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バロックから古典派へ... うつろいのカクテル、リヒターの交響曲。 [2009]

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あけまして、おめでとうございます。
9月です。"クラシック"の世界では、新たなシーズンが開幕。何より、日本そのものの、喪(?)が明けたような、そんな感覚もあっての、2009/2010年のシーズンの開幕。"クラシック"の世界も、今こそ閉塞感を打破し、「チェンジ!」で行きたいところ... だけれど、そうはいかないニッポン・クラシックの保守性は、筋金入り。なのだよね。きっと。そういう気分、いつ交代するのだろう?
とはいえ、2009年、すでに、ヘンデル、ハイドン、メンデルスゾーンで、大いに盛り上がっているわけで。さらに、新シーズンともなれば、マーラーの生誕150年を祝うことになるわけで。祝祭感は、さらに、さらにヒートアップ。2009/2010年のシーズンが、"クラシック"にとって、実り多いものになりますように。
ということで、早速、本題。NAXOSの"18TH CENTURY SYMPHONY"のシリーズ、最新作... フィンランド発のピリオド・オーケストラ、アアポ・ハッキネン率いる、ヘルシンキ・バロック・オーケストラによる、マンハイム楽派の巨匠、フランツ・クサヴァー・リヒター(1709-89)の交響曲集、続編(NAXOS/8.570597)。バロックから古典派へ... "クラシック"の代名詞、「交響曲」、その黎明の時代、生まれたての交響曲は、シーズンの始まりにぴったり?な、清廉のサウンドで... かつ、これまた密やかに、リヒター、生誕300年のメモリアル!

一昨年にリリースされた、ハッキネン+ヘルシンキ・バロック管による、リヒターの6つの大交響曲集、第1巻(8.557818)に続く、第2巻。第1巻と同じく、1744年、パリで出版された交響曲集... とのこと。だが、その頃のヨーロッパを俯瞰してみれば、なかなか興味深い。
新たな時代を象徴することになる、「交響曲」、とはいえ、バッハ(1685-1750)、ヘンデル(1685-1759)は、未だ健在であり。晩年のバッハは、ヴィヴァルディの影響を受けて... あるいはコピーして、古風なチェンバロ協奏曲を書いていた頃(1730-40年代前半)からさほど時間が経っておらず。ヘンデルは、まだ、「王宮の花火の音楽」(1748)を作曲していなかった。となれば、バッハ家の次男、カール・フィリップ・エマヌエル(1714-88)が、本格的に交響曲を書き出すまでに10年あり、ハイドン(1732-1809)の最初の交響曲(1750年代後半)も、やはり10年先となる。何より、このアルバムが取り上げる6つの交響曲は、リヒターが、マンハイムの宮廷に仕える以前の作品(マンハイムへ移るのは1747年... )だ。マンハイム楽派によって、大きく成長を遂げ、やがてモーツァルトへと受け継がれる交響曲... となれば、1744年の交響曲は、マンハイム以前の、まさに、生まれたての交響曲が、そこにあるわけだ。
そして、まさしく過渡期の音楽がそこにある。バロック色は強いけれど、古典派のシンプルさ、いい意味でのフラットさが現れており... バロックの、奇を衒うような性格は洗練されつつも、ロココの気分とはまた一味違い、多感主義的なうつろいやすさはなく、端正にまとめられた美しい音楽が響く。その端正さに、古典派の性格を見出すのだが、イタリアで、交響曲に挑んでいた先人、ジョヴァンニ・バッティスタ・サンマルティーニ(ca.1698-1775)の交響曲と比べると、バロックの形はよりはっきりと残り、交響曲=古典派でありながらも、バロックの管弦楽作品を聴くような感覚があって、その感触が、とても不思議。
それは、まさしくバロックから古典派へとうつろう瞬間... その瞬間を、あまりに鮮やかに切り取ったサウンドだからこそ、折衷ではない、過渡期の割り切れなさが、教科書的な音楽史のイメージに、無重力地帯を生み出すようで不思議なのかもしれない。その不思議さこそ、音楽史、交響曲史を改めて見つめ直す上で、極めて興味深いことであり、これまで味わったことのないカクテル感が、間違いなくおもしろい。
そして、ハッキネン+ヘルシンキ・バロック管の演奏だ。
生まれたての交響曲だからこその、ピュアな輝き、清廉な佇まいを、"ピリオド"ならではのクリアさ、フレッシュさで、見事に捉え。成熟する以前の古典派の、未熟さを露呈させるのではなく、だからこその魅力を丁寧に拾い上げて、シンプルだからこそ発する輝きを、最大限に引き出して来る。第1巻、第2巻ともに、交響曲の黎明期を知る貴重な資料でありながら、それ以上の悦びを与えてくれる彼らの演奏は、北欧のピリオド・オーケストラのカラーというものも感じさせ、清々しく、スマートで、心地良く、まるで涼風のように吹き抜けて行くかのよう。ドイツとも、ベネルクスとも、当然、イタリアとも違うカラーに、魅了されずにはいられない。何より、そのカラーが、リヒターの交響曲に、絶妙にフィット。リヒターにとっても、ハッキネン+ヘルシンキ・バロック管にとっても、最高の1枚となっているように思う。
それにしても、交響曲というのは、18世紀、劇的に進化し、確立されたのだなと... リヒターを聴いてから、マンハイム楽派、全盛期の交響曲を、C.P.E.バッハの、ハイドンの交響曲を聴けば、思い知らされる。

RICHTER: Six Grandes Symphonies (Set 2)

リヒター : 交響曲 第4番 ハ長調
リヒター : 交響曲 第59番 変ロ長調
リヒター : 交響曲 第69番 イ長調
リヒター : 交響曲 第82番 ホ短調
リヒター : 交響曲 第27番 ト短調
リヒター : 交響曲 第5番 ハ長調

アアポ・ハキッネン/ヘルシンキ・バロック・オーケストラ

NAXOS/8.570597




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