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ロッティとゼレンカに挟まれて、バッハ... [2009]

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何気に、ロッティのスペシャリスト?ヘンゲルブロック... 彼が率いるバルタザール・ノイマン・アンサンブルと合唱団の最新盤は、ゼレンカ、バッハとともに、再びロッティのミサを取り上げる。
ということで、アントニオ・ロッティ(1667-1740)。バロック期、ヴェネツィア楽派の巨匠として、バッハからもリスペクトされていたという、その当時、バッハなどよりも、ずっとずっと国際的な名声を得ていた作曲家。だが、今となっては... しかし、バッハにリスペクトされた作曲家、今にだって通じるはず... と、何気に、ロッティ作品に力を入れているトーマス・ヘンゲルブロック。レクイエム(deutsche harmonia mundi/05472 77507 2)に、ミサ・サピエンティアエ(deutsche harmonia mundi/05472 77534 2)と、すばらしい演奏で以って、ロッティの魅力を今に蘇らせてきたわけだが、最新盤では、3部合唱のためのミサ(deutsche harmonia mundi/88697526842)を取り上げる。といことで、これは聴き逃せない!と、手に取る...

が、まず、ゼレンカのミゼレーレ(track.1-6)に、抗し難く魅了されてしまう...
まるで、マイケル・ナイマンのような、エモーショナルな出だし!そのミニマルさというのか、まるで、モダンのトレース越しに聴くような「バロック」がパワフルで、ドラマティックにゼレンカ・ワールドへと呑み込まれてゆく... ゼレンカというチェコ出身の作曲家には、いつも驚かされる。20世紀、ヤナーチェクやマルティヌーが、独特の色彩感、鮮烈さを以って、異彩を放っているように、ゼレンカもまた、バロック期に、間違いなく異彩を放っている。チェコの音楽DNAというのは、興味深い... そして、ゼレンカの仕事場である、ザクセン選帝侯のドレスデンの宮廷の充実したオーケストラ、コーラスのための音楽というのは、とにかくリッチな響きがインパクトとなる。そのダイナミックさ、ジューシーさは、「バロック」のスケール感を覆すようなところもあって、21世紀の今にも、十二分に刺激的だ。
さて、ゼレンカで始まるこのアルバムなのだが、ロッティは、バッハの12番のカンタータを挿んで、最後に取り上げられる。で、ヘンゲルブロックの、いつもながら凝った構成が大いに興味を引くところ。ゼレンカとロッティに挟まれれば、バッハの地方性は露わとなり... だからこそ、当時のモードへの乗り遅れ感が強調されて... リアルな「バロック」情勢が透けて見えてしまうおもしろさがある。音楽史に燦然と輝くバッハだが、同時代の作品と並べてその作品を聴くということはあまりない。だからこそ燦然と輝くのか?ミサ・サピエンティアエ(deutsche harmonia mundi/05472 77534 2)を取り上げた時は、バッハのマニフィカトを並べたヘンゲルブロック。彼の視点は、バッハに対して、ちょっと意地悪?
しかし、ゼレンカのエモーショナルなミゼレーレから、勢いそのままに、傾れ込むように始まるバッハの12番のカンタータ(track.7-13)は、また、たまらなく魅力的。シンフォニア(track.7)の始まりを飾るオーボエの、艶やかなこと!いかにもバッハな、悩ましいメロディも、ゼレンカの後だと、たっぷりと憂いを含んだあたりがジューシーに響くようでもあり、ヘンゲルブロックの組合せのセンスに感心させられてしまう。が、古いコラールをベースに音楽を構築していくバッハのカンタータは渋い... で、その渋さを味わってから、ロッティを聴けば、この作曲家の先進性が、大いに際立つよう。
バロックから古典派へと橋渡しをした作曲家... というような紹介のされ方をするロッティ(1667-1740)だが、ゼレンカ(1679-45)は教え子であり、バッハ(1985-1750)とは親子ほどの年の差があったり... となれば、教え子や息子世代よりも、先の時代を見据えていたことになるわけだ。そして、3部合唱のためのミサ(track.14-27)でも、モーツァルトのミサを思わせるような感覚すらあって、時折、「バロック」であるという時代感覚が狂わせられ、間違いなくおもしろい。何より、古典派を先取りするあたりに、バロックには無い優美な曲線を見出し、ハーフ・トーンの柔らかな色彩感に包まれて心地良く、そして、アルプスの北(ライプツィヒはもちろん、ドレスデンもまた... )にはない、ヴェネツィアならではの華やぎがそこかしこからこぼれ出し、キラキラしている。この作曲家もまた、バロック期に、間違いなく異彩を放っている。
ということで、しっかりと楽しませてくれるヘンゲルブロック+バルタザール・ノイマン・アンサンブルと合唱団。"ピリオド"ならではのキレ、ストイックさを聴かせつつも、音、ひとつひとつの密度が濃いようで、そこはかとなくヘヴィーでもあり。ロマンティックな匂いが、ほのかに漂うようなところもあって、これまでになくしっかりとした手応えを感じるよう。ハイ・クウォリティから、輝くばかりの音楽を切出してくるのではなく、輝きとともに、「バロック」のえぐみ(?)が滴って、それをソースに、絶妙の味付けをしてのけて... すでに数百年が経過した音楽に、しっかりと温度を感じ、その冷めてはいない様が魅惑的。バッハばかりでないバロックを、バッハも含めて、思いの外、たっぷりと堪能させてくれる。

LOTTI ZELENKA BACH BALTHASAR-NEUMANN-CHOR BALTHASAR-NEUMANN-ENSEMBLE THOMAS HENGELBROCK

ゼレンカ : ミゼレーレ ハ短調 ZWV 57 *
J.S.バッハ : カンタータ 第12番 「泣き、嘆き、憂い、怯え」 BWV 12 ***
ロッティ : 3部合唱のためのミサ *****

タニア・アスペルマイアー(ソプラノ) *
ハイケ・ハイルマン(ソプラノ) *
マリオン・エクシュタイン(アルト) *
ベルンハルト・ランダウアー(カウンターテナー) *
ジュリアン・ポッジャー(テノール) *
マレク・ジェプカ(バス) *
バルタザール・ノイマン合唱団
トーマス・ヘンゲルブロック/バルタザール・ノイマン・アンサンブル

deutsche harmonia mundi/88697526842




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