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2台ピアノ、ガーリー主義。 [2009]

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近頃、この曲も?!という作品が、2台ピアノ版、あるいは4手版として登場し、驚かされる。
バッハのゴールドベルク変奏曲を2台ピアノ(まもなくリリース予定のタール&グロートホイゼン盤)で... とか、ショスタコーヴィチの交響曲を4手(グラウ&シューマッハーによる5番)で... とか、いろいろ... で、その効果や、如何に?!と、大いに気になってしまうのだけれど。さらに気になるアルバムが登場。今度は、ヴァレーズのアメリカ?!と聞いて、さらに驚いてしまう。のだけれど。
WERGOから、センスの良いアルバムを届けてくれるピアノ・デュオ、ブガッロ&ウィリアムズが、さらなる弾き手も加えて繰り広げる、ヴァレーズのアメリカと、フェルドマンの作品を収録した、大胆な1枚(WERGO/WER 6708 2)を聴く。

ナンカロウのプレイヤー・ピアノのための作品を、生身の2人で弾いてのけたアルバム(WERGO/WER 6670 2)。2台ピアノへの編曲... の、代名詞的作品にして、難曲、2台ピアノ版『春の祭典』を取り上げた、ストラヴィンスキーのアルバム(WERGO/WER 6683 2)。と、近現代のレパートリーで、センスの良いところを聴かせる、エレナ・ブガッロと、エイミー・ウィリアムズのピアノ・デュオ。彼女たちの息の合ったアンサンブルと、難曲をものともしない確かなテクニックが響かせるサウンドというのは、他では味わえない、不思議感が広がる。どんな難曲でも、鬼気迫るようなところがなく、聴く者を異次元にさらって、ふんわり、いい匂いで包んでしまうような... 独特の魅力を漂わせるのだけれど、そんな彼女たちが、ヴァレーズのアメリカを、2台ピアノで取り上げる?ということに、ちょっと、想像がつかなかった。
ヴァレーズのアメリカといえば、巨大なオーケストラが繰り広げる抽象的な音響と、ストラヴィンスキーの影響を受けたバーバリスティックな迫力が魅力の作品... と、認識してきたのだけれど。はてさて、2台ピアノで響かせると、どうなってしまうのだろうか?多少の不安もあったわけだが、やはり、ブガッロ&ウィリアムズ... いともたやすく、巨大な作品を、彼女たちの「ワールド」の中に引き入れてしまう。
編曲は、エレナ・ブガッロによるもので、2台8手(連弾するピアノを2台... ブガッロ&ウィリアムズに、ブリッグス、エンゲリという助っ人が加わって、4人でのアメリカ)という編成。そこから繰り広げられるアメリカ(track.2)は、ヴァレーズの先鋭的な響きを、「モダン」というワードに定着させて、作品が生まれた頃(1918-20)のモードの内で、薄っすらノスタルジックに紡ぎ出す。それは、オーケストラによるものとはまた違う、お洒落感?というのか、フランス出身のヴァレーズだけに、エスプリ?なんても言ってみようか... 近代音楽の鋭さよりも、古き良き「モダン」が漂わせただろう、時代の艶っぽさみたいなものを、何気に籠めてくる。そんなヴァレーズは、間違いなく新鮮でもあって、何ともセンスの良い響き!
一方で、アルバムの構成も、またセンスがいい...
ヴァレーズ(1883-1965)のアメリカを、フェルドマン(1926-87)の作品で挟む妙!アメリカへと渡り(1915)、独自の前衛を創り上げたフランス出身の作曲家と、その作曲家を大いにリスペクトしたという、新たな前衛を切り拓くアメリカの若い作曲家。ある意味、両者、音楽史におけるアウトロー的存在であり、かつ、動(=ヴァレーズ)と静(=フェルドマン)、対極の前衛を生み出した作曲家... が、その対極も、芸術における新たな創造の場所(両大戦により、ヨーロッパからアメリカへと芸術の中心が移る... )、アメリカが生み出した音楽の幅でもあって。そんなつながりとコントラストの絶妙なバランスが、見事!
そして、フェルドマン作品だが... ヴァレーズの前に、4手のための小品(track.1)。ヴァレーズの後で、ブリッグス、エンゲリに、ワースも加わり、5つのピアノ(track.3)が取り上げられる。が、やはりここでも、ブガッロ&ウィリアムズの「ワールド」が、おもしろい作用を聴かせ... アンビエントなフェルドマンのサウンドに、ミステリアスなトーンが滲み、どこか象徴主義の音楽を聴くような雰囲気があって、ほんのりダーク。そうしたあたりが、また魅惑的。で、そんな感覚、どこかガーリー?
近現代を得意とし、それらしくクリアな響きをしっかり聴かせても、キレ過ぎて、硬く冷たくなることはないブガッロ&ウィリアムズのサウンド。彼女たちのしなやかさと、そこはかとなくポップなセンスは、ポジティヴにガーリーさを匂わせるようで。そうしたあたりに、現代っ子なピアニズムを感じ、共感してしまう。とはいえ、彼女たち、すでに「ガール」な年頃とは言えないのだけれど...
それにしても、2台8手でアメリカ... 思いきったことをする。

Edgard Varèse Amériques ・ Morton Feldman Piece for Four Pianos ・ Five Pianos

フェルドマン : 4手のための小品
ヴァレーズ : アメリカ 〔2台ピアノ、8手版/編曲 : エレナ・ブガッロ〕 *
フェルドマン : 5台のピアノ **

ヘレナ・ブガッロ(ピアノ)、エイミー・ウィリアムズ(ピアノ)
エイミー・ブリッグス(ピアノ)、ベンジャミン・エンゲリ(ピアノ) *
ステファン・ワース(ピアノ) *

WERGO/WER 6708 2




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