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雅やかなる歌... [2009]

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合唱界の巨匠、フリーダー・ベルニウスと、彼が創設したシュトゥットガルト室内合唱団。
高機能精密室内合唱の国、ドイツにあって、さらに凄いハイテク集団。そんなハイテク感で歌われる幅広いレパートリーは、"ピリオド"にもきっちり対応し、現代作品も難なくこなす... その器用さが、たまらなく魅力的。地味ながらもCarusからリリースされるアルバムは、いつも気になってしまう。が、ここのところは、メンデルスゾーン・シフト(昨年のメンデルスゾーンのメモリアルに向けてのプロジェクト... )で、もっとダイレクトに、彼らのハーモニーを味わいたい欲求に駆られていたのだが...
そこにリリースされたアルバム、"Hohes Lied(雅歌)"(Carus/83.222)。ダニエル・ルシュールの作品をタイトルに、合唱界の伝説、ゴットヴァルトによる編曲(シューマン、ラヴェル、ドビュッシー)、さらにはファッシュ(息子)の作品まで... 盛りだくさんな、ベルニウス+シュトゥットガルト室内合唱団のアルバムを聴く。

ベルニウス+シュトゥットガルト室内合唱団というと、もう、10年くらい前になってしまうのか?"Lux aeterna"(Carus/83.208)のアルバムが忘れ難い... アルバムのタイトルにもなった、リゲティのルクス・エテルナを、驚くほど明晰に歌い上げ、そのロマンティックで美しい姿(クラスターでごまかさない、真の姿... とでも言おうか... )、まさに「永遠の"光"」を垣間見せて、驚かせてくれた。そして、アルバムの最後を飾った、ゴットヴァルドにより合唱用に編曲された、マーラー、リュッケルト歌曲集からの「私はこの世に忘れ去られ」。オリジナルを越えてしまうような見事な編曲を、クリアに瑞々しく歌い上げ、人の声とは思えないような、浮世離れした世界を響かせて、魅了され、感服させられ、衝撃を受け... そんな"Lux aeterna"の続編的な性格もあるのか、最新盤、"Hohes Lied"。
ダニエル・ルシュールの代表作、雅歌(track.1-7)で始まり、ゴットヴァルド編曲によるラヴェル(track.8)、ドビュッシー(track.9, 10)の作品... さらには時代をぐんと遡り、カール・フリードリヒ・クリスティアン・ファッシュの16声のミサ(track.11-20)を取り上げて、最後は、やはりゴットヴァルド編曲によるシューマン(track.21-24)。新しい作品(20世紀、フランス近代音楽)と、古い作品(18世紀、ポスト・バロック)、その間の作品(19世紀、ロマン派)も... そして、合唱の魅力を最大限に引き出す、ゴットヴァルドによる魔法=編曲があって、"Hohes Lied"は、"Lux aeterna"同様に、ヴァラエティに富み、かつシンプルに合唱の魅力を、響かせる。で、ベルニウス+シュトゥットガルト室内合唱団の魅力が、最大限に輝くわけだ。が、"Lux aeterna"から、10年(くらい... )、そこにあるのは、以前とは趣を変えるものでもあって...
"Lux aeterna"がゲルマン的ならば、"Hohes Lied"はラテン的?前半、フランス近代音楽の作品が並ぶこともあるかもしれないが、そればかりでない「ラテン」(濃厚なパッション!とか、そういうのではないのだけれど... )ぽさが、ベルニウス+シュトゥットガルト室内合唱団にして、興味深い。ドイツのハイテク集団が、どこかユルめで、朗らかな印象を持つ作品の数々を歌う... ストイックで、ロマンティックな"Lux aeterna"にはなかった、ふんわりと明るく、柔らかな色彩が印象的に広がる"Hohes Lied"。が、どこか「ラテン」に、アウェー感も漂うようでもあり、さらりと歌う... とはいかない、ほんのわずかだが、手古摺るようなところもあるような、ないような... 「ラテン」ならではの曖昧さ(って、あんまりにもステレオ・タイプではあるのだけれど... )が、ハイテク集団には意外と難しいのかも?
だからこそ、最後のシューマン(track.21-24)はくっきりと映えて、清々しく。また、「ラテン」の朗らかさを歌ってきたアルバムのトーンも活き、厭世感が漂った"Lux aeterna"とはまったく違う、ハッピーな気分で締められる。で、ハッピーさでは、カール・フリードリヒ・クリスティアン・ファッシュ(1736-1800)の16声のミサ(track.11-20)が最高!「16声」なんて、大仰な数字を掲げつつも、18世紀、ポスト・バロックの、ギャラントな時代を彩った作曲家ならではの、やわらかなテイスト... ハイドン(1832-1809)の4つ年下という、古典派の時代も担った作曲家ならではの、ポジティヴでポップなサウンド!ポジティフ・オルガンの伴奏も、ピポヒポと、かわいらしく、隅々までハッピーな輝きに充ちている。が、これも、ハイテク集団の成せる技。一切の曇りの無い、澄み切った「16声」だからこそ生まれるハッピーは、細胞レベルからハッピー。で、ハッピーにしてくれる。一足先に春の訪れを告げてくれるよう。
という、ベルニウス+シュトゥットガルト室内合唱団の"Hohes Lied(雅歌)"。まさに、雅やかなる歌の数々... 穏やかな風を感じ、花の匂いが漂うような、春めくアルバム。ハイテク集団のほんのわずかな手古摺りも含めて、微笑ましく、何とも耳に心地よいアルバムに仕上がっている。

Hohes Lied: Daniel-Lesur ・ Fasch ・ Ravel ・ Debussy ・ Schumann
Kammerchor Stuttgart ・ Frieder Bernius


ダニエル・ルシュール : 12声のための雅歌
ラヴェル/ゴットヴァルト : ため息
ドビュッシー/ゴットヴァルト : 雪の上の足跡
ドビュッシー/ゴットヴァルト : アンジェラスの鐘
カール・フリードリヒ・クリスティアン・ファッシュ : 16声のためのミサ *
シューマン/ゴットヴァルト : 4つの歌
   『ロマンスとバラード』 Op.45 から 春めいた/『リーダークライス』 Op.8 から 悲しみ/森の語らい/月の夜

フリーダー・ベルニウス/シュトゥットガルト室内合唱団
クレメンス・フレーミヒ(ポジティフ・オルガン) *

Carus/83.222




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