Recercada Quinta
作曲者不詳 : Tourdion

ロルフ・リスレヴァン(リュート/ビウエラ・デ・マノ)
リン・アンドレア・ファグルセット(ソプラノ)
アンナ・マリア・フリマン(ソプラノ)
ジョヴァンナ・ペッシ(ハープ)
マルコ・アンブロジーニ(ニッケルハルパ)
トール・アラルド・ジョンセン(キターラ・バッテンテ/ヴィウエラ・デ・マノ/リュート)
ミヒャエル・ベーリンガー(クラヴィコード/オルガン)
ビョルン・イェレミール(コントラバス)
デイヴィッド・マヨラ(パーカッション)

ECM NEW SERIES/476 3317




スペインへ、ファンダンゴ...

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ハイドンの有名な弦楽四重奏曲を、2曲... 17番、「セレナード」(ホフシュテッターの作曲というのが真実らしいが... )と、74番、「騎士」。そこに、ボッケリーニの有名なギター五重奏曲、4番、「ファンダンゴ」と、弦楽五重奏曲、「マドリードの通りの夜の音楽」を挿んで... 2009年、ハイドンのメモリアルも意識しつつ、ギターというスパイスも利かせての、18世紀、弦楽四重奏による名曲集... といったところか。しかし、このスパイスが、思いの外、よく利いていて。アルバムとして、断然、おもしろい仕上がりとなった、カルミナ四重奏団とリスレヴァンのコラヴォレーション。
まず、1曲目、ハイドンの17番、「セレナード」(track.1-4)... かの有名な"セレナード"のメロディ、2楽章、アンダンテ・カンタービレ(track.2)を、ギター伴奏で、独奏ヴァイオリンに歌わせてしまう!こういうヴァージョンって、あったの?とも思うのだが、聴こえてくる音楽は、まさに、リアル・セレナード... 多少、安っぽく響く、定番のメロディが、説得力を以って、間違いなく新鮮だから、してやられた感ありだ。そして、2曲目、スペイン情緒が炸裂するボッケリーニのギター五重奏曲、4番、「ファンダンゴ」(track.5-8)。リスレヴァンは、サヴァールの下で、この作品を録音(Alia Vox/AV 9845)しているが、どこか大人しかったその時の印象に比べて、きっちりとスパイスとして、存在感を示してくる。"ピリオド"ならではの、枯れたトーンで、風合いを大切にするサヴァールとは違い、モダン楽器の明瞭なサウンドで、活き活きとした音楽を編み上げるカルミナ四重奏団とのセッションは、より伸びやかにギターを響かせてもいるようで。そして、終楽章、ファンダンゴ(track.8)... 冒頭、リスレヴァンのギターが、カデンツァのようにすばらしい独奏を展開して、カルミナ四重奏団が、若干、霞む... が、コルティのカスタネットが加われば、ヒート・アップ!
さて、3曲目、ベリオがオーケストレーションしたことで有名(?)、小弦楽五重奏曲、「マドリードの通りの夜の音楽」(track.10-14)。アルバムのタイトルは"Fandango"なのだが、この作品がこのアルバムのメイン?演奏が始まる前には、ボッケリーニによる作品の序文(track.9)までが読まれ、気合が入っての、最初の一音は、バルトークでも始まったか?!というほど、鮮烈な響きで、驚かされる。いや、この作品というのは、18世紀にして、驚くほど大胆にマドリードの情景を捉えて、結果、「モダン」な印象を与えるわけだが、カルミナ四重奏団の明朗な演奏が、よりそうした印象を強めていて、刺激的。で、弦楽四重奏とギターによるヴァージョンということで、リスレヴァンのギターが、よりスペイン情緒を濃くし、鮮烈。
最後は、ハイドンの74番、「騎士」(track.15-18)。どうも、それまでのエキゾティックな勢いを駆ってか、ハイドンの弦楽四重奏も、鮮烈に響くよう。18世紀モノは、できれば"ピリオド"で聴きたい... なんても思うのだけれど、カルミナ四重奏団の明るい響きと、パワフルさが、ハイドンをまた違う次元へと連れ去って、終楽章(track.18)の、キャッチーさ、ノリの良さは、予想外にクール!

Fandango – HAYDN BOCCHERINI
CARMINA QUARTETT ・ LISLEVAND ・ CORTI


ハイドン : 弦楽四重奏曲 第17番 ヘ長調 Op.3-5 「セレナード」 Hob.III-17 *
ボッケリーニ : ギター五重奏曲 第4番 ニ長調 G.448 「ファンダンゴ」 **
ボッケリーニ : 小弦楽五重奏曲 ハ長調 Op.30-6 G.324 「マドリードの通りの夜の音楽」 〔弦楽四重奏とギターによる〕 *
ハイドン : 弦楽四重奏曲 第74番 ト短調 Op.74-3 「騎士」 Hob.III-74

カルミナ四重奏団
マティアス・エンデルレ(ヴァイオリン)
スザンヌ・フランク(ヴァイオリン)
ウェンディ・チャンプニー(ヴィオラ)
シュテファン・ゲルナー(チェロ)

ロルフ・リスレヴァン(ギター) *
ニーナ・コルティ(カスタネット) *

SONY CLASICCAL/88697 46117 2




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